RNAiを用いた神経・筋疾患の画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200730016A
報告書区分
総括
研究課題名
RNAiを用いた神経・筋疾患の画期的治療法の開発
課題番号
H17-こころ-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 隆徳(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野)
  • 宮岸 真(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、アルツハイマー病などの神経変性疾患や脳血管障害、多発性硬化症、ウイルス感染症などに対するsiRNAを用いた画期的な遺伝子治療法の開発を行う。
研究方法
対象疾患に対する特異的siRNAを設計し培養細胞にてその効果を評価するとともに、siRNA過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、当該疾患モデル動物との掛け合わせによりその治療効果を判定する。ベクターとデリバリーの改良を進め、副作用の検証とその克服を行いつつ臨床応用へ近づける。
結果と考察
我々の開発した「あらゆる変異に対応可能な変異アリル特異的な新しいRNAiを用いた遺伝子発現抑制方法」について、in vivoでの検証として、抗SOD-siRNAで抑制された内因性野生型SOD1の発現とそれによる脂肪肝の副作用を、アミノ酸配列を変えずに塩基配列を置換させてsiRNAが効かないようデザインしたsiRNA抵抗性野生型SOD1で、抑制されたSOD1活性を補うことによってその副作用を回避することに成功した。また、siRNAの新規のin vivoデリバリーベクターとして、ビタミンE、中でも最も生体内における分布や肝臓への輸送経路が判明しているα-tocopherolを直接siRNAに共有結合させることにより、通常の静脈投与で有効に肝臓の内因性遺伝子の抑制することに成功した。
結論
多くの疾患あるいは標的遺伝子に特異的なsiRNAの作製に成功し、siRNAトランスジェニックマウスにてsiRNAによる遺伝子治療が有効であることを初めて明瞭に証明するとともに、あらゆる遺伝子変異にも対応するRNAi手法の有用性も示すことに成功した。さらに、新規のsiRNAベクターの開発にも成功して臨床応用へ向かって本研究は大きく進展した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200730016B
報告書区分
総合
研究課題名
RNAiを用いた神経・筋疾患の画期的治療法の開発
課題番号
H17-こころ-一般-021
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 隆徳(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学分野)
  • 宮岸 真(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発現型RNA干渉を用いて、いまだ根本的治療法のない神経変性疾患や大きな機能障害を残しうる脳血管障害などに対する画期的な治療法の開発を目指して基礎的研究を行う。
研究方法
筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、アルツハイマー病等に対する特異的siRNAを作製しまず培養細胞レベル、ついで動物モデルにてその効果を検証する。siRNAのin vivoデリバリーのために発現型short hairpin RNA (shRNA)や非ウイルス性ベクターを開発する。
結果と考察
家族性ALSの原因であるSOD1遺伝子に対するsiRNA過剰発現トランスジェニックマウス(TgM)を作製し、家族性ALSのモデル動物であるG93A-SOD1 TgMと掛け合わせすることにより、ALSの顕著な発症と症状進行の遅延に成功した。さらに我々の考案した「あらゆる変異に対応可能な変異アリル特異的なRNAi法」の有用性の検証として、抗SOD siRNAで抑制された内因性野生型SOD1の発現を,アミノ酸配列を変えずに塩基配列を置換させてsiRNAが効かないようデザインしたsiRNA抵抗性野生型SOD1で補うことによって副作用である脂肪肝を回避することに成功した。新規の高発現アデノ随伴ウイルスベクターの経静脈的全身投与によって、肝臓の内因性遺伝子の高効率、安全かつ顕著な抑制に成功した。さらに、発現型shRNAを用いる際の毒性に対してshRNA発現量を適切に調節することによって、副作用を回避できる可能性があることを示した。さらにsiRNAの新規の非ウイルス性ベクターとして、ビタミンE、中でも最も生体内における分布や肝臓への輸送経路が判明しているα-tocopherolを直接siRNAに共有結合させることにより、静脈投与で有効に肝臓の内因性遺伝子の抑制することに成功した。
結論
多くの神経変性疾患、脳血管障害、ウイルス感染症などにおける標的遺伝子に対して特異的siRNAを作製し、siRNAトランスジェニックマウスにて遺伝子治療の有効性を明瞭に証明した。ウイルス性ベクターの改良や新規の非ウイルス性ベクターの開発に成功してデリバリー法において大きく進展した。当初の目的は達成されたが、今後全身性投与による中枢神経へのデリバリーのために脳血液関門を克服することとや、長期有効性や長期安全性などの確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200730016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ALS、アルツハイマー病、脳血管障害、アミロイドポリニューロパチー
などの標的遺伝子に有効なsiRNAの作製に成功し、デリバリー法としてアデノ随伴ウイルスベクターを改良すると共に、生理的なビタミンEによる化学修飾法を全く新しく開発した。
臨床的観点からの成果
siRNAトランスジェニックマウスの作製に成功し、それとSOD1遺伝子変異による家族性ALSのモデルマウスとの掛け合わせにより、ALSの発症と進行を著明に抑制することに成功した。これにより適切なデリバリーによりsiRNAは充分に臨床応用が可能であることを示した。
ガイドライン等の開発
原著論文のみならず、多くの総説、著書、ならびに講演会により、siRNAに関わる啓発に貢献した。
その他行政的観点からの成果
アミノ酸を変えずに塩基配列のみを変えることによりsiRNAに抵抗性の遺伝子を導入することで、一度抑制した蛋白質を回復することに培養細胞レベルのみならずin vivoでも成功した。
その他のインパクト
1) 読売新聞(2005年2月23日)RNAで医薬品開発
2) NHKスペシャル(2005年4月9日)中絶胎児利用の衝撃(神経幹細胞治療研究の紹介)
3) 日経産業新聞(2005年5月19日)ALS・C型肝炎に照準 RNA干渉の医療応用(横田)
4) 日経新聞(2005年11月7日)難病ALS、遺伝子の機能抑制新技術で発症防ぐ、東京医科歯科大、マウス実験

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishina K, Unno T, Uno Y et al.
Efficient In Vivo delivery of siRNA to liver by conjugation of α-Tocopherol.
Mol Ther , 16 , 734-740  (2008)
原著論文2
Sakamoto N, Tanabe Y, Yokota T et al.
Inhibition of hepatitis C virus infection and expression in vitro and in vivo by recombinant adenovirus expressing short hairpin RNA.
J Gastro Hepatol  (2007)
原著論文3
Li Y, Yokota T, Gama V et al.
Bax-inhibiting peptide protects cells from polyglutamine toxicity caused by Ku70 acetylation.
Cell Death Differ , 14 , 2058-2067  (2007)
原著論文4
Yokota T, Iijima S, Kubodera T et al.
Efficient regulation of viral replication by siRNA in a non-human primate surrogate model for hepatitis C.
Biochem Biophys Res Com , 361 , 294-300  (2007)
原著論文5
Yokota T, Sasaguri H, Saito Y et al.
Increase of disease duration of amyotrophic lateral sclerosis in a mouse model by transgenic small interfering RNA.
Arch Neurol , 64 , 145-146  (2007)
原著論文6
Yokota T, Hino T, Ito S et al.
In vivo delivery of small interfering RNA targeting brain capillary endothelial cells.
Biochem Biophys Res Com , 340 , 263-267  (2006)
原著論文7
Hayashita-Kitoh H, Yamada M, Yokota T et al.
Down-regulation of α-synuclein expression can rescue dopaminergic cells from cell death in the substantia nigra of Parkinson’s disease rat model.
Biochem Biophys Res Com , 341 , 1008-1095  (2006)
原著論文8
Akashi H, Miyagishi M, Yokota T et al.
Escape from the interferon response associated with RNA interference using vectors that encode long modified hairpin-RNA.
Molecular BioSystems , 1 , 382-390  (2005)
原著論文9
Mitani T, Yokota T
RNA interference as a tool for producing knockdown mice.
J Mamm Ova Res , 22 , 139-151  (2005)
原著論文10
Kubodera T, Yokota T, Ishikawa K et al.
New RNAi Strategy for Selective Suppression of Mutant Allele in Polyglutamine Disease.
Oligonucleotides , 15 , 298-302  (2005)
原著論文11
Saito Y, Yokota T, Mitani T et al.
Transgenic siRNA halted amyotrophic lateral sclerosis in a mouse model.
J Biol Chem , 280 , 42826-42830  (2005)
原著論文12
Yokota T
siRNA-based gene therapy for autosomal dominant disease of the nervous system. In RNAi therapeutics. Ed by Takaku H, Yamamoto N.
Transworld Research Network , 137-146  (2007)
原著論文13
Kasim, V., Miyagishi, M. et al.
Screening of siRNA target sequences by using fragmentized DNA.
J Gene Med. , 8 , 782-791  (2006)
原著論文14
Nishimura, G., Miyagishi, M. et al.
DeltaEF1 mediates TGF-beta signaling in vascular smooth muscle cell differentiation.
Dev Cell , 11 , 93-104  (2006)
原著論文15
Hiraoka-Kanie, M., Miyagishi, M. et al.
Differentiation stage-specific analysis of gene function with inducible short hair-pin RNA in differentiating embryonic stem cells.
Biochem Biophys Res Com , 351 , 669-674  (2006)
原著論文16
Nakamori, Y., Miyagishi, M. et al.
Myosin motor Myo1c and its receptor NEMO/IKK-gamma promote TNF-alpha- induced serine307 phosphorylation of IRS-1.
J Cell Biol. , 173 , 665-671  (2006)
原著論文17
Watanabe, T., Miyagishi, M. et al.
Intracellular-diced dsRNA has enhanced efficacy for silencing HCV RNA and overcomes variation in the viral genotype
Gene Ther. , 13 , 883-892  (2006)
原著論文18
Furumoto, Y., Miyagishi, M. et al.
Cutting Edge: Lentiviral short hairpin RNA silencing of PTEN in human mast cells reveals constitutive signals that promote cytokine secretion and cell survival.
J Immunol. , 176 , 5167-5171  (2006)
原著論文19
Ito, M., Miyagishi, M. et al.
Down-regulation of endogenous Wt1 expression by Sry transgene in the murine embryonic mesonephros-derived M15 cell line.
J Reprod Dev. , 52 , 415-427  (2006)
原著論文20
Wu, S., Miyagishi, M. et al.
Yin Yang 1 induces transcriptional activity of p73 through cooperation with E2F1.
Biochem Biophys Res Com , 365 , 75-81  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-