発達障害(広汎性発達障害、ADHD、LD等)に係わる実態把握と効果的な発達支援手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200730004A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害(広汎性発達障害、ADHD、LD等)に係わる実態把握と効果的な発達支援手法の開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 潤(北海道教育大旭川校)
  • 内山 登紀夫(大妻女子大人間関係学部)
  • 緒方 明子(明治学院大学心理学部)
  • 小川 浩(大妻女子大人間関係学部)
  • 高橋 脩(豊田市こども発達センター)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究科)
  • 辻井 正次(中京大学社会学部)
  • 山本 京子(長野県精神保健福祉センター)
  • 藤岡 宏(つばさ発達クリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療、教育、福祉、労働など各分野の研究者から発達障害の実態把握と効果的な発達支援手法の開発を目的とした。(1)高橋 脩、(2)藤岡 宏、(3)内山登紀夫は、早期発見や療育についての研究をおこなった。(4)安達 潤、(5)緒方明子は教育の立場から、(6)田中康雄は教育と保護者の立場から、(7)辻井正次は保護者・当事者の立場から、就労については(8)小川 浩、地域支援ついては(9)山本京子、医療支援は(10)市川宏伸が研究を行った。
研究方法
 (1)N市の私立保育園における発達障害の発見と初期対応他、(2)I市の発達障害医療機関を通じた医療ニーズ(3)広汎性発達障害(PDD)を1.5歳で発見するためのツールの信頼性・妥当性の検討(4)H県の高等養護学校卒業生の就労状況(5)支援を受けないで成長した発達障害中学生の理由(6)「発達障害のある子どもの養育者自身が自覚するニーズ」他(7)成人発達障害当事者家族の支援ニーズ(8)発達障害者の就労相談ガイドブックの試案作成(9)発達障害者支援センターにおけるPDD者支援(10)発達障害児・者施設における医療の現状。
結果と考察
 (1)高機能自閉症、ADHD、学習障害が2.0%(2)PDDが1.3%(3)M-CHATの信頼性はあるが妥当性は不十分(4)卒業生の就労率約40%、高機能群で約64%(5)情報不足、障害受容不全、適切な機関の不足(6)養育者の困り感は年齢と無関係に存在(7)適切な対処が分からず家庭内の問題が発生(8)就労機関で活用されるガイドブックを完成(9)センターの半数が市町村に対して2-3次機関の役割(10)医療の充実を渇望。
結論
 (1)園の自信欠如、保護者の抵抗のため半数のみ専門機関利用(2)PDD初診者数は同一(3)PDDと健診群をかなり判別可能(4)就労を支配するのは知的障害以外の不適応要因(5)保護者の気づき支援が必要(6)全年齢で養育者の不安の解消が重要(7)継続的な本人・家族支援が必要(8)ガイドブックを配布(9)センターの質・量に充実が必要(10)発達障害の特性を考慮した医療体制の構築。

公開日・更新日

公開日
2008-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200730004B
報告書区分
総合
研究課題名
発達障害(広汎性発達障害、ADHD、LD等)に係わる実態把握と効果的な発達支援手法の開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 登紀夫(大妻女子大人間関係学部)
  • 小川 浩(大妻女子大人間関係学部)
  • 高橋 脩(豊田市こども発達センター)
  • 辻井 正次(中京大学社会学部)
  • 安達 潤(北海道教育大学旭川校)
  • 田中 康雄(北海道大学大学院教育学研究科)
  • 緒方 明子(明治学院大学心理学部)
  • 山本 京子(長野県精神保健福祉センター)
  • 藤岡 宏(つばさ発達クリニック)
  • 日詰 正文(長野県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 発達障害への対応は、医療・教育・福祉・労働などの関与が必要と考え、早期発見や療育は、(1)高橋 脩、(2)藤岡 宏、(3)内山登紀夫が行った。現状把握と支援方策は、(4)安達 潤、(5)緒方明子が教育から、(6)田中康雄が教育・保護者から、(7)辻井正次が当事者・保護者から報告した。就労は(8)小川 浩が、地域支援は(9)日詰正文・山本京子が、医療は(10)市川宏伸が担当した。
研究方法
 当事者、保護者(家人)、関係者らを対象に、研究者の地域、あるいは全国面接・アンケート調査を実施し、統計的検討を行った。
結果と考察
 (1)広汎性発達障害(PDD)、ADHDが幼児期の支援対象、保育園・幼稚園での発見の可能性(2)PDDの出生率の1.1-1.3%。療育への保護者の期待大(3)PDDの判別にM-CHATは有効(4)知的障害が軽いと離職率大、就労困難は発達障害特性(5)要支援中学生の80%は支援機関無(6)養育者の不安は発達段階と無関係、健診には養育者のメンタルヘルスの視点無(7)当事者団体の運営責任者の負担大(8)37%の就労は発達障害上の特性理解が不十分(9)発達障害者支援センターは市区町村との連携が重要(10)発達障害者への医療は、医療施設も福祉施設も不十分
結論
 発達障害をもつ中学生、高等養護学校生徒、成人の調査から、早期発見の必要性が再確認された。早期発見・気づきには養育者のメンタルヘルスへの配慮が必要であり、保育園・幼稚園の活用を考慮するべきと考えられる。発見のための適切なツールの開発が必要である。適切な診断・療育は養育者に好評であるが、ライフステージに見合った支援が必要である。就労には発達障害の特性を理解した対応が必要である。発達障害の支援には、医療、教育、福祉、労働など様々な分野の緊密な連携が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200730004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 発達障害を専門としている研究者が、その分野で抱えている課題を対象に研究を行っている。発達障害者支援法の検討に係わった者が中心であり、3年後の見直しを視野に入れた検討を行っている。現状の把握と問題点の指摘およびこれからの方策を示している。各研究者がこれらの研究結果を各専門雑誌等に報告している。
臨床的観点からの成果
 大多数の研究者は、臨床の第一線で活躍しており、日常臨床を研究の対象としている。例えば、広汎性発達障害を見分けるツールの開発は、様々な分野で求められており、この研究でも一定の成果を得ている。特に各専門分野の連携が必要な点については、臨床的に既知の事実であり、この研究においても再確認されている。ここで得られた結果や結論は、行政的施策には有用である。
ガイドライン等の開発
 発達障害支援センター、ハローワークなどの就労支援センターで活用する事を考慮して、「発達障害者の就労相談ガイドブック」を完成させた。「発達障がい者支援を考える実態調査報告書」を発行して、発達障害への啓発を行った。この夏を目途に、これらの研究結果をもとに、各研究者の分担執筆による、発達障害に関する単行本の発刊を予定している。 
その他行政的観点からの成果
 各研究者の報告に政策的提言を示し、行政的施策に役立つように努めている。「幼児期発達障害支援の鍵は現在の健診制度の充実」、「早期教育は意義があるが、就学後への継続が不十分」、「発達障害の特性を理解した教育が就労にも有用」、「保護者の支援には成長手帳の導入」、「テレビ会議によるペアレントトレーニングは有用」、「成人期の診断及び支援ガイドライン策定が必要」、「発達障害の支援に関する市区町村の責務と役割の明確化」「医療ケアと福祉ケアの連携が必要」など
その他のインパクト
 各研究者がその専門分野において、新聞、雑誌、テレビなどに登場して発達障害の啓発・理解に努めた。各種講演会において、発達障害の総論、診断、対応、教育などについて説明を行い、発達障害の啓発・理解に努めた。医療・教育・福祉・心理・労働・司法関係者を対象とした研修会に参加して発達障害の啓発・理解に努めた。(主任研究者において、約50回/年)

発表件数

原著論文(和文)
120件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
57件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
63件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
21件
その他成果(普及・啓発活動)
460件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wakabayashi,A. Baron-Cohen,S., Uchiyama,T. et.al.
The Autism Spectrum Quotient (AQ) Children's Version in Japan: A cross-cultural comparison
Journal of Autism and Developmental Disorder , 37 , 491-500  (2005)
原著論文2
内山登紀夫
自閉症をめぐる現状 当事者の声 親として,当事者として
自閉症と発達障害研究の進歩 , 9 , 255-260  (2005)
原著論文3
辻井正次
発達障害者支援法-その今日的意義と将来展望:高機能広汎性発達障害児への支援の立場から
発達障害研究 , 27 , 123-127  (2005)
原著論文4
加藤進昌、杉山登志郎、市川宏伸他
アスペルガー障害をめぐって -症例を中心に-
臨床精神医学 , 34 , 1103-1116  (2005)
原著論文5
市川宏伸
児童青年精神科における発達障害の診療-公立病院での診療を中心に-
日本精神病院協会雑誌 , 24 , 58-62  (2005)
原著論文6
市川宏伸
発達障害について(児童精神科の治療から)
精神神経誌 , 107 , 1231-1235  (2005)
原著論文7
小川浩
発達障害支援法 -その今日的意義と将来展望-就労支援の立場から-
発達障害研究 , 27 , 105-107  (2005)
原著論文8
萩原はるみ、高橋脩
自閉症の幼児期における発達・知能指数の推移
児童青年精神医学雑誌 , 46 , 439-448  (2005)
原著論文9
高橋脩
障害児の発達支援と家族支援
児童青年精神医学雑誌 , 46 , 473-478  (2005)
原著論文10
田中康雄
発達障害児への心理的援助 軽くとも生きがたい子ら
臨床心理学 , 6 , 257-263  (2006)
原著論文11
神尾陽子、行広隆次、安達潤他
思春期から成人期における広汎性発達障害の行動チェックリスト:日本自閉症協会版広汎性発達障害評定尺度(PARS)の信頼性・妥当性についての検討
精神医学 , 48 , 495-505  (2006)
原著論文12
辻井正次、行広隆次、安達潤他
日本自閉症協会広汎性発達障害評価尺度(PARS)幼児期尺度の信頼性・妥当性の検討
臨床精神医学 , 35 , 1119-1126  (2006)
原著論文13
内山登紀夫
青年期軽度発達障害児者への支援を考える 青年期の発達障害の診断
児童青年精神医学雑誌 , 47 , 252-256  (2006)
原著論文14
Harumi Ogiwara & Osamu Takahashi
The Development and Characteristics of Autistic Children Receiving Very Early Intervention
Japanese Journal of Child and Adolescent Psychiatry , 46 , 40-60  (2006)
原著論文15
田中康雄
発達障害と児童虐待
最新精神医学 , 12 , 111-117  (2007)
原著論文16
田中康雄
発達障害のある子どもたちと共に生きる
臨床心理学 , 7 , 313-318  (2007)
原著論文17
田中康雄
特別支援教育に向けての課題-医学
児童青年精神医学雑誌 , 48 , 118-125  (2007)
原著論文18
内山登紀夫
注意欠陥/多動性障害と自閉症スペクトラム
児童青年精神医学雑誌 , 48 , 286-292  (2007)
原著論文19
Miyahara M, Bray A, Tsujii M et.al.
Reaction time of facial affect recognition in Asperger's disorder for cartoon and real, static and moving faces.
Child Psychiatry Hum Dev. , 38 , 121-134  (2007)
原著論文20
市川宏伸
特別支援教育と精神科 -発達障害をめぐって-
精神科 , 12 , 56-61  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-