粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御

文献情報

文献番号
200729028A
報告書区分
総括
研究課題名
粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御
課題番号
H19-免疫-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 審良 静男(大阪大学微生物病研究所)
  • 川内 秀之(島根大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
27,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆衛生環境や食生活の変化などに伴う外的環境因子がアレルギー発症に関与していることが示唆されているにも関わらず、「粘膜免疫・外的環境因子・アレルギー」の三者間相互作用を基盤とした実験的検証はほとんど皆無であり、本研究計画ではその解明を目指している。
研究方法
粘膜免疫(東大・清野)、自然免疫(阪大・審良)、アレルギー(島根大・川内)、腸内フローラ(ヤクルト・南野)の各分野で基礎・臨床的最先端の研究を推進している四研究チームからなる学術的共同研究体制を確立した。本年度各研究チームは1)食物アレルギーにおける粘膜免疫と腸内フローラの関り:スフィンゴシン1リン酸による食物アレルギー誘導性細胞の遊走制御に関する研究、2)自然免疫を介したアレルギー制御:腸管粘膜固有層のCD11c+細胞による獲得免疫の活性化に関する研究、3)花粉症における粘膜免疫と腸内フローラの関り:通年性アレルギー性鼻炎およびスギ花粉症の動物モデルの作製と治療戦略の確立、4)腸内フローラのアレルギーへの関与の研究:分泌型IgAの欠損による小腸上皮細胞間T細胞の増加機構に関する研究を推進した。
結果と考察
1)脂質メディエーターであるS1Pとその受容(S1P1)を介したシグナルを阻害することで食物アレルギー発症を抑制する結果を得た。
2)腸管粘膜固有層に存在するCD11c+細胞はTLR5を発現し、フラジェリンにより活性化されTh1型免疫応答誘導能があることがわかった。
3)溶連菌製剤OK-432がTLR2を介して単核球を活性化しIL-12産生をとおしてTh2型免疫応答を抑制する事が示唆された。
4)粘膜免疫の中核をなす分泌型IgA形成に必須のpIgR欠損が腸管上皮細胞間リンパ球(IEL)の選択的動員に関与するという新知見を得た。
結論
アレルゲンの侵入に恒常的に暴露されている腸管粘膜において、脂質メディエーター、TLR2、TLR5そしてpIgRが、アレルゲンを含めた抗原特異的免疫応答誘導に深く関っている事を強く示唆する結果を得た。また、それら各種レセプターを介した制御をすることでアレルゲン特異的免疫応答を自然免疫誘導相・獲得免疫誘導相の両相でコントロールできる可能性も示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-08-11
更新日
-