成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究

文献情報

文献番号
200729020A
報告書区分
総括
研究課題名
成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究
課題番号
H18-免疫-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小林 信之(国立国際医療センター呼吸器科)
研究分担者(所属機関)
  • 大田 健(帝京大学内科学講座)
  • 永田 真(埼玉医科大学呼吸器内科)
  • 上村光弘(国立病院機構災害医療センター呼吸器科)
  • 工藤宏一郎(国立国際医療センター国際疾病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬物療法の進歩により成人喘息のコントロールは達成されやすくなったが、治療を中止してよいかどうかという指針はない。喘息のコントロールが良好となっている患者において、治療薬剤を減量あるいは中止してよい基準を明らかにすること、「寛解」を規定する因子を明らかにすることが研究の目的である。
研究方法
本研究は多施設共同臨床研究であり、対象は適切な治療により3ヶ月以上トータルコントロールの得られている持続型の成人喘息患者である。治療のステップダウン後にも喘息コントロールの達成維持を可能とする因子、さらに治療中止1年後の寛解を規定する因子を求める。治療薬の減量・中止を決める際には、気道炎症制御の評価が重要と思われるが、その基礎検討として、呼気中や誘発喀痰中の気道炎症マーカーを測定して喘息重症度別に比較解析した。早期介入を行った喘息患者は8年目にあたるため、現時点での喘息コントロール状態を評価し、臨床的寛解を予測する因子について解析した。
結果と考察
1)研究班全体の治療薬減量・中止研究では、これまでに40例ほどが登録されているが、治療を中止した患者は、その後もコントロール達成が維持されているグループと喘息増悪のためにICSを再投与したグループに分けられ、次年度は登録例を増やして最終的な解析を行う。2)早期介入を行った喘息患者74例の8年後の喘息コントロール状態を調査した結果、3分の1の患者で臨床的な寛解が得られていた。その寛解を予測する因子として、治療1年後の喘息の状態と治療後の末梢血好酸球数が重要な因子として検出された。3)呼気の炎症マーカーに関しては、Step4の患者では非Setp4の患者と比較して呼気NO濃度、呼気凝縮液IL-1ra、IL-1βが高値傾向、VEGFは有意に低値であった。4)誘発喀痰中のマーカーとしては、好酸球の他に好中球、IL-8が重症喘息で増加していた。これらの炎症性マーカーの測定が、ステップダウンに際して有用な指標となりうるかどうかについては今後検討を行う。5)難治性の咳喘息・咳優位性喘息を対象に、寛解を目指したステロイドネブライザー療法の臨床研究を開始した。
結論
早期介入した成人喘息患者のうち約3分の1は、中期的にみて臨床的寛解が得られていた。喘息治療薬の適切な減量・中止基準を明らかにすることは、患者にとっても医師にとっても、また、医療経済学的にも有用な情報になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
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