アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究

文献情報

文献番号
200729018A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究
課題番号
H18-免疫-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
河野 陽一(国立大学法人千葉大学大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学系研究科)
  • 佐伯 秀久(東京大学医学部附属病院皮膚科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 望月 博之(群馬大学大学院)
  • 小田嶋 博(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
  • 下条 直樹(国立大学法人千葉大学大学院医学研究院)
  • 片岡 葉子(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1. ADの小児・成人での疫学調査
2.コホート調査に基づく乳児AD自然歴とAD発症・悪化関連因子の同定
3. 既知の発症・悪化因子に対する対策による発症予防・症状改善の評価
研究方法
1.(1)「ADの診断のための質問票」による全国複数地域において小児AD有症率を調査し、年次推移を検討する。
(2)一般成人集団における本質問票の感度・特異度を複数の地域で明らかにする。
2. (1)生後4か月からの乳幼児健診での医師の診断によるADの個別追跡調査(コホート調査)により乳児期ADの自然歴を調査する。皮膚黄色ブドウ球菌の定着、皮膚バリア機能と乳幼児ADとの関連を調査する。
(2)母乳中のサイトカイン、食物抗原、脂肪酸濃度を測定する系を確立する。母乳中の成分と乳児ADの関連についてコホート乳児集団を設定して検討する。
3. (1)シャワー浴の効果を客観的に検討する。(2)AD発症ハイリスク群の児に対するスキンケアによる乳児AD発症予防の効果を検討する。
結果と考察
1)「ADの診断のための質問票」による調査では学童のAD有症率は最近5年間では変化がないと考えられた。2)乳児コホートでの横浜、千葉での追跡調査から、乳児期のAD発症は男児にが多く、食物アレルギーが重要な発症リスクであった。3)千葉市の追跡調査では、生後4か月までの母乳栄養が1歳6ヵ月のアトピー性皮膚炎と関連することが示唆された。4)4か月の時点での皮膚バリア機能異常が1歳6か月でのADに関与することが明らかになった。5)AD発症にには、生後早期の母乳中の成分が関与している可能性が示された。6)シャワー浴の効果が複数地域で証明され、またADに対する効果の新たな客観的指標を確立した。
これらの結果から、乳幼児期の免疫学的および物理的な皮膚バリア機能の異常がAD発症に深く関与していることが明らかとなり、スキンケアによるAD発症、悪化の予防に有用であることが示唆された。今後は早期の介入試験が必要であり、パイロット的な研究をすでに開始している。
結論
1) 乳幼児期のADの自然歴が明らかとなった。
2) 母乳中のサイトカイン、Th2アジュバント能と児のAD発症に関連が認められた。
3) 皮膚バリア機能の異常がADの発症に関与する。乳児期早期を対象とするバリア機能保持によるAD発症予防の可能性がある。
4) 学童のADに対するシャワー浴の効果が複数施設で客観的に確認された。

公開日・更新日

公開日
2008-06-19
更新日
-