免疫疾患の既存治療法の評価とその合併症に関する研究

文献情報

文献番号
200729012A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患の既存治療法の評価とその合併症に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学医学部第1内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究科病態内科学講座)
  • 猪熊 茂子(都立駒込病院アレルギー膠原病科)
  • 亀田 秀人(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
  • 熊谷 俊一(神戸大学大学院医学系研究科生体情報医学講座)
  • 齋藤 和義(産業医科大学医学部第1内科学講座)
  • 田中 住明(北里大学医学部膠原病感染内科)
  • 原 まさ子(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 平形 道人(慶應義塾大学医学部内科学)
  • 広畑 俊成(北里大学医学部膠原病・感染内科)
  • 森本 真司(順天堂大学医学部膠原病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全身性自己免疫疾患(膠原病)は多臓器病変を特徴とし、治療法はステロイド薬や免疫抑制薬等の副作用の多い非特異的免疫療法が中心であるが、既存治療法の評価や合併症対策は各施設の裁量に委ねられている。斯様な既存治療法の弱点の克服のために、多施設間で集積した臨床成績から既存治療法の有効性や副作用の発現を評価し、新たな治療のガイドラインや手引きを作成することを目的とした。
研究方法
多施設間で膠原病やその治療により併発した(1)中枢神経障害、(2)血液障害、(3)ステロイド骨粗鬆症、(4)日和見感染症について既存治療法の有効性や副作用の発現を評価した。
結果と考察
1. ループス精神病126症例を対象に、既存治療である経口ステロイド(CS)、ステロイドパルス治療、シクロフォスファミドパルス治療(IVCY)の有用性と副作用の比較検討を行った。ループス精神病のうち、acute confusional stateを有する57症例では、IVCYのハザード比は 0.5176 (p=0.0516)と有用性が示唆された。
2. SLEに伴う血栓性微小血管障害症(TMA)に対する治療としては、血漿交換療法とIV-CY療法が推奨された。予後不良因子として、高年齢、低血小板数、高CRP血症、正常血清補体価が上げられた。
3. 新規に中~大量ステロイド薬で治療を開始する膠原病患者101例を登録した。閉経後女性ではビスホスフォネート投与群で骨塩量が上昇し、非投与群は有意に減少した。
4. 膠原病に合併するサイトメガロウイルス(CMV)感染症151例を解析し、CMV感染患者の生命予後に影響する因子として、臨床症状有り、高齢、末梢血リンパ球低値、他感染の合併、ステロイドパルスが挙げられた。
結論
膠原病に併発するループス精神病、TMA、CMV感染症、ステロイド骨粗鬆症に焦点を絞り、既存治療法の有効性や副作用を評価した。また、既存治療法の弱点を克服すべく治療の手引きやガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200729012B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫疾患の既存治療法の評価とその合併症に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学医学部第1内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究科病態内科学講座)
  • 猪熊 茂子(都立駒込病院アレルギー膠原病科)
  • 亀田 秀人(埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科)
  • 熊谷 俊一(神戸大学大学院医学系研究科生体情報医学講座)
  • 齋藤 和義(産業医科大学医学部第1内科学講座)
  • 田中 住明(北里大学医学部膠原病・感染内科)
  • 原 まさ子(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 平形 道人(慶應義塾大学医学部内科学)
  • 広畑 俊成(北里大学医学部膠原病・感染内科)
  • 森本 真司(順天堂大学医学部膠原病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膠原病は多臓器病変を特徴とするが、治療はステロイド薬や免疫抑制薬等の副作用の多い非特異的免疫療法が中心で、これら既存治療法による合併症は、生命予後を決定する重要な因子である。今回、多施設間で多数症例を集積し、既存治療法を評価し、治療ガイドラインを作成することを目的とした。
研究方法
多施設間の多数症例の臨床成績の解析から、膠原病に併発する(1)血液障害、(2)ループス精神病、(3)呼吸器障害、(4)ステロイド骨粗鬆症、(5)日和見感染症に関して、既存治療法の有効性や副作用を評価した。
結果と考察
1. ループス精神病126症例のうち、急性意識障害を有する57症例では、シクロホスファミド療法(IVCY)の有用性が示唆された。
2. SLEに伴う血栓性微小血管障害症(TMA)には、血漿交換療法とIVCY療法が推奨された。予後不良因子は、高年齢、低血小板数、高CRP血症、正常補体価であった。
3. 膠原病に伴う間質性肺炎(65症例)の死亡率は18%で、①基礎疾患が皮膚筋炎、②急性経過、③縦隔気腫併発、④日和見感染症併発を特徴とし、全例でステロイド大量療法、ステロイドパルス療法(73%)が成されていた。
4.  膠原病に伴う縦隔気腫(27症例)の基礎疾患は筋症状の乏しい皮膚筋炎で、全例でステロイドパルスが施行されたが、死亡率48.1%、間質性肺炎合併で81.5%であった。
5. 新規に大量ステロイド薬で治療を開始する膠原病患者(101例)では、閉経後女性ではビスホスフォネート投与群で骨塩量が非投与群に比し有意に上昇した。
6. 膠原病に合併するサイトメガロウイルス(CMV)感染症(151例)の予後不良因子は、臨床症状有り、高齢、末梢血リンパ球低値、他感染の合併、ステロイドパルスであった。
結論
膠原病に併発する重篤な臓器障害に関し、以下の既存治療法が評価された。
(1) ループス精神病の急性意識障害: シクロホスファミドパルス療法(IVCY)
(2) SLEに伴うTMA: 血漿交換療法、IVCY。
(3) 膠原病に伴う縦隔気腫: ICVY、シクロスポリン
(4) 大量ステロイド薬による骨粗鬆症(予防): ビスホスフォネート(閉経後女性又はYAM<80症例)
(5) 膠原病に合併するCMV感染症(予防): ガンシクロビル(危険因子を有し、CMV抗原血症価>5.6カウントの症例)

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200729012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
膠原病やその治療によって併発し、生命予後に重要な影響を及ぼす臓器障害として、血液障害であるSLEに伴う血栓性微小血管障害症(TMA)、ループス精神病、ステロイド骨粗鬆症、サイトメガロウイルス(CMV)感染症などが挙げられるが、何れも症例数が少なく、その治療法の評価や危険因子に関しては世界的にも殆ど報告がない。今回、多施設間の多数症例の臨床成績の解析から、膠原病に対する既存治療法を評価し、治療のガイドラインや治療のてびきを作成した。
臨床的観点からの成果
多施設間の多数症例の臨床成績の解析から、膠原病に対する既存治療法に関して、生命予後に直結する臓器合併症である (1)血液障害(血栓性微小血管障害症)、(2)中枢神経系障害(ループス精神病)、(3)呼吸器障害(膠原病に伴う間質性肺炎、縦隔気腫)、(4)中?大量ステロイド薬による骨粗鬆症、(5)日和見感染症(サイトメガロウイルス感染症)の5項目に焦点を絞り、既存治療法の有効性や副作用の発現を評価した。
ガイドライン等の開発
膠原病に併発する重篤な臓器障害に関し、以下の既存治療法が評価された。
(1) ループス精神病の急性意識障害: シクロホスファミドパルス療法(IVCY)
(2) SLEに伴うTMA: 血漿交換療法、IVCY。
(3) 膠原病に伴う縦隔気腫: ICVY、シクロスポリン
(4) 大量ステロイド薬による骨粗鬆症(予防): ビスホスフォネート(閉経後女性又はYAM<80症例)
(5) 膠原病に合併するCMV感染症(予防): ガンシクロビル(危険因子を有し、CMV抗原血症価>5.6カウントの症例)
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
67件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
99件
その他論文(英文等)
198件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
27件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsujimura S, Saito K, Tanaka Y.et al.
Clinical relevance of expression of P-glycoprotein on peripheral lymphocytes to steroid-resistance in systemic lupus erythematosus
Arthritis Rheum , 52 , 1676-1683  (2005)
原著論文2
Tsujimura S, Saito K, Tanaka Y.et al.
Fragmented hyaluronan induces transcriptional up-regulation of the multidrug resistance-1 gene in CD4+ T cells
J Biol Chem , 281 , 38089-38097  (2006)
原著論文3
Tokunaga M, Saito K, Tanaka Y.et al.
Efficacy of rituximab (anti-CD20) for refractory systemic lupus erythematosus involving the central nervous system.
Ann Rheum Dis , 66 , 470-475  (2007)
原著論文4
Nakayamada S, Saito K, Tanaka Y.et al.
β1 integrin transduces an activation signal in T cells of patients with systemic lupus erythematosus.
Arthritis Rheum , 56 , 1559-1568  (2007)
原著論文5
Sawamukai N, Saito K, Tanaka Y.et al.
Leflunomide inhibits PDK1/Akt pathway and induces apoptosis of human mast cells.
J Immunol , 179 , 6479-6484  (2007)
原著論文6
Yamaoka K, Saito K, Tanaka Y.et al.
Clinical images: Takayasu’s arteritis.
Arthritis Rheum , 56 , 2466-2466  (2007)
原著論文7
Yasuda S, Atsumi T, Matsuura E.et al.
Significance of valine/leucine247 polymorphism of β2-glycoprotein I in antiphospholipid syndrome: increased reactivity of anti-β2-glycoprotein I autoantibodies to the valine247 β2-glycoprotein I variant.
Arthritis Rheum , 52 , 212-218  (2005)
原著論文8
Fukae J, Amasaki Y, Atsumi T.et al.
Butyrate Suppresses Tumor Necrosis Factor-alpha (TNF-alfa) Production by Regulating Specific mRNA Degradation Mediated Through a cis-acting AU-rich Element.
Arthritis Rheum , 52 , 2697-2707  (2005)
原著論文9
Amengual O, Atsumi T, Komano Y.et al.
A polymorphism in the Human Platelet Antigen 6b represents a risk factor for thrombocytopenia in patients with systemic lupus erythematosus.
Arthritis Rheum , 56 , 2803-2809  (2007)
原著論文10
Bohgaki T, Atsumi T, Koike T.et al.
Development of multiple autoimmune diseases after CD34+-selected autologous hematopoietic stem cell transplantation in a patient with systemic sclerosis.
N Engl J Med , 357 , 2734-2736  (2007)
原著論文11
Atsumi T, Horita T, Minori T.et al.
Exchange of information in Rheumatology between East and West : From Man’yo-shu to the Future.
Arthritis Rheum  (2007)
原著論文12
Kumagai S, Kawano S, Atsumi T.et al.
Vertebral fracture and bone mineral density in women receiving high dose glucocorticoids for treatment of autoimmune diseases.
J Rheumatol , 32 , 863-869  (2005)
原著論文13
Nishimura K, Sugiyama D, Kumagai S.et al.
Meta-Analysis: Diagnostic Accuracy of Anti-CCP Antibody and Rheumatoid Factor for Rheumatoid Arthritis.
Ann Intern Med , 146 , 797-813  (2007)
原著論文14
Y.Kawaguchi,E.Nishimagi, M.Hara.et al.
Intracellular IL-1a-binding proteins contribute to biological functions of endogenous IL-1a in systemic sclerosis fibroblasts
PNAS , 103 , 14501-14506  (2006)
原著論文15
Y. Katsumata,M.Harigai, M. Hara.et al.
Attenuation of experimental autoimmune myositis by blocking ICOS-ICOS ligand interaction
J. Immunology , 179 , 3772-3779  (2007)
原著論文16
Sato S, Hirakata M, Kuwana M.et al.
Autoantibodies to a 140-kd polypeptide, CADM-140, in Japanese patients with clinically amyopathic dermatomyositis.
Arthritis Rheum , 52 , 1571-1576  (2005)
原著論文17
Nagai T, Arinuma Y, Hirohata S.et al.
Anti-ribosomal P protein antibody in human systemic lupus erythematosus up-regulates the expression of proinflammatory cytokines by human peripheral blood monocytes.
Arthritis Rheum , 52 , 847-855  (2005)
原著論文18
Yajima N, Kasama T, Hirohata S.et al.
Eelevated levels of soluble fractalkine in active systemic lupus erythematosus. Potential involvement in neuropsychiatric manifestations.
Arthritis Rheum , 52 , 1670-1675  (2005)
原著論文19
Suzuki F, Nanki T, Hirohata S.et al.
Inhibition of CX3CL1 (Fractalkine) improves ecxperimental autoimmune myositis in SJL/J mice.
J Immunol , 175 , 6987-6996  (2005)
原著論文20
Karassa FB, Afeltra A,Hirohata S.et al.
Accuracy of anti-ribsosomal P protein antibody testing for the diagnosis of neuropsychiatric systemic lupus erythematosus. An international meta-analysis.
Arthritis Rheum , 54 , 312-324  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-