文献情報
文献番号
199700370A
報告書区分
総括
研究課題名
日本のBMIに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
井上 修二(国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
- 池田義雄(東京慈恵会医科大学)
- 佐藤祐造(名古屋大学総合保健体育科学センター)
- 徳永勝人(市立伊丹病院)
- 中村丁次(聖マリアンナ医科大学)
- 吉武裕(国立健康・栄養研究所)
- 西信雄(宝塚市立健康センター)
- 吉池信男(国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康増進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の肥満の疫学の基本データ1)肥満の頻度、2)肥満の疾患罹病率及び3)肥満の死亡率を国際的な肥満判定基準であるbody mass index(BMI)にもとずき整備した厚生省、日本肥満学会共同研究「肥満に関する疫学的研究」のデータと新たなコホートデータを基盤として、日本における1)BMIによる肥満の判定基準の確立、2)BMIによる性、年齢階級別の肥満の頻度の整理、3)個別の生活習慣病罹病率の最低と最大を示すBMI値の確定、4)死亡率の最低と最大を示すBMI値の確定をメタ分析の手法を用いて行ない、我が国における健康増進ならびに生活習慣病予防のための肥満対策の位置づけを明確化することを目的とした。
研究方法
3年間にわたった厚生省、日本肥満学会共同研究「肥満に関する疫学的研究」のコホートと新たに加わったコホート総計15施設のデータを個別に集積し、BMIによる1)肥満判定基準の確立、2)性別、年齢階級を加味した肥満の頻度の確定、3)三大生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病)の上昇を示すBMIの確定、4)死亡率を高めるBMIの確定をメタ分析法にて行ない、肥満対策や生活習慣病合併のリスク改善介入試験の具体的方策を立てるための目標BMIを追求した。
結果と考察
1)基準BMI値:徳永は10の疾患を夫々指数として、30~60才の成人における疾患指数が最小となるBMIは男性22.2、女性21.9であると報告し、22をBMI基準値(標準体重に相当するBMI値)とすることを提案した。池田は同一手法で検討したところ疾患指数が最小となる数値を22とは特定しえなかったが、22を基準値としても妥当性があると報告した。佐藤は20才台ではこの基準値が妥当でないことを肥満、やせの頻度より報告した。30才以上でもメタ分析法による両者の頻度の分布から見直す予定である。2)肥満の頻度:吉池、山口らの厚生省「国民栄養調査」の成績をBMIで見直した成績では、日本肥満学会が提案した肥満度20%以上に相当するBMI26.4以上の肥満は、男性では年代別には約9~14%、全体で12.5%、女性の年代別では7~19%、全体では13.9%と報告したが、この成績は、清原、上田による福岡県久山町の男性12.4%、女性14.5%、伊藤の広島在住被爆者及び非被爆者集団、男性11.5%、女性13.4%、江草、山木戸らの広島市民、男性8.5%、女性13%、山川、上島らの厚生省循環器疾患基礎調査対象者壮年の男性12%、女性17%、辻井、葛谷らの厚生省糖尿病研究班対象者の男性10.2%、女性12.8%とほぼ同じ傾向であった。欧米の肥満の判定値BMI30以上の頻度は、吉池、山口らの成績では男性1.7%、女性2.7%であるが、その他のコホートの成績も男性1.5%、女性2.5%くらいであった。最近、WHOは欧米のみでなく、アジア、オセアニア、南米などの世界的な健康対策上の肥満の重要性から、肥満をBMI25.0~29.9(Grade1)、30~39.9(Grade2)、40~(Grade3)と分類する方法を提案しているが、この分類で吉池、山口らの成績を再検討すると、Grade1:男性21.43%、女性16.85%、Grade2:男性1.64%、女性2.70%、Grade3:男性0.02%、女性0.03%となった。これらの値もメタ分析の成績で見直す予定である。3)肥満の疾患罹病率:吉池、山口らの厚生省「国民栄養調査」の成績では、BMI22を基準とすると有病率が1.5倍となるBMI値は高血圧、男性25.7、女性24.8、高コレステロール血症、男性26.5、女性30.6、低HDLコレステロール血症、男性26.5、女性30.6であった。清原、上田らの福岡県久山町の成績では、男性はBMI値27以上で高血圧、耐糖能異常、高コレステロール血症が有意に高くなり、女性ではBMI値25以上で
耐糖能異常、高コレステロール血症が有意に高くなることが明らかにされた。松島らの長野県佐久地方の成績では、肥満と高血圧、高脂血症が高度に相関し、糖尿病は軽度の相関が示された。また、BMI値23~26のところでこれら疾患の有意な罹病率の上昇がみられることも明らかにされた。住野の成績では、BMI≧26.4の肥満では1.6~10.4倍の合併症罹病率を認めている。吉永らは、BMI26.5で罹病率の急激な上昇を認めた。以上より、合併疾患によって少し異なるが、BMI25近辺が日本における生活習慣病合併を上昇させる値と考えられる成績であるが、このBMI値もメタ分析により見直す予定である。4)肥満の死亡率:白水の生命保険加入者を対象とした成績では、肥満の進展とともに男女とも全死亡、悪性腫瘍、心疾患死亡が増加し、男性では肝硬変の死亡も増加している。脳血管疾患の死亡は女性で強く、肥満と相関を認めている。これらの死亡率を有意に高めるBMIは30近辺であった。自殺、不慮の事故死はBMI18以下のやせに相関が強いことを認めた。上島の成績では、循環器疾患においてはBMI値30以上の高度肥満とBMI値18以下の高度のやせで高い死亡率を認めた。松島の成績では、上島の成績と同様BMI値30以上、BMI値18以下で死亡率の上昇を認めた。上田らの成績でも、総死亡率はU字型を示し、心筋梗塞、脳卒中死亡率はBMI値27以上で上昇を認めた。
耐糖能異常、高コレステロール血症が有意に高くなることが明らかにされた。松島らの長野県佐久地方の成績では、肥満と高血圧、高脂血症が高度に相関し、糖尿病は軽度の相関が示された。また、BMI値23~26のところでこれら疾患の有意な罹病率の上昇がみられることも明らかにされた。住野の成績では、BMI≧26.4の肥満では1.6~10.4倍の合併症罹病率を認めている。吉永らは、BMI26.5で罹病率の急激な上昇を認めた。以上より、合併疾患によって少し異なるが、BMI25近辺が日本における生活習慣病合併を上昇させる値と考えられる成績であるが、このBMI値もメタ分析により見直す予定である。4)肥満の死亡率:白水の生命保険加入者を対象とした成績では、肥満の進展とともに男女とも全死亡、悪性腫瘍、心疾患死亡が増加し、男性では肝硬変の死亡も増加している。脳血管疾患の死亡は女性で強く、肥満と相関を認めている。これらの死亡率を有意に高めるBMIは30近辺であった。自殺、不慮の事故死はBMI18以下のやせに相関が強いことを認めた。上島の成績では、循環器疾患においてはBMI値30以上の高度肥満とBMI値18以下の高度のやせで高い死亡率を認めた。松島の成績では、上島の成績と同様BMI値30以上、BMI値18以下で死亡率の上昇を認めた。上田らの成績でも、総死亡率はU字型を示し、心筋梗塞、脳卒中死亡率はBMI値27以上で上昇を認めた。
結論
今回得られたデータを基礎として、現在15施設で集積した個別のデータをメタ分析という手法を用いて、1)BMI基準値、2)BMI25、26.4、30以上の肥満の頻度、3)高血圧、高脂血症、糖尿病の合併罹患を高めるBMI等の値を性、年代を加味して特定し、今後の医療および厚生行政における健康増進、生活習慣病予防のための肥満対策の目標を明確にすることを企画している。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-