アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究

文献情報

文献番号
200729002A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 高森 建二(順天堂大学浦安病院)
  • 相馬 良直(聖マリアンナ医科大学皮膚科学)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学)
  • 佐伯 秀久(東京大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 浜崎 雄平(佐賀大学医学部小児科学)
  • 遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科神経機能形態学)
  • 稲垣 直樹(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室)
  • 佐々木 りか子(国立成育医療センター第二専門診療部皮膚科)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの患者を悩ましQOLの低下を招いている痒みの具体的な制御についての患者の要望は強い。本研究では、アトピー性皮膚炎の根本的な症状である痒みを臨床的あるいは基礎的に評価・研究し、具体的な対処法や治療法を広く国民に普及することを目的とし、併せて痒みのメカニズムの解明に大きく踏み込み、新規治療法の開発をもめざす。そして最終的には、かゆみを軽減する具体的対処法を分かりやすく解説する「かゆみをやっつけよう」というインターネットサイトを作成する。
研究方法
(1)ホームページ「かゆみをやっつけよう」の作成
本研究で行う臨床的・基礎的なかゆみに関する検討をもとに、アトピー性皮膚炎患者のかゆみを軽減するような具体的対処法をわかりやすくまとめた「かゆみをやっつけよう」というインターネットサイトを作成した。
(2)臨床的には、1)痒みの臨床的評価と制御、2)抗ヒスタミン薬の有効性、3)痒み対策指導、4)抗アレルギー薬のQOL改善効果、5)光線療法、6)QOL尺度の開発研究、7)乳幼児の痒みに対する支援療法、を検討した。
(3)基礎的には、8)動物モデルを用いた痒みの基礎的解析、9)知覚神経線維の表皮内侵入と消退メカニズム、10)P75の役割、11)モデルマウスを用いた皮膚炎の基礎的研究、を検討した。12)またかゆみ抑制剤としてのMEK1/2阻害薬の可能性を検討した。
結果と考察
研究班の基礎的・臨床的成果をもとに、患者や保護者に理解しやすい「アトピー性皮膚炎、かゆみをやっつけよう」というホームページを公開した(http://www.dermjapan.org/kayumi/index.html)。1日100件以上のアクセスを得ており、関心が高いことが窺える。さらに、冊子として配布することとした。基礎的研究では、1)表皮内神経伸張と炎症(肥満細胞の活性化)の両方が重要である、2)表皮内神経伸張とかゆみにはnerve growth factor(増強), amphiregulin(増強), substance P(増強), semaphorin(抑制)のバランスが重要である、3)NGF-p75経路の重要性、4)H4 受容体の関与、5)CTACKやTARC/CCL17の関与、6)サイクロスポリンやタクロリムスの抑制効果、8)神経線維のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の関与、などきわめて興味深い新しい知見を得ることができた。
結論
今後も表皮内神経線維のsproutingのメカニズムやかゆみと炎症の機序を生物学的・遺伝学的に明らかにし、新しい治療法の開発を模索する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200729002B
報告書区分
総合
研究課題名
アトピー性皮膚炎の症状の制御および治療法の普及に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 高森 建二(順天堂大学浦安病院)
  • 相馬 良直(聖マリアンナ医科大学皮膚科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学)
  • 佐伯 秀久(東京大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 浜崎 雄平(佐賀大学医学部小児科学)
  • 遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科神経機能形態学)
  • 永井 博弌(岐阜薬科大学)
  • 稲垣 直樹(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室)
  • 佐々木 りか子(国立成育医療センター第二専門診療部皮膚科)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学皮膚科)
  • 野瀬 善明(九州大学大学院医学研究院医療情報学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの患者を悩ましQOLの低下を招いている痒みの具体的な制御についての患者の要望は強い。本研究では、アトピー性皮膚炎の根本的な症状である痒みを臨床的あるいは基礎的に評価・研究し、具体的な対処法や治療法を広く国民に普及することを目的とし、併せて痒みのメカニズムの解明に大きく踏み込み、新規治療法の開発をもめざす。そして最終的には、かゆみを軽減する具体的対処法を分かりやすく解説する「かゆみをやっつけよう」というインターネットサイトを作成する。
研究方法
(1)ホームページ「かゆみをやっつけよう」の作成
本研究で行う臨床的・基礎的なかゆみに関する検討をもとに、アトピー性皮膚炎患者のかゆみを軽減するような具体的対処法をわかりやすくまとめた「かゆみをやっつけよう」というインターネットサイトを作成した。
(2)臨床的には、1)痒みの臨床的評価と制御、2)抗ヒスタミン薬の有効性、3)痒み対策指導、4)抗アレルギー薬のQOL改善効果、5)光線療法、6)QOL尺度の開発研究、7)乳幼児の痒みに対する支援療法、を検討した。
(3)基礎的には、8)動物モデルを用いた痒みの基礎的解析、9)知覚神経線維の表皮内侵入と消退メカニズム、10)P75の役割、11)モデルマウスを用いた皮膚炎の基礎的研究、を検討した。12)またかゆみ抑制剤としてのMEK1/2阻害薬の可能性を検討した。
結果と考察
研究班の基礎的・臨床的成果をもとに、患者や保護者に理解しやすい「アトピー性皮膚炎、かゆみをやっつけよう」というホームページを公開した(http://www.dermjapan.org/kayumi/index.html)。1日100件以上のアクセスを得ており、関心が高いことが窺える。さらに、冊子として配布することとした。基礎的研究では、1)表皮内神経伸張と炎症(肥満細胞の活性化)の両方が重要である、2)表皮内神経伸張とかゆみにはnerve growth factor(増強), amphiregulin(増強), substance P(増強), semaphorin(抑制)のバランスが重要である、3)NGF-p75経路の重要性、4)H4 受容体の関与、5)CTACKやTARC/CCL17の関与、6)サイクロスポリンやタクロリムスの抑制効果、8)神経線維のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の関与、などきわめて興味深い新しい知見を得ることができた。
結論
今後も表皮内神経線維のsproutingのメカニズムやかゆみと炎症の機序を生物学的・遺伝学的に明らかにし、新しい治療法の開発を模索する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200729002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「アトピー性皮膚炎、かゆみをやっつけよう」という一般的なサイトを、基礎研究者、臨床研究者、患者の会、マスコミ関係者と一緒に作成したことは、基礎的・臨床的研究の目的意識を醸成する上できわめて有効であった。そのため、国民への普及という面では、本研究班による学術的成果はきわめて大きかった。基礎的には痒み知覚神経の動態に関して新しい知見を数多く得ることができた。
臨床的観点からの成果
かゆみに対する具体的な説明とその対処法をインタネットおよび冊子体で公開できたことは、日常臨床上また患者さんの日常生活を考えた時、とても有意義であった。
ガイドライン等の開発
ガイドラインをどのように応用したら、かゆみを具体的に抑制することができるかという方策を国民に示すことができた。
その他行政的観点からの成果
作成したウェッブサイトは1日100件以上のアクセスを得ており、関心が高いことが窺える。また印刷可能なPDFも公開しているので、講演会などでも使用可能である。
その他のインパクト
ホームページの内容や冊子体は、市民公開講座(計4回)で配布あるいは詳しく説明した。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
16件
市民公開講座・学会/セミナー講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saeki H, Iizuka H, Mori Y, et al.
Prevalence of atopic dermatitis in Japanese elementary schoolchildren.
Br J Dermatol. , 152 (1) , 110-114  (2005)
原著論文2
Morita K, Urabe K, Moroi Y, et al.
Migration of keratinocytes is impaired on glycated collagen I.
Wound Repair Regen. , 13 (1) , 93-101  (2005)
原著論文3
Nakahara T, Urabe K, Fukagawa S, et al.
Engagement of human monocyte-derived dendritic cells into interleukin (IL)-12 producers by IL-1beta + interferon (IFN)-gamma.
Clin Exp Immunol. , 139 (3) , 476-482  (2005)
原著論文4
Tsukamoto H, Horiuchi T, Kokuba H, et al.
Molecular analysis of a novel hereditary C3 deficiency with systemic lupus erythematosus.
Biochem Biophys Res Commun. , 330 (1) , 298-304  (2005)
原著論文5
Hamada M, Furusyo N, Urabe K, et al.
Prevalence of atopic dermatitis and serum IgE values in nursery school children in Ishigaki Island, Okinawa, Japan.
J Dermatol. , 32 (4) , 248-255  (2005)
原著論文6
Dainichi T, Takeshita H, Moroi Y, et al.
Cicatricial pemphigoid with autoantibodies against the laminin 5 gamma 2 subunit.
Eur J Dermatol. , 15 (3) , 189-193  (2005)
原著論文7
Takada H, Kusuhara K, Nomura A, et al.
A novel CIAS1mutation in a Japanese patient with chronic infantile neurological cutaneous and articular syndrome.
Eur J Pediatr. , 164 (12) , 785-786  (2005)
原著論文8
Nakahara T, Moroi Y, Uchi H, et al.
Differential role of MAPK signaling in human dendritic cell maturation and Th1/Th2 engagement.
J Dermatol Sci. , 42 (1) , 1-11  (2006)
原著論文9
Furue M, Uchi H, Moroi Y, et al.
Topical tacrolimus in the management of atopic dermatitis in Japan.
Dermatol Ther. , 19 (2) , 118-126  (2006)
原著論文10
Tamaki K, Kakinuma T, Saeki H, et al.
Serum levels of CCL17/TARC in various skin diseases.
J Dermatol. , 33 (4) , 300-302  (2006)
原著論文11
Fukiwake N, Moroi Y, Imafuku S, et al.
Anti-CXCR3 staining is useful for detecting human cutaneous and mucosal mast cells.
J Dermatol. , 33 (5) , 326-330  (2006)
原著論文12
Fukiwake N, Furusyo N, Kubo N, et al.
Incidence of atopic dermatitis in nursery school children - a follow-up study from 2001 to 2004, Kyushu University Ishigaki Atopic Dermatitis Study (KIDS).
Eur J Dermatol. , 16 (4) , 416-419  (2006)
原著論文13
Uenotsuchi T, Takeuchi S, Matsuda T, et al.
Differential induction of Th1-prone immunity by human dendritic cells activated with Sporothrix schenckii of cutaneous and visceral origins to determine their different virulence.
Int Immunol. , 18 (12) , 1637-1646  (2006)
原著論文14
Ogawa S, Uchi H, Fukagawa S, et al.
Development of atopic dermatitis-specific communication tools: Interview form and question and answer brochure.
J Dermatol. , 34 (3) , 164-171  (2007)
原著論文15
Fukiwake N, Moroi Y, Urabe K, et al.
Detection of autoantibodies to desmoplakin in a patient with oral erythema multiforme.
Eur J Dermatol. , 17 (3) , 238-241  (2007)
原著論文16
Saeki H, Iizuka H, Mori Y, et al.
Community validation of the U.K. diagnostic criteria for atopic dermatitis in Japanese elementary schoolchildren.
J Dermatol Sci. , 47 (3) , 227-231  (2007)
原著論文17
Miyachi Y, Katayama I, Furue M.
Suplatast/tacrolimus combination therapy for refractory facial erythema in adult patients with atopic dermatitis: a meta-analysis study.
Allergol Int. , 56 (3) , 269-275  (2007)
原著論文18
Dainichi T, Uchi H, Moroi Y, et al.
Stevens-Johnson syndrome, drug-induced hypersensitivity syndrome and toxic epidermal necrolysis caused by allopurinol in patients with a common HLA allele: what causes the diversity?
Dermatol Ther. , 215 (1) , 86-88  (2007)
原著論文19
Takeuchi S, Furue M.
Dendritic cells: ontogeny.
Allergol Int. , 56 (3) , 215-223  (2007)
原著論文20
Furusyo N, Takeoka H, Toyoda K, et al.
Thymus and activation regulated chemokines in children with atopic dermatitis: Kyushu University Ishigaki Atopic Dermatitis Study (KIDS).
Eur J Dermatol. , 17 (5) , 397-404  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-