non-coding RNAを用いた新たな慢性C型肝炎制御による治療法開発

文献情報

文献番号
200728019A
報告書区分
総括
研究課題名
non-coding RNAを用いた新たな慢性C型肝炎制御による治療法開発
課題番号
H19-肝炎-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
村上 善基(京都大学大学院医学研究科 付属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井ノ上逸朗(東海大学基礎医学系ゲノム医学)
  • 下遠野邦忠(慶応義塾大学 総合医科学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,299,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVは感染すると高率に慢性化しその結果肝硬変に移行し、肝細胞癌を発生する事が知られている。現在C型慢性肝炎治療はペグインターフェロンとリバビリン併用療法が主であるが、奏効率が50%程度である。塩基配列特異的に遺伝子の発現を制御するマイクロRNAはその発現異常とウイルス感染、発癌との関連が注目されている。我々はHCVを認識するマイクロRNAを利用し慢性ウイルス感染の制御を試みた。またC型慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌、各疾患特異的なマイクロRNA発現プロファイルを得る事ができた。今までとはまったく異なったアプローチでウイルス感染、発癌の制御、と新規RNA創薬研究につながり、社会的貢献度は大きく、研究の意義、必要性は高いと考えられる。
研究方法
塩基配列上HCVゲノムをターゲットとするにするマイクロRNA2種を用いてHCVの複製モデルであるレプリコン細胞2種、SN1a(遺伝子型1b)、JFH1(遺伝子型2a)を用いた。マイクロRNAの発現変化は、発現ベクターを用い過剰発現、antisense oligonucleotide (ASO)を用い機能抑制をそれぞれ行った。マイクロRNAが生理的にターゲット遺伝子と結合しているのを確認するためにRISCに含まれるAgo2を認識する抗体を用い、Ago2-免疫沈降画分のRNA中のターゲット遺伝子量を解析した。感染実験はヒト不死化肝細胞を用いHCV陽性患者血清を加えて行った。マイクロRNAの発現を変化させる際にインターフェロン応答が有るか否かを解析した。
結果と考察
HCVをターゲットとするマイクロRNAを過剰発現した際にウイルスの複製を抑制する可能性、新規にHCVが感染する事に対して予防的に作用する事が今回の実験で示された。またAgo2を利用して、生理的にマイクロRNAとレプリコン遺伝子が結合している事が示された。in vivo実験にてマウス肝で該当するマイクロRNAを有為に発現する事が出来、組織学的にその安全性が確認できた事より、慢性C型肝炎治療の臨床応用への道筋の一端になると考えられる。肝線維化の程度に応じたマイクロRNA発現プロファイルが予備実験で得られた事より、肝線維化をターゲットとした遺伝子治療への応用が期待される。
結論
各種の肝疾患においてマイクロRNA発現プロファイルを得る事により、疾患発現メカニズムの解明の一端となる事がわかった。またこの情報を利用して肝疾患の程度に応じた遺伝子治療の開発に期待を持つ事が出来る。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-