肝炎ウイルス感染防御を目指したワクチン接種の基盤構築

文献情報

文献番号
200728018A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染防御を目指したワクチン接種の基盤構築
課題番号
H19-肝炎-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
水落 利明(国立感染症研究所血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系産婦人科学)
  • 片山 惠子(広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・疾病制御学)
  • 小方 則夫(独立行政法人労働者健康福祉機構燕労災病院)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 溝上 雅史(名古屋市立大学医学部臨床分子情報医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
感染症発生動向調査等から、近年HBVの水平感染(性的接触を主として)の増加が明らかになってきている。本研究班の目的は、HBワクチン接種について、その有効性(抗HBs抗体価の上昇および消長)および感染防御に有効な抗体価の検証、さらにはワクチン接種後の抗体獲得率等の検証を行い、今後のuniversal なHBワクチン接種必要性について検討することにある。
研究方法
新潟県内における分娩取り扱い施設に対し、分娩に関してアンケート調査を実施した。
数種類のHBワクチン接種を行いワクチンの違い、あるいは測定に用いるキットによって乖離が起きるかを検討した。
HBs抗体国内標準品を用いて抗HBs抗体定量測定キットの性能検査を実施した。
感染症法の元に報告されたB型肝炎の届け出内容について検討し、HBV感染経路の変化について考察した。
HBV感染に対する知識と施設内感染対策に対する関する理解度および実践の程度を評価する目的でKAP Studyを実施した。
HBs抗体のin-vivoでの感染阻止能定量のための基礎実験としてヒト肝細胞非置換SCIDマウスおよびヒト肝細胞置換キメラマウスを用い検討した。
急性B型肝炎患者を対象にS遺伝子領域の塩基配列を決定し、HBs抗原の共通抗原基のアミノ酸変異の有無を比較検討した。

結果と考察
本研究により、HBV感染経路の変貌が明らかになってきた。HBワクチン/HBIgの投与による母子感染防止対策事業により垂直感染のリスクは激減した。その一方で、主に性感染(水平感染)によるHBV感染の増加が顕著になってきている。さらには保育施設等の幼児が集団生活する場における血液の取り扱いが感染症に対して無防備であることが明らかになり、B型肝炎に関する正確な情報を提供し啓蒙を促す必要があると考えられた。今後はB型肝炎ウイルス感染症の水平感染を予防するためにuniversal vaccinationが有効であると考えられるが、HBワクチン投与によって誘導されるescape mutant HBVについての考察も必要であろう。
結論
これまでの、主に母子間(垂直感染)及び医療従事者等のハイリスクグループにおけるHBV感染防御を目的としたHBワクチン接種の基本概念に対し検討を加え、今後増加が危惧されるHBVの水平感染の防御を目指したuniversal vaccinizationを推進する施策について更に検討していきたい

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
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