薬剤耐性肝炎ウイルス感染の病態解明と対策に関する研究

文献情報

文献番号
200728015A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性肝炎ウイルス感染の病態解明と対策に関する研究
課題番号
H19-肝炎-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 信幸(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 正彦(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
  • 松本 武久(理化学研究所 横浜研究所)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院)
  • 今村 道雄(広島大学大学院)
  • 中本 安成(金沢大学医学部附属病院)
  • 堀田 博(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 鈴木 哲朗(国立感染症研究所)
  • 鈴木 文孝(虎の門病院 肝臓センター)
  • 坂本 直哉(東京医科歯科大学)
  • 加藤 直也(東京大学医学部附属病院)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
64,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎ウイルスに対する治療は近年急速な進歩を見せているが、B型肝炎ウイルス(HBV)においては核酸アナログ耐性ウイルスの出現、C型肝炎ウイルス(HCV)においてはインターフェロン・リバビリン抵抗性HCVの存在が治療の障害となっている。本研究の目的はこれらの薬剤耐性肝炎ウイルスの感染病態の解明であり、これにより診断法の確立、耐性機構解明とその克服の基盤形成、さらには新規治療法の開発などを行う。
研究方法
治療抵抗性を示す肝炎ウイルスの全ゲノムを経時的解析により治療抵抗性を担うウイルス遺伝子変異領域を解明するとともに、臨床データのデータマイニング解析、インターフェロン系分子のSNP解析、HCV培養細胞系・モデル動物を用いて薬剤耐性に関与する宿主側因子の解明を行う。コンピューター上で肝炎ウイルス蛋白の活性部位に結合する化合物をin silico screeningで探索、培養細胞系およびモデル動物系を用いてその抗耐性ウイルス効果を検証する。
結果と考察
HCV NS5A蛋白のISDRに加えコア蛋白にペグインターフェロン・リバビリン併用療法の治療効果を決定するアミノ酸変異が存在することを明らかとした。データマイニング解析により肝内脂肪沈着、HDLコレステロール値などの宿主側因子がC型肝炎の治療効果に影響することを見出した。IFN誘導遺伝子であるGBP-1がHCV-NS5B蛋白が特異的に結合しHCV増殖を特異的に抑制すること、病態に関連するインターフェロン系関連分子(TLR3、2,5AS)のSNPを同定した。核酸アナログ耐性HBV遺伝子変異の高感度検出法をTaqmanPCRおよびInvader assayにより開発、またHBV全遺伝子の解析を行いnt1896、nt1287の多型が耐性変異に関与することを明らかとした。In silico screeningによりHCV増殖を強く阻害するリード化合物を同定した。
結論
薬剤耐性あるいは治療抵抗性肝炎ウイルスの病態にはウイルスゲノム構造および宿主因子が重要な役割を持つことを明らかとした。特にHCVコア蛋白のアミノ酸変異が治療効果に強い影響を与える発見は、臨床的な治療方針の決定に重要な情報を与えるとともに、その機序の解明が新たな薬剤耐性機構の研究に展開することが予想される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
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