肝炎ウイルス感染の肝外病変の基礎的及び臨床的包括研究

文献情報

文献番号
200728013A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染の肝外病変の基礎的及び臨床的包括研究
課題番号
H18-肝炎-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 佐田通夫(久留米大学医学部)
  • 岡上武(大阪府済生会吹田病院)
  • 熊田博光(虎の門病院分院)
  • 小原恭子(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 林純(九州大学大学院医学研究院)
  • 石坂信和(東京大学医学部附属病院)
  • 山口一成(国立感染症研究所)
  • 勝二郁夫(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 森屋恭爾(東京大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
92,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国ではC型肝炎ウイルス(HCV)持続感染者が約200万人存在し、慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと到る連鎖に苦しめられている。しかし、HCV感染症は肝臓だけの感染症では無く、クリオグロブリン血症、シェーグレン症候群、B細胞リンパ腫などの全身性病変を起こすこと、また、肝外病変である脂質代謝異常や糖代謝異常・インスリン抵抗性を合併しやすく、慢性肝炎の進行、肝癌発生への影響も示唆されてきている。しかし、実態は不明である。
C型肝炎は全身感染症であることを明らかにし、それが肝病変、予後に与える影響を明らかにする。
研究方法
臨床面と基礎面の双方から多角的に検討を行なう。
結果と考察
1) HCVそのものにより脂質代謝異常とインスリン抵抗性という代謝異常が起こること、両者の肝発癌との関連性を動物モデルで明らかにした。
2) HCV感染者においては扁平苔癬、糖尿病、インスリン抵抗性、甲状腺機能異常、等の肝外徴候の合併頻度が高いことを明らかにした。
3) C型肝炎においては、インスリン抵抗性、肝脂肪化の合併が多く、酸化ストレスの産生を通して慢性肝炎の進行に関与していることを明らかにした。
4) リバビリン併用ペグ・インターフェロン治療における効果予測因子として、HCVコア蛋白のアミノ酸70・91置換と脂質代謝要因が重要である事を明らかにした。
5) C型慢性肝炎の肝外病変として、動脈硬化および慢性腎臓病が存在することを明らかにした。
6) 住民検診の解析により、HCV感染症では血清総コレステロール値、LDLコレステロール値が有意に低いことを明らかにした。
7) 新たなNS5A結合蛋白質としてRac1シグナル伝達に関与するB-ind1を同定し、HCVの複製における役割を解析した。
8) C型肝炎においては血清脂質異常が起こり、インターフェロン著効例では血清脂質異常が正常化することを確認した。
9) C型慢性肝炎患者末梢血でメモリーB細胞が減少していることを明らかにした
10) B細胞で全長HCV遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを樹立し、IRF-1欠損マウスと交配系したところリンパ腫の高発生が認められた。
11) コア蛋白発現によるB細胞表面分子変化を解析した。接着分子CD48抗原の発現低下が最も顕著であった。
結論
肝炎ウイルス感染症は全身疾患である。その認識をもって感染者の管理・治療に当ることで、患者の予後、QOLの大幅な改善が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
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