肝がん患者のQOL向上に関する研究

文献情報

文献番号
200728012A
報告書区分
総括
研究課題名
肝がん患者のQOL向上に関する研究
課題番号
H18-肝炎-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 研司(独立行政法人労働者健康福祉機構横浜労災病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小俣 政男(東京大学大学院医学系研究科消化器内科)
  • 工藤 正俊(近畿大学医学部消化器内科)
  • 熊田 博光(虎の門病院分院)
  • 佐田 通夫(久留米大学医学部消化器内科部門)
  • 國土 典宏(東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学)
  • 門田 守人(大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
  • 兼松 隆之(長崎大学大学院内臓機能医学移植消化器外科)
  • 江川 裕人(京都大学医学部付属病院臓器移植医療部肝胆膵移植外科)
  • 森脇 久隆(岐阜大学臓器病態学講座消化器病態学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝がんは根治的治療が行われても再発が避けられず,治療を長期に亘って繰り返さざるを得ない。従って,各治療法の有用性も生存率のみではなく,患者のQOL(quality of life)を考慮して評価する必要がある。そこで,平成15年度に肝がん患者用の新規質問票を作成し,平成16年度には肝がんに対する各種治療法の有用性をQOLの観点から評価するprospective studyを開始した。同年の検討では治療3ヶ月後までのQOLに関しては,治療時の疼痛をコントロールできれば,RFA治療が他の治療法に比して良好であることが示された。昨年度から更に長期に亘るQOLの評価を目的とした調査を開始した。
研究方法
計21項目,4種類の下位尺度からなる新規質問票とSF-36を用いて肝がんの初回及び再治療例を対象に治療前と治療後3ヶ月毎にQOLを評価した。この新規質問票は,848例(うちがん合併494例)の慢性肝疾患を対象とした平成15年度のpilot studyにおける因子分析の結果,18の質問項目は4因子に分類され,各因子におけるCronbach α係数が何れも0.7以上を示し,信頼性は十分に高いことが確認されている。
結果と考察
平成20年1月31日までの登録症例総数は370例であった。本年度は治療後6ヶ月までのQOLを計128例で検討した。肝がん治療後3ヶ月で肝切除群におけるSF-36のRP,REスコアは低下し,RFA群との間に有意差を認めたが,治療後6ヶ月には改善した。新規質問票の治療時の痛み(Q19)スコアは,RFA群において肝切除群より6ヶ月後に有意に低値であったが,治療後の皮膚症状(Q20)スコアは,6ヶ月後で,有意に高値となった。治療後6ヶ月までに観察期間を延長しても,治療時の痛みを制御できれば,RFA治療後の患者のQOLは他の治療法に比べて良好な可能性がある。根治性の高い肝移植や肝切除を受けた患者のQOLを正当に評価するため,長期観察により術後再発の患者QOLに対する影響の検討が必要である。新規質問票は,SF-36と共に用いることで,肝がん患者のQOLを適切に評価するのに有用であると考えられた。
結論
肝がん治療後6ヶ月に観察期間を延長しても,治療時の痛みを制御できれば,RFA治療後の患者QOLは他の治療法に比べて良好な可能性がある。平成20年末まで調査を継続する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-