L3分画および血流中癌細胞テロメラーゼを指標とした肝細胞癌のサーベイランスの有用性

文献情報

文献番号
200728006A
報告書区分
総括
研究課題名
L3分画および血流中癌細胞テロメラーゼを指標とした肝細胞癌のサーベイランスの有用性
課題番号
H17-肝炎-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
青柳 豊(新潟大学教育研究院医歯学系 医学部第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 恩地 森一(国立大学法人愛媛大学 消化器内科)
  • 田中 榮司(国立大学法人信州大学 消化器内科)
  • 高木 均(国立大学法人群馬大学 病態制御内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
9,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は肝癌患者に対して,治療前後のAFP-L3分画ならびに血流中肝癌細胞のテロメラーゼ活性に基づき治療法を選択し,予後改善を図ることを目的とする.
研究方法
AFP-L3分画はLBA法を用いて測定し,テロメラーゼ発現は血中癌細胞を磁気Beadsにより収集しRNA抽出後,RT-PCR法によりhTERT mRNAを増幅し検出する.これらマーカーの治療前の多寡および治療後の低下率と,肝癌の再発率および生命予後ついて検討する.
結果と考察
平成18年度からは前向きにHCC症例355例を登録・追跡調査を行ない比較的短期間に評価が可能である無再発生存に対する各種腫瘍マーカーの意義について解析を行った.その結果,1) 治療前後におけるAFP,AFP-L3分画,PIVKAⅡは無再発生存期間を有意に層別化した.2) 手術療法では治療前AFP-L3分画の多寡は無再発生存予後に与える影響は確認できなかった.一方,穿刺治療では治療前AFP-L3分画の多寡が無再発生存に影響を及ぼしており,外科切除もラジオ波焼灼術も選択可能な3cm・3個以内のHCC症例においても同様の傾向が認められた.3) 血中癌細胞テロメラーゼ活性を通常のPCR法とTaqManリアルタイム定量法で検出したところ,陽性症例は陰性者に比較して無再発生存期間の短縮傾向を認めたが,いずれの測定法においても検出感度が低いことが明らかとなった.
結論
外科切除,穿刺治療のいずれも選択可能なHCCの治療において,AFP-L3分画陽性症例では残肝予備能の範囲内で出来る限り腫瘍制御能の高い外科手術を選択することを推奨し,治療後においては,L3持続陽性症例では腫瘍制御が不完全であることを前提に追加治療を考慮する必要があると考えられた.血中テロメラーゼ活性測定は感度が低く,予後予測マーカーとしての臨床応用には更なる改良が必要であると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2008-04-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200728006B
報告書区分
総合
研究課題名
L3分画および血流中癌細胞テロメラーゼを指標とした肝細胞癌のサーベイランスの有用性
課題番号
H17-肝炎-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
青柳 豊(新潟大学教育研究院医歯学系 医学部第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 恩地 森一(国立大学法人愛媛大学 医学部消化器内科)
  • 田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部消化器内科)
  • 高木 均(国立大学法人群馬大学 病態制御内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は肝癌患者に対して,治療前後のAFP-L3分画ならびに血流中肝癌細胞のテロメラーゼ活性に基づき治療法を選択し,予後改善を図ることを目的とする.
研究方法
AFP-L3分画はLBA法を用いて測定し,テロメラーゼ発現は血中癌細胞を磁気Beadsにより収集しRNA抽出後,RT-PCR法によりhTERT mRNAを増幅し検出する.これらマーカーの治療前の多寡および治療後の低下率と,肝癌の再発率および生命予後ついて検討する.
結果と考察
平成17年度はHCC症例1,045例について後向きに検討を行い,各種腫瘍マーカーの生命予後規定因子としての意義の解析を行った.平成18年度からは前向きにHCC症例355例を登録・追跡調査を行ない,比較的短期間に評価が可能である無再発生存に対する各種腫瘍マーカーの意義について検討を行った.その結果,1) 治療前後におけるAFP,AFP-L3分画,PIVKAⅡは無再発生存期間,生命予後を有意に層別化した.2) AFP-L3分画はAFP低値例においても極めて強い予後規定因子であり,AFP-L3分画陽性,陰性という因子が生命予後に及ぼす影響は,腫瘍ステージ1段階の進展と同等であることが確認された.3) 手術療法では治療前AFP-L3分画の多寡は予後に与える影響は確認できなかった.一方,穿刺治療では治療前AFP-L3分画の多寡が無再発生存,生命予後に影響を及ぼしており,外科切除もラジオ波焼灼術も選択可能な3cm・3個以内のHCC症例においても同様の傾向が認められた.4) 血中癌細胞テロメラーゼ活性を通常のPCR法とTaqManリアルタイム定量法で検出したところ,陽性症例は陰性者に比較して無再発生存期間の短縮傾向を認めたが,いずれの測定法においても検出感度が低いことが明らかとなった.
結論
外科切除,穿刺治療のいずれも選択可能なHCCの治療において,AFP-L3分画陽性症例では残肝予備能の範囲内で出来る限り腫瘍制御能の高い外科手術を選択することを推奨し,治療後においては,L3持続陽性症例では腫瘍制御が不完全であることを前提に追加治療を考慮する必要があると考えられた.血中テロメラーゼ活性測定は感度が低く,予後予測マーカーとしての臨床応用には更なる改良が必要であると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200728006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究において, AFP-L3分画はAFP低値例においても極めて強い予後規定因子であることを確認した.手術療法では治療前AFP-L3分画の多寡は予後に与える影響は確認できなかったが,穿刺治療では治療前AFP-L3分画の多寡が無再発生存,生命予後に影響を及ぼすことを確認した.血中癌細胞テロメラーゼ活性を通常のPCR法とTaqManリアルタイム定量法で検出したところ,陽性症例は陰性者に比較して無再発生存期間の短縮傾向を認めたが,いずれの測定法においても検出感度が低いことが明らかとなった.
臨床的観点からの成果
臨床的観点からはHCCの治療方針に関して,外科切除,穿刺治療のいずれも選択可能なHCCの治療において,AFP-L3分画陽性症例では残肝予備能の範囲内で出来る限り腫瘍制御能の高い外科手術を選択することを推奨すること.治療後においては,L3持続陽性症例では腫瘍制御が不完全であることを前提に追加治療を考慮する必要があること.以上の結論が得られた.
ガイドライン等の開発
HCC治療について,肝障害度と腫瘍進展度に基づく既存のガイドラインに生物学的悪性度の指標としてAFP-L3分画を加えた試案を提唱した.
その他行政的観点からの成果
HCC治療において,生物学的悪性度の指標を加えた新しい治療アルゴリズムの構築により,適切な治療程度の確保と治療回数の減少を指向し,HCC患者の予後改善を図る.また,HCC患者の治療入院期間の短縮,結果としての在院日数の短縮や医療費削減への寄与を図る.
その他のインパクト
特になし.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
102件
平成17年度から平成19年度までの各分担者の合計論文数.
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oya H, Sato Y, Yamamoto S, et al.
Comparison between human-telomerase reverse transcriptase mRNA and alpha-fetoprotein mRNA as a predictive value for recurrence of hepatocellular carcinoma in living donor liver transplantation
Transplant Proc. , 3636-3639  (2006)
原著論文2
Tsuchiya A, Heike T, Baba S, et al.
Long-term culture of postnatal mouse hepatic stem/progenitor cells and their relative developmental hierarchy.
Stem Cells. , 895-902  (2007)
原著論文3
Maruyama M, Yamamoto T, Kohara Y, et al.
Mtf-1 lymphoma-susceptibility locus affects retention of large thymocytes with high ROS levels in mice after gamma-irradiation.
Biochem Biophys Res Commun. , 209-215  (2007)
原著論文4
Kamimura K, Kobayashi M, Narisawa R,et al.
Collagenous gastritis: A case report and endoscopic and pathologic evaluation of the nodularity of Gastric Mucosa.
Dig. Dis. Sci. , 995-1000  (2007)
原著論文5
Kamimura K, Mishima Y, Obata M, et al.
Lack of Bcl11b tumor suppressor results in vulnerability to DNA replication stress and damages.
Oncogene , 5840-5850  (2007)
原著論文6
Takamura M, Matsuda Y, Yamagiwa S, et al.
An inhibitor of c-Jun NH2-terminal kinase, SP600125, protects mice from D-galactosamine/lipopolysaccharide-induced hepatic failure by modulating BH3-only proteins.
Life Sci. , 1335-1344  (2007)
原著論文7
Takamura M, Ichida T, Ohkoshi S, et al.
Decompensated lamivudine-resistant Hepatitis B virus related cirrhosis treated successfully with adefovir dipivoxil allowin surgery for hepatocellular carcinoma.
Intern Med , 367-371  (2007)
原著論文8
Honda Y, Yamagiwa S, Matsuda Y, et al.
Altered expression of TLR homolog RP105 on monocytes hypersensitive to LPS in patients with primary biliary cirrhosis.
J Hepatol. , 404-411  (2007)
原著論文9
Yano M, Ikeda M, Abe KI, et al.
Comprehensive Analysis of the Effects of Ordinary Nutrients on Hepatitis C Virus RNA Replication in Cell Culture.
Antimicrob Agents Chemother. , 2016-2027  (2007)
原著論文10
Kobayashi M, Kuroiwa T, Suda T, et al.
The fucosylated fraction of alpha-fetoprotein, L3, as a useful prognostic factor in patients with hepatocellular carcinoma with special reference to the low concentration of serum alpha-fetoprotein.
Hepatol Res. , 914-922  (2007)
原著論文11
Kamimura K, Ohi H, Kubota T, et al.
Haploinsufficiency of Bcl11b for suppression of lymphomagenesis and thymocyte development.
Biochem Biophys Res Commun. , 538-542  (2007)
原著論文12
Aiba T, Takahashi T, Suzuki K, et al.
Liver injury induced by a Japanese herbal medicine, sairei-to (TJ-114, Bupleurum and Hoelen Combination, Chai-Ling-Tang)
J Gastroenterol Hepatol. , 762-763  (2007)
原著論文13
Suzuki K, Kawauchi Y, Palaniyandi SS, et al.
Blockade of interferon-gamma-inducible protein-10 attenuates chronic experimental colitis by blocking cellular trafficking and protecting intestinal epithelial cells.
Pathol Int. , 413-420  (2007)
原著論文14
Tsuboi K, Takamura M, Sato Y, et al.
Severe acute pancreatitis as an initial manifestation of primary hyperparathyroid adenoma in a pediatric patient.
Pancreas. , 100-101  (2007)
原著論文15
Yamazaki K, Ohkoshi S, Maruyama M, et al.
Early upsurge in anti-HBs titer possibly caused by the immunomodulative, not by the mutagenetic effect of interferon and ribavirin.
Hepatol Res. , 477-481  (2007)
原著論文16
Sakamoto N, Tanabe Y, Yokota T, et al.
Inhibition of hepatitis C virus infection and expression in vitro and in vivo by recombinant adenovirus expressing short hairpin RNA.
J Gastroenterol Hepatol.  (2007)
原著論文17
Hokari M, Matsuda Y, Wakai T, et al.
Tumor suppressor carcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 1 potentates the anchorage-independent growth of human hepatoma HepG2 cells.
Life Sci. , 336-345  (2007)
原著論文18
Nakamura J, Kobayashi K, Toyabe S, et al.
The cost-effectiveness of the new protocol reflecting rapid virologic response to peginterferon alpha-2b and ribavirin for chronic hepatitis C.
Eur J Gastroenterol Hepatol. , 733-739  (2007)
原著論文19
Yamazaki K, Suzuki K, Ohkoshi S, et al.
Temporal treatment with interferon-b prevents hepatocellular carcinoma in hepatitis B virus-X gene transgenic mice.
J Hepatol. , 255-265  (2007)
原著論文20
Oshima T, Kawasaki T, Ohashi R, et al.
Downregulated P1 promoter-driven hepatocyte nuclear factor-4α expression in human colorectal carcinoma is a new prognostic factor against liver metastasis.
Pathology International , 82-90  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-