肝硬変に対する治療に関する研究

文献情報

文献番号
200728005A
報告書区分
総括
研究課題名
肝硬変に対する治療に関する研究
課題番号
H17-肝炎-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 古賀 満明(独立行政法人国立病院機構嬉野医療センター)
  • 小林 正和(独立行政法人国立病院機構中信松本病院)
  • 林 茂樹(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 中牟田 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター)
  • 加藤 道夫(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 矢倉 道泰(独立行政法人国立病院機構東京病院)
  • 高野 弘嗣(独立行政法人国立病院機構呉医療センター)
  • 肱岡 泰三(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター)
  • 室 豊吉(独立行政法人国立病院機構大分医療センター)
  • 小松 達司(独立行政法人国立病院機構横浜医療センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター)
  • 太田 肇(独立行政法人国立病院機構金沢医療センター)
  • 増本 陽秀(独立行政法人国立病院機構小倉病院)
  • 米田 俊貴(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)
  • 中尾 一彦(国立大学法人長崎大学 医学部)
  • 矢野 博久(国立大学法人久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
36,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ウイルス性肝硬変患者を対象にウイルス駆除と発癌抑止の2つの治療目標を設定し、具体的な治療法の提示とともに治療指針を作成することで、わが国のウイルス性肝硬変患者の生命予後とQOLの向上を目指す。
研究方法
 26の国立病院機構肝疾患専門医療施設でPegIFNα2bとリバビリン併用療法をおこなったC型慢性肝炎症例(肝硬変例を含む)1083例(HCV 1型 824例、2型 259例)を登録し治療成績と治療効果予測因子に関して解析をおこなった。
結果と考察
 HCV 1型高ウイルス(100 KIU/ml)群で標準的治療をおこなった674例でのSVR(Sustained Viral Response:治療後24週目血中HCV-RNA陰性)率は、全対象で41%(278/674)、46週以上治療例では53%(255/478)であったがF4肝硬変症例では16%(8/50)、27%(7/26)と低値であった。一方、HCV 2型高ウイルス(100 KIU/ml)群のSVR率は、全対象で77%(151/197)、46週以上治療例では80%(151/188)であった。
 HCV 1型高ウイルス群を対象にData mining analyses(Decision tree method)とStepwise multiple regression analysesを組み合わせた結果、下記のようなSVR率の予測式を作成した。(SVR)%=42.95a+20.84b-0.5065c+15.99d-11.05e+15.91f+0.002682g、(a:治療期間276日以上→1、276日未満→0、 b:年齢48歳未満→1、48歳以上→0、c:体重(kg)、d:ペグIFN量75μg以上→1、75μg未満→0、e:血小板数15万未満→1、15万以上→0、f:診断慢性肝炎→1、肝硬変→0、g:白血球数)、なお本予測式を生成した際の精度は71.2%(480/674)である。
結論
 HCV 1型高ウイルス群F4肝硬変症例のSVR率は10-20%代と低く、現行の治療法でウイルスを確実に駆除することは極めて困難である。F4肝硬変症例に対するIFN療法では、IFNの抗ウイルス効果に注目するだけではなく、IFNのもつ抗炎症効果や直接的抗腫瘍効果に期待して、発癌抑止を目指すべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-05-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200728005B
報告書区分
総合
研究課題名
肝硬変に対する治療に関する研究
課題番号
H17-肝炎-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石橋 大海(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 古賀 満明(独立行政法人国立病院機構嬉野医療センター)
  • 小林 正和(独立行政法人国立病院機構中信松本病院)
  • 林 茂樹(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 中牟田 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター )
  • 加藤 道夫(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
  • 矢倉 道泰(独立行政法人国立病院機構東京病院)
  • 高野 弘嗣(独立行政法人国立病院機構呉医療センター)
  • 肱岡 泰三(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター)
  • 室 豊吉(独立行政法人国立病院機構大分医療センター)
  • 小松 達司(独立行政法人国立病院機構横浜医療センター)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター)
  • 太田 肇(独立行政法人国立病院機構金沢医療センター)
  • 増本 陽秀(独立行政法人国立病院機構小倉病院)
  • 米田 俊貴(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)
  • 中尾 一彦(国立大学法人長崎大学 医学部)
  • 矢野 博久(国立大学法人久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、ウイルス性肝硬変患者を対象にウイルス駆除と発癌抑止の2つの治療目標を設定し、具体的な治療法の提示とともに治療指針を作成することで、わが国のウイルス性肝硬変患者の生命予後とQOLの向上を目指す。
研究方法
 26の国立病院機構肝疾患専門医療施設でPegIFNα2bとリバビリン併用療法をおこなったC型慢性肝炎症例(肝硬変例を含む)1083例(HCV 1型 824例、2型 259例)を登録し治療成績と治療効果予測因子に関して解析をおこなった。
結果と考察
 HCV 1型高ウイルス(100 KIU/ml)群で標準的治療をおこなった674例でのSVR(Sustained Viral Response:治療後24週目血中HCV-RNA陰性)率は、全対象で41%(278/674)、46週以上治療例では53%(255/478)であったがF4肝硬変症例では16%(8/50)、27%(7/26)と低値であった。一方、HCV 2型高ウイルス(100 KIU/ml)群のSVR率は、全対象で77%(151/197)、46週以上治療例では80%(151/188)であった。
HCV 1型高ウイルス群を対象にData mining analyses(Decision tree method)とStepwise multiple regression analysesを組み合わせた結果、下記のようなSVR率の予測式を作成した。(SVR)%=42.95a+20.84b-0.5065c+15.99d-11.05e+15.91f+0.002682g、(a:治療期間276日以上→1、276日未満→0、 b:年齢48歳未満→1、48歳以上→0、c:体重(kg)、d:ペグIFN量75μg以上→1、75μg未満→0、e:血小板数15万未満→1、15万以上→0、f:診断慢性肝炎→1、肝硬変→0、g:白血球数)、なお本予測式を生成した際の精度は71.2%(480/674)である。
結論
 HCV 1型高ウイルス群F4肝硬変症例のSVR率は10-20%代と低く、現行の治療法でウイルスを確実に駆除することは極めて困難である。F4肝硬変症例に対するIFN療法では、IFNの抗ウイルス効果に注目するだけではなく、IFNのもつ抗炎症効果や直接的な抗腫瘍効果に期待して、発癌抑止を目指すべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-04-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200728005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 C型肝炎の標準的治療であるPegIFNα2bとリバビリン併用療法の治療効果に影響を及ぼす因子について、統計解析に加えて人工知能として位置づけられているデータマイニング解析を用いて明らかにした。
 C型肝炎IFN治療に効果に影響を及ぼす薬物応答性遺伝子のSNP解析をおこない、いくつかの候補遺伝子とSNPを明らかにした。
臨床的観点からの成果
 HCV 1型高ウイルス群の治療登録症例を対象として、Data mining analyses(Decision tree method)とStepwise multiple regression analysesを組み合わせた結果、PegIFNα2bとリバビリン併用療法のウイルス駆除率の予測式を作成した。治療前の時点で、個々の症例の本治療での治癒確率を計算することを可能とした。
ガイドライン等の開発
 治療登録症例での解析および上記治療効果予測式からは、HCV 1型高ウイルス群の高齢のF4肝硬変症例でのウイルス駆除率は10-20%代と低く、現行の治療法でウイルスを確実に駆除することは極めて困難である。F4肝硬変症例に対するIFN療法では、IFNの抗ウイルス効果に注目するだけではなく、IFNのもつ抗炎症効果やIFNの抗腫瘍効果に期待して、発癌抑止を目指すべきである。
その他行政的観点からの成果
 平成20年度4月から国の肝炎対策事情の一環として、IFN治療費の公的助成が始まる。治療費の患者負担が軽減されるとともに、全国で本治療法を享受しようとする者が増加することが期待されている。治療前の時点で、個々の患者の治療効果を予測することは、本治療を効率よく安全におこなう上で必要である。本研究班で作成した治療効果予測式は、日常検査で測定可能な項目を用いて、簡単に計算できるように作成した。本予測式を普及させることにより、患者自身も治癒確率を把握し、十分理解した上で本治療法を受けることが可能となる。
その他のインパクト
 共同通信社の最新医療情報に取り上げられた。
 http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0116hepatitis.html

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
70件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
75件
学会発表(国際学会等)
27件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
八橋 弘,中尾瑠美子,石橋大海 他
HCV-肝硬変への治療-,C型肝硬変と抗ウイルス療法
B型,C型肝炎治療における新たな問題点 , 130-136  (2008)
原著論文2
八橋 弘
インターフェロンの治療効果予測-SNPとデータマイニングを用いた解析
肝臓 , 46 (10) , 599-603  (2005)
原著論文3
Taura N, Yatsuhashi H, Eguchi K, et al.
Increasing hepatitis C virus-associated hepato cellular carcinoma mortality and aging: Long term trends in Japan
Hepatol Res. , 34 , 130-134  (2006)
原著論文4
Ikeda M, Yatsuhashi H, Watanabe H, et al.
Risk factors for development of hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis C after sustained response to interferon
J Gastroenterol. , 40 (2) , 148-156  (2005)
原著論文5
Tokita H, Harada H, Okamoto H, et al.
Risk factors for the development of hepatocellular carcinoma among patients with chronic hepatitis C who achieved a sustained virological response to interferon therapy
J of GastroenterolHepatol. , 20 , 752-758  (2005)
原著論文6
Migita K, Yatsuhashi H, Ishibashi H, et al.
Serum levels of interleukin -6 and its soluble receptors in patients with hepatitis C virus infection
Hum Immunol. , 67 , 27-32  (2006)
原著論文7
Ikeda M, Yatsuhashi H, Watanabe H, et al.
Clinical features of hepatocellular carcinoma that occur after sustained virological response to interferon for chronic hepatitis C
J Gastroenterol Hepatol. , 21 , 122-128  (2006)
原著論文8
Oie S, Yano H, Kuwano M, et al.
The up-regulation of type I interferon receptor gene plays a key role in hepatocellular carcinoma cells in the synergistic antiproliferative effect by 5-fluorouracil and interferon- alpha
Int J Oncol. , 29 (6) , 1469-1478  (2006)
原著論文9
Yano H, Yanai Y, Kojiro M, et al.
Growth inhibitory effects of interferon-alpha subtypes vary according to human liver cancer cell lines
J Gastroenterol Hepatol. , 21 (11) , 1720-1725  (2006)
原著論文10
Yano H, Ogasawara S, Kojiro M, et al.
Growth inhibitory effects of pegylated IFN alpha-2b on human liver cancer cells in vitro and in vivo
Liver Int. , 26 (8) , 964-975  (2006)
原著論文11
八橋 弘,長岡進矢,阿比留正剛
HBVの自然経過と治療方針について
日本消化器病学会雑誌 , 104 (10) , 1450-1458  (2007)
原著論文12
Satoh T, Masumoto A.
Accordion Index: A new tool for the prediction of the efficacy of peg-interferon- alpha-2b and ribavirin combination therapy for chronic hepatitis C
Hepatol Res. , 38 , 315-318  (2008)
原著論文13
Kusaba M, Nakao K, Eguchi K, et al.
Abrogation of constitutive STAT3 activity sensitizes human hepatoma cells to TRAIL-mediated apoptosis
J Hepatol , 47 (4) , 546-555  (2007)
原著論文14
Ichikawa T, Nakao K, Eguchi K, et al.
Role of growth hormone, insulin-like growth factor 1 and insulin-like growth factor-binding protein 3 in development of non-alcoholic fatty liver disease
Hepatol Int , 1 (2) , 287-294  (2007)
原著論文15
Ogasawara S, Yano H, Kojiro M, et al.
Growth Inhibitory Effects of IFN-β on Human Liver Cancer Cells In Vitro and In Vivo
J Interferon Cytokine Res , 27 , 507-516  (2007)
原著論文16
Yano H, Basaki Y, Kojiro M, et al.
Effects of IFN-α on α-fetoprotein expressions in hepatocellular carcinoma cells
J Interferon Cytokine Res , 27 , 231-238  (2007)
原著論文17
矢野博久、神代正道
肝細胞癌に対するインターフェロンの効果-基礎的検討から
日本消化器病学会雑誌 , 104 , 644-653  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-