培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発

文献情報

文献番号
200728004A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発
課題番号
H17-肝炎-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 望月 英典(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
23,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は持続感染化し肝臓癌に至る重大な感染症であり、現在のウイルス保有者数は世界中で1.7億人(HIV感染者の4倍)にのぼると言われているが、インターフェロン及びリバビリンの治療効果は不十分である。輸血用血液のスクリーニングにより新規感染者数は減少したが、医療従事者などハイリスクグループに予防的ワクチンが必要である。さらに薬物常用者のHCV感染やHIV感染者のHCV重感染の予防が必要である。また、治療用ワクチンの効果も期待され、HCVのワクチン開発が望まれている。
研究方法
本研究ではJFH-1株によるリコンビナントウイルス粒子産生系を中心とした予防的ワクチンの実用化に向けた研究を行う。精製ウイルス粒子を大量に取得することが必要なため、ウイルス生産法および精製法の向上に必要な技術開発を行う。さらに、より安全なウイルスとして、中空粒子やウイルス抗原を利用した研究を進める。また、基盤的研究として感染中和機構に重要なHCVの初期感染過程を解析する。以上の研究によりHCV予防・治療ワクチン実用化に向けた基盤的研究を行なう。
結果と考察
HCVのワクチン開発が進んでこなかった理由はHCVのウイルス培養系が存在しなかったことである。JFH-1株を用いた実験系により感染性ウイルスを用いた実験が可能となった。3年間で以下に示すような成果をあげることができた。
1.JFH-1株およびキメラウイルスの大量培養法および精製法を樹立した。
2.C型肝炎ウイルスの感染中和活性測定系を樹立した。
3.精製ウイルス粒子をマウスに免疫し、特異的抗体の誘導と感染中和活性を検出した。
4.Virus like particleの作製に成功し、その感染性を確認できた。
5.C型肝炎ウイルスのワクチン開発に必要なその他の基礎的研究を行った。
結論
3年間にわたる本研究は上記のように多くの成果をあげた。これまで困難と考えられていた、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発の可能性を開く大きな意義がある。しかし、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発はまだその緒についたばかりであり、今後もより一層の研究の進展が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200728004B
報告書区分
総合
研究課題名
培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発
課題番号
H17-肝炎-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所ウイルス第二部 )
  • 望月 英典(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は持続感染化し肝臓癌に至る重大な感染症であり、現在のウイルス保有者数は世界中で1.7億人(HIV感染者の4倍)にのぼると言われているが、インターフェロン及びリバビリンの治療効果は不十分である。輸血用血液のスクリーニングにより新規感染者数は減少したが、医療従事者などハイリスクグループに予防的ワクチンが必要である。さらに薬物常用者のHCV感染やHIV感染者のHCV重感染の予防が必要である。また、治療用ワクチンの効果も期待され、HCVのワクチン開発が望まれている。
研究方法
本研究ではJFH-1株によるリコンビナントウイルス粒子産生系を中心とした予防的ワクチンの実用化に向けた研究を行う。精製ウイルス粒子を大量に取得することが必要なため、ウイルス生産法および精製法の向上に必要な技術開発を行う。さらに、より安全なウイルスとして、中空粒子やウイルス抗原を利用した研究を進める。また、基盤的研究として感染中和機構に重要なHCVの初期感染過程を解析する。以上の研究によりHCV予防・治療ワクチン実用化に向けた基盤的研究を行なう。
結果と考察
HCVのワクチン開発が進んでこなかった理由はHCVのウイルス培養系が存在しなかったことである。JFH-1株を用いた実験系により感染性ウイルスを用いた実験が可能となった。3年間で以下に示すような成果をあげることができた。1.JFH-1株およびキメラウイルスの大量培養法および精製法を樹立した。2.C型肝炎ウイルスの感染中和活性測定系を樹立した。3.精製ウイルス粒子をマウスに免疫し、特異的抗体の誘導と感染中和活性を検出した。4. Virus like particleの作製に成功し、その感染性を確認できた。5.C型肝炎ウイルスのワクチン開発に必要なその他の基礎的研究を行った。
結論
3年間にわたる本研究は上記のように多くの成果をあげた。これまで困難と考えられていた、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発の可能性を開く大きな意義がある。しかし、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発はまだその緒についたばかりであり、今後もより一層の研究の進展が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200728004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
3年間にわたる本研究は下記に記す成果をあげた。これまで困難と考えられていた、C型肝炎ウイルスに対するワクチン開発の可能性を開く大きな意義がある。1.JFH-1株およびキメラウイルスの大量培養法および精製法を樹立した。2.C型肝炎ウイルスの感染中和活性測定系を樹立した。3.精製ウイルス粒子をマウスに免疫し、特異的抗体の誘導と感染中和活性を検出した。4.Virus like particleの作製に成功し、その感染性を確認できた。5.C型肝炎ウイルスのワクチン開発に必要なその他の基礎的研究を行った。
臨床的観点からの成果
ウイルス性肝炎でC型とE型には市販されているワクチンがない。これまで成人に感染して持続感染化するHCVに対して予防的ワクチンの開発は困難と考えられてきた。しかし、本研究班を含めて最近の研究によりHCVに対する感染中和抗体の存在し、感染中和抗体の誘導により持続感染化率が低下するなどの臨床的意義が明らかとなってきた。従って感染中和抗体を誘導するC型肝炎ワクチン開発が期待されてきている。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
輸血用血液のスクリーニングにより新規HCV感染者は減少しているが、医療従事者などハイリスクグループに予防的ワクチンが必要である。また、治療用ワクチンも期待されている。HCVワクチンが開発され、HCVの新たな予防、治療法が開発されれば、多くの患者の社会復帰を可能にし、医療保険のコスト軽減に寄与できる。また、予防用ワクチンを開発することができればHCVキャリアー率の高い国々への国際協力が可能となる。特に海外に多い薬物常用者のHCV感染やHIV感染者のHCV重感染の予防が可能となりその意義は大きい。
その他のインパクト
2005年8月15日の日本経済新聞で「C型肝炎ウイルスワクチン開発着手」が掲載された。また、2007年8月22日の日本経済新聞で「C型肝炎ワクチン試作」が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
46件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
69件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murayama A., Date T., Wakita T. et al.
The NS3 helicase and NS5B-to-3'X regions are important for efficient hepatitis C virus strain JFH-1 replication in Huh7 cells
Journal of Virology , 81 (15) , 8030-8040  (2007)
原著論文2
Akazawa D., Date T., Wakita T. et al.
CD81 Expression Is Important for Heterogeneous HCV Permissiveness of Huh7 Cell Clones.
Journal of Virology , 81 (10) , 5036-5045  (2007)
原著論文3
Kato T., Matsumura T., Wakita T. et al.
Production of Infectious Hepatitis C Virus of Various Genotypes in Cell Culture.
Journal of Virology , 81 (9) , 4405-4411  (2007)
原著論文4
Morikawa K., Zhao Z., Wakita T. et al.
The Roles of CD81 and glycosaminoglycans in the adsorption and uptake of infectious HCV particles
Journal of Medical Virology , 79 (6) , 714-723  (2007)
原著論文5
Date T., Miyamoto M., Wakita T. et al.
An infectious and selectable full-length replicon system with hepatitis C virus JFH-1 strain
Hepatology Research , 37 (6) , 433-443  (2007)
原著論文6
Shirakura M., Murakami K., Wakita T. et al.
The E6AP ubiquitin ligase mediates ubiquitylation and degradation of hepatitis C virus core protein
Journal of Virology , 81 (3) , 1174-1185  (2007)
原著論文7
Ishii K., Iijima S., Kimura N. et al.
GBV-B as a pleiotropic virus: Distribution of GBV-B in extrahepatic tissues in vivo
Microbes and Infection , 9 (4) , 515-521  (2007)
原著論文8
Miyanari Y., Atsuzawa K., Wakita T. et al.
The lipid droplet is an important organelle for hepatitis C virus production
Nature Cell Biology , 9 (9) , 1089-1097  (2007)
原著論文9
Kato T., Date T., Wakita T. et al.
Cell culture and infection system for hepatitis C virus
Nature Protocols , 1 (5) , 2334-2339  (2006)
原著論文10
Kato T., Date T., Wakita T. et al.
A novel virus culture system for hepatitis C virus
Future Virology , 1 , 519-525  (2006)
原著論文11
Miyamoto M., Kato T., Wakita T. et al.
Characterization of Genotype 2a Hepatitis C Virus Subgenomic Replicon in Comparison with Genotype 1b Replicon
Intervirology , 49 (1) , 37-43  (2006)
原著論文12
Ishii K., Hasegawa H., Nagata N. et al.
Highly attenuated vaccinia virus DIs as a potential SARS vaccine
Advances in Experimental and Medical Biology , 581 , 593-596  (2006)
原著論文13
Murakami K., Ishii K., Ishihara Y. et al.
Production of infectious hepatitis C virus particles in three-dimensional cultures of the cell line carrying the genome-length dicistronic viral RNA of genotype 1b
Virology , 351 (2) , 381-392  (2006)
原著論文14
Ishii K., Hasegawa H., Nagata N. et al.
Induction of Protective Immunity against Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus (SARS-CoV) Infection using Highly Attenuated Recombinant Vaccinia Virus DIs
Virology , 351 (2) , 368-380  (2006)
原著論文15
Yi M., Villanueva RA., Wakita T. et al.
Production of infectious genotype 1a hepatitis C virus (Hutchinson strain) in cultured human hepatoma cells
Procedure of the Natulal Academy of Science U S A. , 103 (7) , 2310-2315  (2006)
原著論文16
Kato T., Date T., Wakita T. et al.
Nonhepatic cell lines HeLa and 293 support efficient replication of the hepatitis C virus genotype 2a subgenomic replicon
Journal of Virology , 79 (1) , 592-596  (2005)
原著論文17
Zhong J., Gastaminza P., Wakita T. et al.
Robust Hepatitis C Virus Infection in Vitro
Procedure of the Natulal Academy of Science U S A. , 102 (26) , 9294-9299  (2005)
原著論文18
Zhao Z., Date T., Wakita T. et al.
Characterisation of the E-138 (Glu/Lys) mutation in Japanese encephalitis virus using a stable full-length infectious cDNA clone
Journal of General Virology , 86 (8) , 2209-2220  (2005)
原著論文19
Kato T., Date T., Wakita T. et al.
Detection of Anti-Hepatitis C Virus Effects of Interferon and Ribavirin by a Sensitive Replicon System
Journal of Clinical Microbiology , 43 (11) , 5679-5684  (2005)
原著論文20
Wakita T., Pietschmann T., Kato T. et al.
Production of Infectious Hepatitis C Virus in Tissue Culture from a Cloned Viral Genome
Nature Medicine , 11 (7) , 791-796  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-