C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究

文献情報

文献番号
200728003A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究
課題番号
H17-肝炎-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 白木 和夫(鳥取大学医学部)
  • 藤澤 知雄(済生会横浜市東部病院こどもセンター)
  • 工藤 豊一郎(筑波大学臨床医学系)
  • 木村 昭彦(久留米大学医学部)
  • 田尻 仁(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 稲葉 憲之(獨協医科大学)
  • 溝上 雅史(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 長田 郁夫(鳥取大学医学部)
  • 石井 勉(国立病院機構福島病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
13,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血血液にC型肝炎ウイルス(HCV)検査が導入された現在、輸血を原因とする感染は激減し主なHCVの感染経路は垂直母児感染である。しかし母体ウイルス量以外の感染危険因子は不明で有効な予防方策はなく、感染児に対する管理および治療も確立していない。また母子感染防止処置の確立したB型肝炎ウイルス(HBV)のワクチン実施率の低下が近年問題となり、有効かつ安全な生後早期からの接種法の検討が早急に必要である。
研究方法
1)HCV母子感染の前方視的な実態調査および母子感染危険因子の検討を行う。
2)HCV感染児の前方視的観察により、臨床経過および長期予後を解明する。
3)持続感染児に対するPEG-IFN療法の適応、時期、効果および副反応を検討する。
4)「C型肝炎ウイルス(HCV)キャリア妊婦とその出生児の管理指導指針」の周知と持続した検証を行う。
5)HBV母子感染の前方視的な実態調査を行うとともに、HBワクチン早期接種法の有効性と安全性を多施設共同研究で評価する。
結果と考察
1)妊婦HCV抗体陽性率は0.4%、HCV-RNA陽性率は0.3%、母子感染率は10.2%で全例がウイルス陽性妊婦からの出生例であった。感染危険因子に関する検討では、妊婦高ウイルス例に限った場合、経腟分娩では帝王切開に比較して有意に感染率が高かった。
2)持続感染を起こしたHCV感染児の経過において、今までの報告と異なりHCV-RNAが陰性化する症例がなく全例持続感染状態であるという報告が1施設よりあった。
3)PEG-IFN による治療は21例に対して施行し治療完了症例において著効例が多くみられている。副作用としては発熱、倦怠感等軽微なものであり副作用による治療脱落例は1例のみであった。
4)HBワクチン早期接種の臨床試験に、51例の登録症例があり、46例でワクチンの接種を終了した。
結論
HCV感染妊婦率および母児感染率は従前の報告と同等であった。母子感染予防の観点から高ウイルス妊婦に限った場合ではあるが感染予防策となる可能性が示唆された。感染児に関して1施設からであるが脱感染状態となる児がみられない報告があり、地域特異性等の因子の検索が必要であると考えられた。小児に対するPEG-IFNの十分な効果と軽微な副作用が示され、今後は効果的な投与法の検討を行う。HBワクチン早期接種試験に有効症例数が蓄積しつつあり、良好な抗体価の上昇が得られている。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200728003B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究
課題番号
H17-肝炎-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 白木和夫(鳥取大学)
  • 工藤 豊一郎(筑波大学臨床医学系)
  • 稲葉 憲之(獨協医科大学病院)
  • 藤澤 知雄(済生会横浜東部病院こどもセンター)
  • 溝上 雅史(名古屋市立大学大学院)
  • 田尻 仁(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 長田 郁夫(鳥取大学医学部)
  • 木村 昭彦(久留米大学医学部)
  • 石井 勉(国立病院機構福島病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)の重要な感染経路は垂直母児感染である。しかし母体高ウイルス量以外の危険因子は不明で、有効な予防方策はない。またB型肝炎ウイルス(HBV)のワクチン実施率が低下しており、有効かつ安全な接種法の検討が早急に必要である。
研究方法
1)HCV母子感染の疫学調査・感染危険因子の検討。
2)HCV感染児の臨床経過および長期予後の解明。
3)HCV持続感染児へのPEG-IFN療法の検討。
4)「C型肝炎ウイルス(HCV)キャリア妊婦とその出生児の管理指導指針」の周知と検証。
5)HBV母子感染の実態調査、およびHBワクチン早期接種法の有効性と安全性の評価。
結果と考察
1)妊婦HCV抗体陽性率は0.57%(753/132097例)、母子感染率は10.4%(34/335例)であった。また小児HCV感染症アンケート調査では母児感染は68%を占め、この比率は近年上昇している。
2)感染危険因子の検討結果、高ウイルス量妊婦群では母子感染率は帝王切開分娩では経膣分娩よりも有意に低下していた。
3)HCV 感染児のうち3歳までに血中ウイルスが消失した例は23%(17/73例)であった。
4)HCV感染児36例に対してPEG-IFN 治療を行ったところ、治療完了例ではウイルス学的著効例が多かった。副作用は軽微で多くは発熱や倦怠感であった。
5)妊婦HBs抗原陽性率は0.5%、母子感染率は2.2%であった。また、小児HBV感染症アンケート調査により家族内水平感染の重要性が明らかとなった。HB ワクチン早期接種試験に51 症例が登録され、良好なHBs抗体価の上昇が得られている。
6)HBV感染児の診療上の指診となる小児B 型肝炎の診療ガイドラインを作成した。
結論
本研究により本邦におけるHCV陽性妊婦率、母児感染率が確定され、小児HCV感染症における母児感染経路の重要性が判明した。また感染予防策として帝王切開分娩の有用性が示唆され、今後は症例を蓄積し検討する。HCV感染児の長期経過もほぼ明らかになり、今後は成人への持ち越し症例の検討を行うとともにPEG-IFNのより効果的な投与法を検討していく。一方、HBワクチン早期接種の効果をふまえて、変化しつつある本邦のHBV 感染症の現状に鑑みワクチンのuniversal 化をも視野に入れた検討も必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200728003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦のC型肝炎ウイルスの母児感染疫学調査を行い、妊婦HCV抗体陽性率は0.57%、母子感染率は10.4%、HCV 感染児が3歳までに脱キャリアした例は23%と確定した。また全国小児HCV感染症アンケート調査を実施し母児感染が高率(68%)で、かつ近年その比率の上昇を明らかにした。またB型肝炎ウイルスの母児感染に関する調査を行い、妊婦HBs抗原陽性率0.5%、母子感染率2.2%と確定した。さらに全国小児HBV感染症アンケート調査から、家族内水平感染の重要性が明らかとなった。
臨床的観点からの成果
感染危険因子の検討結果、高ウイルス量妊婦群では母子感染率は帝王切開分娩では経膣分娩よりも有意に低下したことを明らかにし、これまで感染予防方策のなかったHCV母児感染に対する予防的介入の可能性を見出した。またHCV感染児に対するPEG-IFN 治療例を集積し、治療完了例で高率にウイルス学的著効に至り、副作用は軽微であることを明らかにし小児期ウイルス治療戦略の確立に貢献した。さらにHB ワクチン早期接種試験による良好なHBs抗体価の上昇が乳児期までの検討で得られ臨床実用導入可能なことを明らかにした。
ガイドライン等の開発
HCVキャリア感染妊婦および出生児の管理指導指針の国外への発信を目的にPediatrics International誌に「Guidelines for care of pregnant women carrying hepatitis C virus and their infants.」を掲載した。また、一方小児科診療実地にてB型肝炎罹患児に遭遇する機会は近年減少してきているため、小児HBV感染症の診療にあたる際の指針として2007年に「小児B型肝炎の診断指針」を作成した。
その他行政的観点からの成果
B型肝炎ウィルスは母子間だけでなく、父子間などでも感染しうることを明らかにし、HBVワクチン投与の対象をこれまでの母親がB型肝炎ウィルスキャリアに限定せず、家族内に感染者がいる場合にも対象とすべきであることを提言した。加えて、ユニバーサルワクチン接種の必要性についても論議すべきであることを提唱した。
その他のインパクト
B型肝炎父子間でも感染、ウィルス解析判明全体の1割指摘も(毎日新聞2007年8月19日)

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
指導管理指針

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiraki K, Ohto H, Inaba N et al.
Guidelines for care of pregnant women carrying hepatitis C virus and their infants.
Pediatrics International , 50 , 138-140  (2008)
原著論文2
田尻 仁、白木和夫、藤澤知雄 他
小児B型肝炎の診断指針
日本小児科学会雑誌 , 111 (7) , 949-958  (2007)
原著論文3
Ishii T. Ohto H.
Evolution in the hypervariable region of the hepatitis C virus in two infants infected by mother-to-infant transmission.
Pediatrics International , 47 , 278-285  (2005)
原著論文4
白木和夫,大戸 斉,稲葉憲之,藤澤和雄 他
C型肝炎ウイルスキャリア妊婦とその出生児の管理ならびに指導指針
日本小児科学会雑誌 , 109 (1) , 78-79  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-