C型肝炎の治療とキャリアからの発症予防に関する基礎研究

文献情報

文献番号
200728002A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎の治療とキャリアからの発症予防に関する基礎研究
課題番号
H17-肝炎-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(千葉工業大学附属総合研究センター)
  • 小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
  • 小原 道法(東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学大学院医学研究科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所生物活性物質部)
  • 明里 宏文(医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所細胞化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
150,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVキャリアからの発症予防対策及び既存の治療法とは異なる作用機序を持つ治療薬を開発するため、HCVの生活環及び病原性発現の分子基盤を明らかにし、創薬シーズを探索するとともに、新たな実験モデルを開発する。
研究方法
培養細胞を使った解析には、HCVレプリコン細胞、感染性粒子産生細胞などを用いた。動物実験モデルには、ヒト肝細胞キメラマウス、タマリン、マーモセットを用いた。
結果と考察
1) NS4A結合因子CKB、NS5A結合因子FKBP8を同定した。前者はHCV複製複合体におけるATP供給に働き、後者はHsp90を複製複合体へリクルートすることによりそれぞれゲノム複製を調節する。2) HCV粒子表面の脂質成分が粒子構造保持、感染性に重要であること、細胞内油滴とHCV蛋白との会合が感染性粒子形成に重要であることを示した。3) PPARalphaがコア蛋白による肝発癌に関与することを明らかにした。4) HCV感染に伴うグルコーストランスポーターGLUT1/2の発現低下を見出した。5) 傷害破壊された感染細胞由来のウイルス因子が樹状細胞に取り込まれ、TLR3依存的にNKが誘導され、T細胞が活性化されるモデルを提唱した。6) 生細胞のままHCV複製を定量するシステムの有用性を示し、新たに急性肝炎患者血清からクローン化したHCVゲノムの複製系を作製した。7) コレステロール生合成阻害剤、フラーレン骨格化合物(NS5Bプリメラーゼ阻害剤)によるHCV産生阻害作用を示した。8) HCV感染増殖細胞系を用いて、植物代謝物、微生物代謝物、天然物誘導体、合成化合物などのライブラリーをランダムスクリーニングし抗HCV活性物質を10数種類見出した。9) GBV-B感染マーモセットを用いて慢性C型肝炎のサロゲート病態霊長類モデルを確立した。
結論
HCVゲノム複製調節因子を新たに同定しその作用機序を明らかにした。粒子形成の場としての油滴の重要性、粒子表面脂質成分の役割を示した。ウイルス-宿主因子相互作用また脂質代謝系を阻害する方策がC型肝炎治療薬の開発につながる可能性が期待される。創薬シーズとしてコレステロール/スフィンゴ脂質生合成阻害剤、NS5A阻害剤などが見出された。培養細胞また新世界ザルの用いた新規実験モデルが開発された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200728002B
報告書区分
総合
研究課題名
C型肝炎の治療とキャリアからの発症予防に関する基礎研究
課題番号
H17-肝炎-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 哲朗(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 下遠野 邦忠(京都大学ウイルス研究所/千葉工業大学附属総合研究センター)
  • 小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
  • 小原 道法(東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
  • 堀田 博(神戸大学大学院医学系研究科)
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 瀬谷 司(北海道大学大学院医学研究科)
  • 深澤 秀輔(国立感染症研究所生物活性物質部)
  • 明里 宏文(医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
  • 西島 正弘(国立感染症研究所細胞化学部)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所細胞化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HCVキャリアからの発症予防対策及び既存の治療法とは異なる作用機序を持つ治療薬を開発するため、HCVの生活環及び病原性発現の分子基盤を明らかにし、創薬シーズを探索するとともに、新たな実験モデルを開発する。
研究方法
培養細胞を使った解析には、HCVレプリコン細胞、感染性粒子産生細胞などを用いた。動物実験モデルには、ヒト肝細胞キメラマウス、タマリン、マーモセットを用いた。
結果と考察
1)HCV粒子表面の脂質成分が粒子構造保持、感染性に重要であること、細胞内油滴とHCV蛋白との会合が感染性粒子形成に重要であることを示した。2)HCV構造蛋白間、コア蛋白-RNAの結合様式を同定し、粒子アセンブリーモデルを提唱した。3)NS5A、NS4A、NS5B蛋白とそれぞれ結合する宿主因子FKBP8、CKB、CCT5を同定し、それらを介したHCV RNA複製調節機序を明らかにした。4)ゲノム複製効率を規定するRNAシスエレメント、適応変異を同定した。5)コア蛋白による肝脂肪化、癌化にPA28_、PPAR_、SOCS1が重要な役割を果たすことを見出した。6)Core-DDX3, Core-vimentin相互作用がHCV産生を変動させること、NS3-p53、NS5A-Sykの各相互作用がp53、Sykの機能を抑制することを明らかにした。7)傷害破壊された感染細胞由来のウイルス因子が樹状細胞に取り込まれ、TLR3依存的にNKが誘導され、T細胞が活性化されるモデルを提唱した。8)ゲノム複製の簡便な定量化アッセイ系及び複製細胞の可視化モデルを開発し無血清培地による複製細胞の長期培養法を確立した。9)HCVゲノム複製阻害化合物として、シクロスポリン誘導体、スタチン剤、コレステロール生合成阻害剤、スフィンゴ脂質生合成阻害剤、ミゾリビン、フラーレン骨格化合物などを、HCV粒子形成阻害化合物としてグルコシダーゼ阻害剤、スフィンゴ脂質生合成阻害剤を見出した。10)タマリン、マーモセットを用いて急性、慢性肝炎発症のサロゲート動物モデルを樹立した。11)ヒト肝臓キメラマウスの改良を目指して肝細胞死誘導マウスを樹立した。
結論
HCV生活環の分子機構について多くの新たな知見を得、作用機序の多様な創薬シーズを見出した。培養細胞また新世界ザルの用いた新規実験モデルを開発した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200728002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HCV生活環の分子機構について多くの新たな知見を得た。粒子形成過程の分子モデルを提唱し、また新規ゲノム複製調節因子を同定した。肝の癌化、脂肪化に繋がるHCV蛋白-宿主因子相互作用を見出した。ゲノム複製阻害、粒子形成阻害など作用機序の多様な創薬シーズを見出し、培養細胞系のみならず感染マウスでも抗HCV効果を見出した。阻害剤の評価法として有用な培養細胞実験系及び新世界ザルの用いた急性、慢性肝炎モデル動物を作製した。
臨床的観点からの成果
HCV粒子表面の脂質成分が粒子構造保持、感染性に重要であること、細胞内油滴とHCV蛋白との会合が感染性粒子形成に重要であること、コレステロール生合成阻害剤、コレステロール除去剤、スフィンゴ脂質生合成阻害剤によってHCV産生が抑制されること、を見出した。脂質代謝系の制御がC型肝炎の治療法になりうる可能性が示された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
研究成果の一部が、19年度「厚生労働科学研究のあらまし」に紹介された。
その他のインパクト
実験モデル開発、抗ウイルス薬探索に関する研究成果を基に、数社の製薬会社との間で創薬化を目指した共同研究が開始された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
172件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
300件
学会発表(国際学会等)
50件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計11件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Aizaki H, Matsuura Y Suzuki T, et al.
Critical role of virion-associated cholesterol and sphingolipid in hepatitis C virus infection
J. Virol.  (2008)
原著論文2
Okamoto T, Suzuki T, Matsuura Y, et al.
A single amino acid mmutation in hepatitis C virus NS5A disrupting FKBP8 interaction impairs viral replication
J. Virol. , 82 , 3480-3489  (2008)
原著論文3
Moriishi K, Koike K, Matsuura Y, et al.
Critical role of PA28gamma in hepatitis C virus-associated steatogenesis and hepatocarcinogenesis
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. , 104 , 1661-1666  (2007)
原著論文4
Miyanari Y, Atsuzawa K, Shimotohno K, et al.
The lipid droplet is an important organelle for hepatitis C virus production
Nat Cell Biol , 9 , 1089-1097  (2007)
原著論文5
Ebihara T, Seya, T, et al.
Hepatitis C virus (HCV)-infected apoptotic cells extrinsically modulate dendritic cell function to activate T cells and NK cells.
Hepatology  (2008)
原著論文6
Inoue K, Kohara M, et al.
Non-immunosuppressive cyclosporin DEBIO-025 with interferon shows synergistic anti-HCV effect in chimeric mouse
hepatology , 45 , 921-928  (2007)
原著論文7
Ariumi Y, Kato N, et al.
DDX3 DEAD box RNA helicase is required for hepatitis C virus (HCV) RNA replication.
J. Virol. , 81 , 13922-13926  (2007)
原著論文8
Dansako H, Kato N, et al.
Limited suppression of the interferon-beta production by hepatitis C virus serine protease in cultured human hepatocytes.
FEBS J. , 274 , 4161-4176  (2007)
原著論文9
Tanaka N, Koike K, et al.
PPAR-α is essential for severe hepatic steatosis and hepatocellular carcinoma induced by HCV core protein
J Clin Invest , 118 , 683-694  (2007)
原著論文10
Ishii K, Suzuki T, Akari H, et al.
GBV-B as a pleiotropic virus: Distribution of GBV-B in extrahepatic tissues in vivo
Microbes and Infection , 9 , 515-521  (2007)
原著論文11
Nakai K, Suzuki T, Matsuura Y
Oligomerization of hepatitis C virus core protein is crucial for interaction with cytoplasmic domain of E1 envelope protein.
J. Virol , 80 , 11265-11273  (2006)
原著論文12
Okamoto T, Suzuki T, Matsuura Y.et al.
Hepatitis C virus RNA replication is regulated by FKBP8 and Hsp90
EMBO J. , 25 , 5015-5025  (2006)
原著論文13
Sato S, Fukasawa M, Nishijima M, et al.
Proteomic Profiling of Lipid Droplet Proteins in Hepatoma Cell Lines Expressing Hepatitis C Virus Core Protein
J. Biochem. , 139 , 921-930  (2006)
原著論文14
Ishii N, Shimotohno K, et al.
Diverse effects of cyclosporine on hepatitis C virus strain replication
J. Virol. , 80 , 4510-4520  (2006)
原著論文15
Deng L, Kato N, Hotta H, et al.
NS3 protein of Hepatitis C virus associates with the tumour suppressor p53 and inhibits its function in an NS3 sequence-dependent manner.
J. Gen. Virol. , 87 , 1703-1713  (2006)
原著論文16
Miyoshi H, Suzuki T, Koike K, et al.
Hepatitis C virus core protein exerts an inhibitory effect on suppressor of cytokine signaling (SOCS)-1 gene expression
J. Hepatol , 43 , 757-763  (2005)
原著論文17
Akazawa T, Seya T, et al.
Antitumor NK activation induced by the Toll-like receptor3-TICAM-1 (TRIF) pathway in myeloid dendritic cells
Proc. Natl. Acad. Sci. USA , 104 , 252-257  (2007)
原著論文18
Masumi A, Fukazawa H,et al.
Nucleolin is involved in interferon regulatory factor-2-dependent transcriptional activation
Oncogene , 25 , 7391-7400  (2006)
原著論文19
Sakamoto H, Kohara M, et al
Host sphingolipid biosynthesis as a target for hepatitis C virus therapy
Nat. Chem Biol. , 1 , 333-337  (2005)
原著論文20
Suzuki R, Matsuura Y, Suzuki T. et al.
Molecular determinants for subcellular localization of hepatitis C virus core protein.
J. Virol. , 79 , 1271-1281  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-