HIV-1感染のヒトーラット種間バリアーの解明

文献情報

文献番号
200727040A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1感染のヒトーラット種間バリアーの解明
課題番号
H19-エイズ-若手-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
張 険峰(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズの根本的な予防と治療法を開発するために,HIV感染小動物モデルはきわめて有用である。ヒトCD4/CCR5等の受容体を発現させるラットT細胞株に、HIV-1 Rev のコファクターであるヒト CRM1と、TatのコファクターであるCyclinT1を発現させると、ヒトT細胞株の約1/3のHIV粒子が生産された。しかし、できた粒子の感染性が低く、侵入過程の効率も低いことが分かった。そこで、本研究の目的はウイルス粒子の感染性と侵入過程に関与しているウイルス性、細胞性因子を同定し、ラット感染モデルの作製に資することである。
研究方法
①HIVウイルス粒子を大量収集するため、 効率的な複製を支持するラット細胞の構築を行った.
②HIVの感染価を測定するために, indicator細胞(TZM-bl)に感染させ、感染に応じて生産されるルシフェラゼ又はb-ガラクトシダーゼ活性を測定した。また、Western blottingによってGagとGタンパク質を検出した。
 ③侵入過程で働くラット因子をクローニングするために、Functional cloning 法(Nature: 427 848 2004)を行いました。

結果と考察
) HIV粒子の大量生産系の構築
レトロベクターを用いてヒトCyclinT1とCRM1を発現するラット上皮細胞株とT細胞株の構築に成功した。
2)EnvのHIV粒子の感染性ヘの関与
HIV-1 Env蛋白をVSV-Gと入れ替えることより、ウイルス粒子の感染性を完全に回復させられることが分かった。この結果からラットT細胞由来のHIV-1粒子のEnvの機能が低い、もしくは取り込まれたEnvの蛋白量が少いことが考えられる。
3) HIVの侵入過程で働く阻害因子の同定
   レトロベクターを用いてラットcDNAを導入したHIV-1抵抗性のヒト細胞21クローンを得た。そのなかからactin related protein 2/3 complex subunit 1A と ribosomal protein S23、Ubiquitin-A-52 residue ribosomal protein fusion product の遺伝子を同定した。しかし、見出した遺伝子をさらに分析したところ、HIV-1 感染耐性とは無関係であることが分かった。

結論
ウイルス粒子を詳細に検討するために、HIV-1の効率的な複製を支持するラット細胞株の確立に成功した。ラットT細胞由来ウイルス粒子の感染性低下の原因としてEnvを見い出した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-