抗ウイルス作用をもつ宿主防御因子APOBEC3GとHIV-1 Vifとの結合領域および特性の解明と、その阻害化合物の検索

文献情報

文献番号
200727038A
報告書区分
総括
研究課題名
抗ウイルス作用をもつ宿主防御因子APOBEC3GとHIV-1 Vifとの結合領域および特性の解明と、その阻害化合物の検索
課題番号
H19-エイズ-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武田 哲(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今日のHIV-1感染症の標準的な治療方法として多剤併用療法が定着し、疾病予後の改善に大きな成果が挙がってきているが、副作用や薬剤耐性ウイルスの出現の問題を克服するためには、一つでも多く選択可能な治療薬剤を開発することが求められている。そこで、私は宿主の抗ウイルス因子であるAPOBEC3G (A3G)とHIV-1 Vifタンパクの相互作用に焦点を当て、構造生物学及び生化学的解析により両者の結合特性を解明し、抗HIV-1薬剤を開発に結びつくような基礎研究を行うことを目的とする。
研究方法
A3Gと核酸あるいはVifへの結合実験には、Electrophoresis Mobility Shift Assay (EMSA)を、核酸結合特性の解析にはFluorescence Polarization Binding Assay (FPBA)とSingle-Molecule DNA Stretching Assay (SMDSA)を行った。
結果と考察
A3Gと核酸の結合に影響を及ぼす因子としては塩濃度やZnキレート剤が、A3GとVifとの結合に影響を及ぼす因子としてはZnキレート剤が確認された。Mg濃度やpHはそのどちらにも影響しなかった。これらの一連の結果よりライブラリスクリーニング用のin vitro結合実験用ELISA系に必要な至適条件が分かった。また、A3Gが一本鎖核酸に結合した場合、HIV-1の逆転写酵素の伸長反応を阻害する現象を見いだした。この減少はA3GのDeaminase活性とは関係なく見られたこと、A3Gと逆転写酵素の結合が認められなかったことから、A3Gは物理的に逆転写酵素のスライディングを阻害すると考察された。この現象がA3Gの抗ウイルス作用のDeaminase非依存的な分子メカニズムであることが分かった。
結論
現存の抗HIV-1薬剤とは全く異なり、生体防御機構を活用した新たな機序による抗HIV-1薬剤を開発するため、宿主の抗ウイルス因子であるA3GとVifタンパクの相互作用に焦点を当て、構造生物学及び生化学的解析により両者の結合特性を解明し、新規抗HIV-1薬剤開発への新たな道を模索している。今回、A3GとVifあるいは核酸への結合特性を生化学的に進め、ケミカルスクリーニングに必要な至適条件を見い出した。さらに、結合特性の解析の中で、A3Gの抗ウイルス作用の分子メカニズムにつながる重要な現象も見いだした。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-