文献情報
文献番号
199700366A
報告書区分
総括
研究課題名
農村における成人病一次予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高科 成良(広島県厚生農業協同組合連合会廣島総合病院)
研究分担者(所属機関)
- 林雅人(秋田県厚生連平鹿総合病院)
- 川田健一(茨城県厚生連土浦協同病院農村健康管理センター)
- 武山直治(岐阜県厚生連農村検診センター)
- 山根洋右(島根医科大学環境保健医学教室)
- 畝博(福岡大学医学部衛生学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康増進研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
4,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人病といわれる慢性疾患の発症には食習慣、運動、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が強く関与しており、国民の健康維持のためその発症予防が強調されており、一次予防を効率よく実施する必要がある。検診受診者で「著変なし」と判定された場合でも、数年後に何らかの身体異常を発症するものがかなりみられるので、検診において「著変なし」と判定されたもののなかより将来成人病を発症するRiskの高いものを選択し、生活習慣を是正する教育・指導を実施することにより成人病一次予防の効果を向上さすことが出来るのではないかと考え、そのRisk指標を検討するため経年的に検診を受診し、数年前に「著なし」と判定されたものを対象としてRetrospective cohort研究を実施した。
研究方法
研究対象は観察開始時点で研究対象選定基準を満足し、かつ3~5年後の観察終了時点においても再び検診を受診した農村地域居住者6771例であり、検診受診者36974例より選定された。
観察開始時点において選定された研究対象を性別、年令別(若年;20~39歳、中年;40~59歳、高年;60~69歳)、血圧別(血圧?群;収縮期血圧130mmHg未満で拡張期血圧85mmHg未満、血圧群?;収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上)、BMI別(BMI?群;18.1~23.9、BMI?群;24.0~25.9),コレステロール別(コレステロール?群; 120~199mg/dl,コレステロール?群;200~220mg/dl)、職業別(農業群、兼業群、非農業群)、仕事の程度別(多忙群、非多忙群)、間食摂取状態別(摂取群、非摂取群)、喫煙状態別(喫煙群、非喫煙群)飲酒状態別(飲酒群、非飲酒群)に分類して経年観察終了時点における身体状況との関連を人年法を用いて検討し、成人病一次予防のRisk指標を考察した。 なお有意差検定にはポアソン分布による検定を用いた。
観察開始時点において選定された研究対象を性別、年令別(若年;20~39歳、中年;40~59歳、高年;60~69歳)、血圧別(血圧?群;収縮期血圧130mmHg未満で拡張期血圧85mmHg未満、血圧群?;収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上)、BMI別(BMI?群;18.1~23.9、BMI?群;24.0~25.9),コレステロール別(コレステロール?群; 120~199mg/dl,コレステロール?群;200~220mg/dl)、職業別(農業群、兼業群、非農業群)、仕事の程度別(多忙群、非多忙群)、間食摂取状態別(摂取群、非摂取群)、喫煙状態別(喫煙群、非喫煙群)飲酒状態別(飲酒群、非飲酒群)に分類して経年観察終了時点における身体状況との関連を人年法を用いて検討し、成人病一次予防のRisk指標を考察した。 なお有意差検定にはポアソン分布による検定を用いた。
結果と考察
観察終了時点における身体状況が「変化なし」は観察期間中に身体異常を発症しなかったものであり、良い健康度が維持できたものと考えられる。 また「変化あり」は何らかの身体異常が発症したものであり、健康度が低下したものである。
観察終了時点における身体状況判定で「変化あり」は男性24.4%、女性28.9%であり、健康度は男女とも加齢により低下していた 。
観察開始時点における血圧を血圧?群と?群に分類すると、観察終了時点における健康度は血圧?群より?群の方が明らかに不良であり、高血圧発症率も血圧?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 8.8、女性 5.5)。
観察開始時点におけるBMIをBMI?群とBMI?群に分類すると、観察終了時点における健康度はBMI?群より?群の方が明らかに不良であり、肥満発症率もBMI?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 17.7、女性 20.7)。 また脳血管障害、高血圧、耐糖能障害、高コレステロール血症発症率も同様の傾向を示した。
観察開始時点におけるコレステロールをコレステロール?群と?群に分類すると、観察終了時点における健康度はコレステロール?群より?群の方が明らかに不良であり、高コレステロール血症発症率もコレステロール?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 3.6、女性 2,6)。
BMIとコレステロールを同一条件にしたときの血圧?群と?群の比較、血圧とコレステロールを同一条件にしたときのBMI?群と?群の比較、血圧とBMIを同一条件にしたときのコレステロール?群と?群を比較すると、収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上と高血圧発症、BMI24.0以上と肥満発症、コレステロール200mg/dl以上と高コレステロール血症発症が強い関連をもつという結果をえた。
観察開始時点において最もRiskが少ないと考えられる血圧?・BMI?・コレステロール?群と最もRiskが高いと考えられる血圧?・BMI?・コレステロール?群を比較すると、観察終了時点における健康度不良、そのなかでも高血圧、肥満、高コレステロール血症発症率は血圧?・BMI?・コレステロール?群の方が明らかに高率であった。 相対危険度は高血圧発症(男性 3.9、女性 10.6)、肥満発症(男性 18.5、女性 12.7)、高コレステロール血症発症(男性 4.1、女性 4.4)であった。
観察開始時点における職業を農業群、兼業群、非農業群に分類すると、観察終了時点における健康度は高齢農業者で不良傾向がみられた。
観察開始時点における仕事の程度を多忙群と非多忙群に分類すると、観察終了時点における健康度は多忙群の方が不良であり、高血圧、肥満、耐糖能障害、高コレステロール血症発症率は非多忙群の方が高率であった。 仕事の程度である程度運動量を表現できないかと考えたが、仕事の内容が一様でないため漠然とした結果となった。
観察開始時点における間食摂取状態を摂取群と非摂取群に分類すると、観察終了時点における健康度は摂取群の方が不良であり、肥満、高コレステロール血症発症率も摂取群の方が高率であった。
観察開始時点における喫煙状態を喫煙群と非喫煙群に分類すると、観察終了時点における健康度には大きな差をみなかったが、高コレステロール血症発症率は非喫煙群の方が高率であり(相対危険度;男性 1.4、女性 4.6)、間食等の影響が考えられた。
観察開始時点における飲酒状態を非飲酒群と飲酒群に分類し、観察終了時点における健康度についてみると男性では飲酒群、女性では非飲酒群の方が不良であり、虚血性心疾患発症率は男性では非飲酒群、女性では飲酒群の方が高率であった(相対危険度;男性 7.3、女性 6.9)。
観察開始時点における生活習慣要素のうち間食摂取・喫煙・飲酒群は生活習慣不良群、間食非摂取・非喫煙・非飲酒群は生活習慣良好群と考えられるので、この両群を比較すると健康度は不良群より良好群の方がよく、高血圧、肥満、高コレステロール血症発症率は不良群の方が高率であった。
以上の成績より検診において問題ないとされたなかでも、Risk指標を収縮期血圧130mmHg,拡張期血圧85mmHg,BMI24.0、コレステロール200mg/dlとすると、このRisk指標未満のものよりRisk指標以上のものから数年後健康不良となるものが多く、高血圧、肥満、高コレステロール血症等の発症率は高率であり、また生活習慣要素の影響もかなり強いという結果をえたので、成人病予防効果を向上さすためには検診における検査成績がこのRisk指標以上のものを選択して強力に生活習慣の是正を教育・指導することが必要であると考えた。
観察終了時点における身体状況判定で「変化あり」は男性24.4%、女性28.9%であり、健康度は男女とも加齢により低下していた 。
観察開始時点における血圧を血圧?群と?群に分類すると、観察終了時点における健康度は血圧?群より?群の方が明らかに不良であり、高血圧発症率も血圧?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 8.8、女性 5.5)。
観察開始時点におけるBMIをBMI?群とBMI?群に分類すると、観察終了時点における健康度はBMI?群より?群の方が明らかに不良であり、肥満発症率もBMI?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 17.7、女性 20.7)。 また脳血管障害、高血圧、耐糖能障害、高コレステロール血症発症率も同様の傾向を示した。
観察開始時点におけるコレステロールをコレステロール?群と?群に分類すると、観察終了時点における健康度はコレステロール?群より?群の方が明らかに不良であり、高コレステロール血症発症率もコレステロール?群より?群の方が高率であった(相対危険度;男性 3.6、女性 2,6)。
BMIとコレステロールを同一条件にしたときの血圧?群と?群の比較、血圧とコレステロールを同一条件にしたときのBMI?群と?群の比較、血圧とBMIを同一条件にしたときのコレステロール?群と?群を比較すると、収縮期血圧130mmHg以上あるいは拡張期血圧85mmHg以上と高血圧発症、BMI24.0以上と肥満発症、コレステロール200mg/dl以上と高コレステロール血症発症が強い関連をもつという結果をえた。
観察開始時点において最もRiskが少ないと考えられる血圧?・BMI?・コレステロール?群と最もRiskが高いと考えられる血圧?・BMI?・コレステロール?群を比較すると、観察終了時点における健康度不良、そのなかでも高血圧、肥満、高コレステロール血症発症率は血圧?・BMI?・コレステロール?群の方が明らかに高率であった。 相対危険度は高血圧発症(男性 3.9、女性 10.6)、肥満発症(男性 18.5、女性 12.7)、高コレステロール血症発症(男性 4.1、女性 4.4)であった。
観察開始時点における職業を農業群、兼業群、非農業群に分類すると、観察終了時点における健康度は高齢農業者で不良傾向がみられた。
観察開始時点における仕事の程度を多忙群と非多忙群に分類すると、観察終了時点における健康度は多忙群の方が不良であり、高血圧、肥満、耐糖能障害、高コレステロール血症発症率は非多忙群の方が高率であった。 仕事の程度である程度運動量を表現できないかと考えたが、仕事の内容が一様でないため漠然とした結果となった。
観察開始時点における間食摂取状態を摂取群と非摂取群に分類すると、観察終了時点における健康度は摂取群の方が不良であり、肥満、高コレステロール血症発症率も摂取群の方が高率であった。
観察開始時点における喫煙状態を喫煙群と非喫煙群に分類すると、観察終了時点における健康度には大きな差をみなかったが、高コレステロール血症発症率は非喫煙群の方が高率であり(相対危険度;男性 1.4、女性 4.6)、間食等の影響が考えられた。
観察開始時点における飲酒状態を非飲酒群と飲酒群に分類し、観察終了時点における健康度についてみると男性では飲酒群、女性では非飲酒群の方が不良であり、虚血性心疾患発症率は男性では非飲酒群、女性では飲酒群の方が高率であった(相対危険度;男性 7.3、女性 6.9)。
観察開始時点における生活習慣要素のうち間食摂取・喫煙・飲酒群は生活習慣不良群、間食非摂取・非喫煙・非飲酒群は生活習慣良好群と考えられるので、この両群を比較すると健康度は不良群より良好群の方がよく、高血圧、肥満、高コレステロール血症発症率は不良群の方が高率であった。
以上の成績より検診において問題ないとされたなかでも、Risk指標を収縮期血圧130mmHg,拡張期血圧85mmHg,BMI24.0、コレステロール200mg/dlとすると、このRisk指標未満のものよりRisk指標以上のものから数年後健康不良となるものが多く、高血圧、肥満、高コレステロール血症等の発症率は高率であり、また生活習慣要素の影響もかなり強いという結果をえたので、成人病予防効果を向上さすためには検診における検査成績がこのRisk指標以上のものを選択して強力に生活習慣の是正を教育・指導することが必要であると考えた。
結論
一般検診受診者で「著変なし」と判定されたものの約25%は数年後に何らかの身体異常を発症する。 そこで成人病一次予防の効果を向上さすためには生活習慣の是正は当然であるが、その効率をあげるために、一般検診で「著変なし」とされた場合でも将来健康度が阻害される可能性のあるRiskの高いものに対して生活習慣改善を強力に教育・指導することが必要であり、そのRisk指標は加齢、収縮期血圧 130mmHg,拡張期血圧 85mmHg,BMI 24.0、コレステロール200mg/dlという結果をえた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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