個別施策層に対するHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200727033A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層に対するHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H19-エイズ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
仲尾 唯治(山梨学院大学 経営情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 沢田 貴志(港町診療所)
  • 樽井 正義(慶應義塾大学 文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,259,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在日外国籍居住者に対するHIV感染予防と医療支援の促進に関する効果的な介入方法の策定
研究方法
①在日外国籍HIV陽性者に対する医療環境の整備
a.研修会の開催 b.医療従事者調査 c.医療機関調査 d.成功事例カンファレンスの開催
②外国人支援・互助NGO会合の開催
③外国人コミュニティへの受検・受診・予防啓発の促進
a.NGOによる啓発活動の実施 b.PWAによる啓発活動の実施
④母国の医療情報の収集と提供
⑤外国人対応クリニックのモデルづくり
結果と考察
1.外国人対応を活発に行っている医療機関は、NGOとの連携、医療通訳利用、福祉制度活用、患者母国の医療事情把握、などと有意な関係があることが分かった。
2.アドヒアランスの改善やQOLの向上など、研修会で得たスキルを従事者が実際に用いることによる陽性者の療養支援上の改善例が把握できた。
3.NGOが介在することによる療養支援上の成功事例が把握できた。これらは、医療への早期アクセスが出来、日和見感染の対応が日本で出来ていれば、帰国支援により母国でのHAART療法へ繋ぐことが出来る可能性を物語っている。このことは、医療従事者だけではなく、HIV/AIDSに対するスティグマの軽減のためにも、外国人コミュニティに対しても伝えていく必要がある。これらを通したモデル化の可能性と必要性が確認された。
結論
 わが国におけるHIV/AIDSの累積患者・感染者数のほぼ1/4が外国籍となっている。これら外国籍HIV陽性者の特徴として①重症化してからの受診が多い②受診中断率が高い③死亡率が高い④特定エリア出身者である、という点をあげることができる。そして、このことは当事者の健康問題だけではなく、わが国の医療システムに対しても未払い医療費の増加など、診療体制への負荷の問題を惹起する。外国籍HIV陽性者も日本での早期の医療アクセスが実現していれば、これらの状況は避けられた可能性がある。
 世界的な医療へのユニバーサル・アクセスの流れの下、ブラジルやタイをはじめARV治療が開始されはじめた途上国が存在する。しかしながら、わが国に在住する外国人はそのような母国の状況の変化についての情報が届かず、結果として劣悪な医療環境の下での生活を余儀なくされている事例が数多く認められる。
 これらの状況に対応するための方策として、さらなる在日外国籍HIV陽性者の医療環境の整備と、外国人コミュニティへの受検・受診・予防啓発の促進が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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