自立困難なHIV陽性者のケア・医療に関する研究

文献情報

文献番号
200727032A
報告書区分
総括
研究課題名
自立困難なHIV陽性者のケア・医療に関する研究
課題番号
H19-エイズ-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 英明(独立行政法人国立病院機構東京病院 呼吸器科)
  • 小西 加保留(関西学院大学社会学部社会福祉学科)
  • 島田 恵(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 織田 幸子(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HIV療法の進歩によってHIV感染症の予後は改善したが、エイズ発病による後遺症で自立困難となる例や加齢で要介護状態になる人も漸増している。本研究では先行研究を踏まえ,拠点病院と社会福祉施設等での連携の実状を明らかにし、改善のための支援方法の開発や自立困難例のケア支援マニュアルを作成する。必要であれば行政への提言を行う。
研究方法
本年度は、自立困難症例を含む長期入院患者に関するアンケート調査、近畿ブロック拠点病院での状況につき診療録から長期入院事例を検討した。長期療養患者受け入れに関して研修の申し込みのあった施設等に対して研修を兼ねて連携会議を開催し意見交換を行った。
結果と考察
1)自立困難症例の調査 国立大阪医療センターの状況を診療録から調査した。累積受診患者(2011名)の中で長期(90日以上継続)入院患者が72名(重複を含む)であった。入院期間は平均153日であった。診断名はPML16例、PCP15例などであった。首都圏と近畿のアンケート調査では調査時点におけるHIV/AIDS入院患者数は80名中で長期は18名、社会的入院が10名であった。AIDS後遺症による長期の社会的入院患者は6名であった。アンケート調査からHIV/AIDS入院患者の7.5%にAIDS後遺症による長期の社会的入院を認めた。医療側で希望する支援内容は「退院先の紹介」と「退院先の支援体制の整備」であった。患者・家族等との具体的な話し合い、地域や施設との関係づくり、そして取り組む担当者やチームの姿勢が重要と示唆された。
2)社会福祉施設の状況 今年度は特別養護老人ホーム4、救護施設1、救護施設・障害者支援施設1、児童養護施設1、乳児院/児童養護施設1の8施設と老人福祉協議会1で研修を兼ねた会議を開催した。アンケートが回収された7施設の分析では、各施設とも研修後では、研修前に比べて受け入れ意向が高くなっていた。会場からは、具体的な医療機関のサポート保障を期待する声が大きく、今後の取組みの方向性を示唆するものといえる。
結論
自立困難例が全国の拠点病院で経験されており、その多くは病状が安定した退院後に、いわゆる“受け入れ先”が無い状況にある事が示唆された。自立困難患者および家族等の地域での社会生活の質を保つためには、社会福祉施設の受け入れ態勢を整えるだけではなく、拠点病院等の医療と地域の社会福祉施設等の福祉との相互連携体制の構築が重要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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