AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発

文献情報

文献番号
200727031A
報告書区分
総括
研究課題名
AZT誘発ミトコンドリア機能障害に対する分子治療方法の開発
課題番号
H19-エイズ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 岳哉(東北大学大学院医学系研究科 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳澤 輝行(東北大学大学院医学系研究科 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
AZT誘発ミトコンドリア機能障害の分子機構解析から、この障害の責任分子(群)を同定する。この成果に基づきHAART治療におけるAZT誘発ミトコンドリア機能不全症を防ぐ分子標的薬の開発を目指す。

研究方法
1)ベクター入手と組換え型tmpk調製
トロント大学Jeffrey A. Medin准教授より、チミジル酸キナーゼ(Tmpk) cDNAを持つレンチウィルスベクターを入手した。抗Tmpk抗体を作製するための抗原、すなわち組換え型tmpkの作製を行った。
2) AZTによる細胞死誘導の確認
マウス培養心筋細胞H9C2にtmpk遺伝子導入を行った。次に、この細胞と対照群の細胞について、種々の濃度のAZT存在下で培養後の影響について調べた。
結果と考察
1) ベクター入手と組換え型tmpk調製
TmpkのcDNAを組み込んだプラスミドを保持する大腸菌を0.4 mM IPTG存在下で遺伝子発現させ、組換え蛋白質を得た。
2) AZTによる細胞死誘導の確認
Tmpk変異型遺伝子を導入細胞においては、AZTの濃度依存的な細胞死が誘導されたが、それ以外の細胞群では起きなかった。また、tmpk変異型遺伝子導入細胞は、10μM以上のAZT添加で、顕著な細胞内ATP量減少がみられた。一方、対照群では、100μM以上のAZT存在下において、有意な細胞内ATP量の低下が観察された。
考察
 Tmpk遺伝子搭載レンチウィルスを用いて、H9C2細胞に遺伝子導入した細胞を本研究に用いた。 
 Tmpk変異型遺伝子導入細胞をAZT存在下で4日間培養すると、この細胞は、AZT感受性が親株あるいはtmpk野生型遺伝子導入細胞よりも亢進していた。これは、変異型tmpkにより、AZTが活性化体AZT-3リン酸(AZT-TP)へ変換され、ミトコンドリア機能障害を誘発したためと考えられる。また、対照群の細胞においても、AZT処理で細胞内ATP量の減少が見られたことは、AZT代謝物がミトコンドリア機能に影響を与えていることを示唆し、今後、AZT代謝物のミトコンドリア機能障害の分子機構について詳細に検討をする必要がある。
結論
Tmpk遺伝子導入H9C2細胞は、AZT代謝物誘発ミトコンドリア機能障害の評価、およびその分子機構を検討するために有用であり、今後、これを用いて詳細な検討を行っていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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