薬剤耐性HIVの発生機序とその制御方法に関する研究

文献情報

文献番号
200727028A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤耐性HIVの発生機序とその制御方法に関する研究
課題番号
H19-エイズ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 裕徳(国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 遊佐 敬介(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 上野 貴将(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 村上 努(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 西澤 雅子(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 増田 貴夫(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 岡本 尚(名古屋市立大学医学研究科)
  • 足立 昭夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 間  陽子(理化学研究所分子ウイルス学研究ユニット)
  • 森川 裕子(北里大学北里生命科学研究所大学院感染制御科学府)
  • 潟永 博之(国立国際医療センターエイズ治療研究開発センター )
  • 高折 晃史(京都大学大学院医学研究科内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内外で薬剤耐性HIVが蔓延する傾向にあり、早急な対策を必要とする。本研究では、薬剤耐性HIVの発生機序とその制御に関する基礎研究を行ない、エイズ対策の科学的基盤を提供する。
研究方法
3つの研究を連携して進める。第一に、ゲノム科学と生物情報科学を応用して、抗HIV薬の治療前後のHIV全ゲノム情報を継続的に収集し、治療下で特徴的に生じる変異を迅速に抽出する方法を研究する。第二に、生命科学の実験手法を用いて、HIVの薬剤逃避、免疫逃避、増殖過程の鍵となる変異、分子、調節機構を研究する。第三に、計算科学を応用して、蛋白質の構造機能、および変化を迅速に解析する方法を研究する。
結果と考察
初年度は、研究の基盤整備と予備的解析を行なった。主任研究者は、計算科学を応用して蛋白質の構造と機能を解析するための計算機環境をつくった。これを用いて、変異による中和抗体エピトープの立体構造変化を解析し、HIVが中和抗体逃避能を獲得するための鍵となる変異を同定した。また、HIVの全ゲノム情報を迅速に収集し、情報科学を適用するための基盤システムを整備した。各分担研究者は、独自にHIVの薬剤標的酵素の基質特異性調節、薬剤逃避、免疫逃避、感染と増殖、等を解析する実験系をつくった。それらを用いて薬剤耐性とウイルスの増殖機構を解析し、HIVの生活環の理解と制御に有用な基礎知見を継続的に蓄積した。サルを用いた新しいHIV感染動物モデルの構築の基礎となる知見を得た。
結論
ゲノム解析技術、生物情報科学、および計算科学を応用してHIVの変異を解析する新しい研究戦略の有用性を示す結果を得た。HIVの免疫逃避、薬剤逃避、持続感染、増殖の分子機序に関する新知見を継続的に蓄積した。これらの研究を一つの研究班の枠組みで同時に実施することにより、薬剤治療下で増殖するHIVの特徴、自然界で許容される変異の種類、変異による新しい性質の獲得のしくみ、HIVの生活環と進化、等の理解が進むと期待される。また、感染症を解析するための新しい研究戦略の構築が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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