健康運動習慣等の生活習慣が健康に与える影響についての疫学的研究

文献情報

文献番号
199700365A
報告書区分
総括
研究課題名
健康運動習慣等の生活習慣が健康に与える影響についての疫学的研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
田中 平三(東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学部門・疫学)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤重幸(札幌医科大学第2内科学教室)
  • 佐藤洋(東北大学医学部衛生学教室)
  • 中村好一(自治医科大学公衆衛生学教室)
  • 西村秋生(茨城県健康科学センター)
  • 吉池信男(国立健康・栄養研究所)
  • 久代登志男(日本大学駿河台病院循環器科)
  • 須田真知子(多摩市健康センター)
  • 安野尚史(愛知県総合保健センター)
  • 河村剛(兵庫県立健康センター)
  • 伊達ちぐさ(大阪市立大学医学部公衆衛生学教室)
  • 中村雅一(大阪府立成人病センター集団健診第一検査室)
  • 能勢隆之(鳥取大学医学部公衆衛生学教室)
  • 景浦しげ子(愛媛県伊予保健所)
  • 竹本泰一郎(長崎大学医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康増進研究事業
研究開始年度
平成4(1992)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
9,020,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労働・運動を中心とした身体活動、栄養素等摂取状況、喫煙、飲酒など生活習慣を多面的に捉え、その動向を一地域に限定するのではなく、日本全国をできるだけ代表するような形でモニタリングするとともに、これらが生活習慣病リスクファクターにどの程度影響を与えているのかを解析することによって、健康づくりの施策に有用な情報を提供することを目的とする。
研究方法
北海道、東北、北関東、首都圏、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州の各ブロックから1ないし2集団を選択し、毎年1回の疫学調査により、生活習慣、リスクファクター、疾病頻度の経年推移をモニターし、生活習慣が健康度にどのような影響を及ぼすかを検討する。初年度に開発された調査プロトコールに従って、約10年間継続予定である本調査を平成4年度から開始した。具体的には、生活習慣として、労働および余暇の身体活動、栄養素等摂取状態、喫煙および飲酒などの保健行動一般について、よく訓練されたインタビュアーによる聞き取りおよび質問票により調査した。生活習慣病リスクファクターとしては、血圧、血清総コレステロール、ヘモグロビン、肥満度(BMI)および血清HDL-コレステロール、γ-GTP等を採用した。本年度は、特に、2回の断面調査(ベースラインおよび中期調査)間の経年的な変化について、性・年齢、地域等を調整した解析を行った。
結果と考察
ベースライン調査(平成4~6年度)に引き続き、中期横断調査(平成7~9年度)を完了させた。ベースラインおよび中期調査の比較により、統計学的に有意の変化として以下の事項が観察された。(1)運動、身体活動、余暇:長期的な休暇を取得する者の割合が増加し、余暇に「汗をかいたり、強く息切れがする」ほどの運動・スポーツを行う者の割合が増加した。一方、「短い距離でも車を利用する」する者は増加し、自身を「運動不足」と感じる者の割合も増加した。(2)身体活動量(定量的調査による):余暇、労働および睡眠時間以外の残余時間を含めた総身体活動量は、男女ともに減少した。その内容としては、労働における作業強度が軽度へ、すなわち坐位がちな労働へとシフトしたためである。一方、余暇の身体活動量は増加し、男性では歩行程度の軽い運動時間が、女性では4.5METs以上の強度の運動時間が主に増加した。(3)食事(特に、減塩):「食塩10gまで」という知識の普及度の低下が観察されるとともに、減塩についてoutcome expectancy、self-efficacy等もレベルの低下が認められた。さらに、「食品数を多くとるようにしている」者の割合も減少した。(4)栄養素摂取量、1日当たりの摂取食品数:総脂肪、特に魚介類を除く動物性脂肪の摂取量が増加した。その結果、飽和脂肪酸摂取量は、約1g/日の増加が認められた。脂肪エネルギー比としては、約1%の増加であった。また、カルシウム摂取量は約30-40mg/日の増加が認められた。1日当たりの摂取食品数では、約1品目/日の増加が認められた。(5)肥満、高脂血症:高コレステロール血症を指摘あるいは投薬されている者は増加した。血清コレステロールの平均値で
は、有意の変化は認められなかったが、特に250mg/dl以上の者の割合は大きく増加した。肥満度に関しては、男性ではBMIの平均値は増加し、女性では逆に減少した。自己の「標準体重」を正しく認識している者の割合は減少傾向にあった。(6)飲酒:習慣的飲酒者の頻度あるいは1回に飲むアルコール量に変化は認められなかったが、「休肝日」や「飲酒の適正量」についてあまり意識しない者の割合は増加した。また、男性ではγGTPが増加した。(7)喫煙:知識あるいは行動(すなわち、喫煙者の割合)などでは変化は認められなかったが、レストラン、公民館、医療機関等の公共の場所における分煙・禁煙を推進するべきだと考える者の割合は増加した。(8)血圧管理:収縮期および拡張期血圧の平均値や、血圧高値者の割合に変化はなかったが、降圧薬を服薬している者の割合や降圧薬の服薬に関して正しい知識を有する者の割合は増加した。(9)検診等受診行動:胃がん、子宮がん検診については、検診既受診者あるいはこれから受診しよういう者の割合は増加した。(10)健康観等:主観的健康観等については、経年的な変化は認められなかった。
現在、予防・保健分野において、より効果的なアクションプランを策定するために、コミュニティー(あるいは国民全体)における現状(=ベースライン)を評価し、問題点を明確にし、さらに何らかの数値目標を設定することの必要性が唱われ、わが国においても「健康日本21」として企画・提案されている。本研究班で収集されたデータは、国民の生活習慣の現状を示す指標の一部として、利用され得るものと考える。さらに、各調査地域についてデータを疫学的に記述し、全国との比較および経年的変化を合わせて検討することにより、いわゆるHealthy communitiesとしての目標値策定につながることが期待される。
結論
ベースライン調査(平成4~6年度)に引き続き、中期横断調査(平成7~9年度)を完了させた。ベースラインおよび中期調査の比較により、長期休暇の取得者割合の増加、余暇の身体活動量の増加、坐位の労働時間の増加による労働における総身体活動量の低下、減塩に対する知識、態度の悪化、脂肪、特に動物性脂肪摂取量の増加、カルシウム摂取量の増加、1日当たりの摂取食品数の増加、高コレステロール血症を指摘あるいは投薬されている者の増加、「休肝日」や節酒に対する意識の低下およびγGTPの上昇、男性におけるBMIの増加、公共の場所における分煙あるいは禁煙に関する意識の向上、降圧薬服薬者の増加、等が経年変化として観察された。これらの結果は、「健康日本21」におけるベースラインおよび目標値の設定に活用することができると考えられる。

公開日・更新日

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