電算機的アプローチを活用したRNaseH活性を標的とするHIV-1複製阻害剤開発に関する研究(若手育成型)

文献情報

文献番号
200727025A
報告書区分
総括
研究課題名
電算機的アプローチを活用したRNaseH活性を標的とするHIV-1複製阻害剤開発に関する研究(若手育成型)
課題番号
H18-エイズ-若手-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター第3室)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 忠次(千葉大学・大学院薬学研究院・物理化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ患者/HIV-1感染者の救済は厚生労働省に求められる重要な緊急課題の一つである。近年、多剤併用化学療法に抵抗性を示す薬剤耐性ウイルスが世界的に蔓延の兆しを見せている。これに対し迅速に実現可能で有効な対応策の一つは新規抗HIV-1薬の開発である。本研究は電算機による小分子化合物とたんぱく質の結合シミュレーションを有効に活用し、ウイルスの持つ逆転写酵素に内在するRNase H活性を標的とするHIV-1複製阻害剤の開発に貢献することを目的とする。
研究方法
逆転写酵素のRNase Hドメインのタンパク質立体構造情報に基づいて、第一次最適化により得られた有望な先導化合物と酵素の活性中心との結合様式を予測し作用機序を推測する。同時により強いRNase H活性阻害効果をもつと予測される小分子化合物をデザイン・合成しそのRNase H活性阻害活性を評価する。抗ウイルス活性と細胞毒性を迅速に測定できる実験系の構築を行い有望な先導化合物について抗ウイルス活性と細胞毒性を評価する。
結果と考察
分子間相互作用をより詳細に評価できる新規演算アルゴリズムを開発に成功し、前年度の研究で得られたRNase H阻害剤先導化合物と酵素とのdocking simulationを行った結果、RNase Hの活性中心に存在するマグネシウムイオンに配位しつつ周囲3方向にのびる溝を埋めるような構造を持つ小分子化合物がRNase H活性阻害剤として最適であることが示唆された。これをもとに新規RNase H阻害剤をデザインし合成中である。培養細胞において抗HIV-1活性と細胞毒性を簡便に同時に測定することができる実験系MT-4 Luc系を樹立した。先導化合物から得られた誘導体の中に抗ウイルス活性を示すものを同定した。
結論
研究開始より2年で抗ウイルス活性を欠くリード化合物から培養細胞レベルで抗HIV-1活性を示す誘導体を得ることが出来た。これは今まで報告された化合物とは構造が異なる新たなクラスのRNaseH阻害剤である。今後これをもとにより強い活性の化合物に改変する必要がある。電算機によるバーチャル薬剤デザインと実際のスクリーニングとを協調して行うことにより短期間で薬剤開発を行うという本研究コンセプトの潜在的パワーを示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2008-03-24
更新日
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