抗エイズ薬を目指したウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化分子の開発

文献情報

文献番号
200727024A
報告書区分
総括
研究課題名
抗エイズ薬を目指したウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化分子の開発
課題番号
H18-エイズ-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
袴田 航(日本大学 生物資源科学部 農芸化学科 生物有機化学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所有機化学部)
  • 西尾 俊幸(日本大学生物資源科学部農芸化学科生物有機化学研究室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズの慢性感染症化は、「多剤併用療法」の広がりを意味し、それら薬剤に対する耐性株の出現速度を増大させている。そこで、これまでの「多剤併用療法」の治療標的だけでなく、異なる標的を有する薬剤および宿主免疫を維持する薬剤の登場が強く望まれている。本研究は、ウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化作用増大による抗エイズ薬を目指しており、「多剤併用療法」の維持・発展の為に必要な研究である。
研究方法
HIV エンベローブ糖タンパク質 gp120 の N-結合型糖鎖は、始めに小胞体 N-結合型糖鎖プロセシング酵素により糖鎖のプロセシングが行われ、正常な糖タンパク質のみが輸送される。よって、N-結合型糖鎖プロセシング酵素を害する事が出来れば、目的とする糖鎖構造を有する gp120 が構築でき、HIV に目的とする糖鎖を提示させる事が可能となる。その結果、制御された糖鎖を有する gp120 に中和抗体が結合し、抗 HIV 活性を発現する事が期待される。そこで、in silico 技術および HTS 法を両輪とし、阻害剤の探索・分子設計・阻害剤分子の合成・阻害活性の評価を有機的に連携して研究を実施することにより、高活性化合物が迅速かつ効率的に得る。
結果と考察
 「in silicoによる論理的かつ高効率的な阻害剤分子設計」:市販化合物ライブラリを用いたバーチャルスクリーニングにより、濃縮された糖鎖構造制御化合物ライブラリを得、化合物ライブラリの品質・多様性について検討を行った。「微生物ライブラリからの阻害剤のHTS」:HTS を用いた阻害剤の網羅的探索のために、新たな HTS 法の開発を行い、これまでにない基質を用いる事により、より構造情報が得やすい酵素活性測定法を開発した。更に、特異な培養条件で培養した放線菌ライブラリを対象として、HTS を用いた阻害剤の網羅的探索を行った結果、強力な阻害活性を有する代謝物と特定の特異な培養条件においてのみ阻害剤を生産する放線菌を見いだした。

結論
 本年度迄に、エイズウイルス糖鎖構築酵素阻害剤候補化合物の化合物およびライブラリおよび放線菌を特異な培養条件で培養する事により、阻害剤を得た。このように、in silico および天然のライブラリから、エイズウイルス糖鎖構築酵素阻害剤候補化合物を得る事に成功した。本結果を基に、今後は得られた化合物が細胞レベルでの抗エイズウイルス活性を有しているのか、有していた場合は、その構造を最適化し、抗エイズ薬候補化合物を得る予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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