地震による水道被害の予測及び探査に関する技術開発研究

文献情報

文献番号
199700364A
報告書区分
総括
研究課題名
地震による水道被害の予測及び探査に関する技術開発研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
(財) 水道技術研究センター
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 災害時支援対策総合研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
23,125,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道施設の計画的な耐震化推進の基盤を整備するため、施設被害を科学的に予測するシミュレーション技術を開発するとともに、ライフラインの一つである水道施設が地震時に被災した場合、水道管路の損傷状態を迅速かつ的確に探査できる技術の開発を行う。
?地震による水道被害予測シミュレーション技術の研究開発(第二分科会):水道事業において、施設を耐震化することは急務である。しかし、管路は長大であり、耐震化を進めるためには多くの時間と費用を要する。本研究開発は、水道事業者が効率的かつ効果的に施設の耐震化を推進し、迅速な復旧計画が可能となるよう、地震被害予測のためのデータベース作成と震災シミュレーションモデルの構築を目的とする。
?水道管路被災事実探査・探知技術開発研究(第一分科会):水道管路は、地下に敷設されているものが大半であり、平常時はもとより地震などの災害時に漏水個所を探知・確認することが非常に困難で、阪神淡路大震災においても早期復旧を遅らせる要因となった。
本研究開発は、既存の水道管路の被災事実探査・探知技術を活用・改良した効率的・効果的な漏水調査システムの確立を目的とする。
研究方法
この研究開発を推進するために、当センターに共同研究事業を設置し、これに、共同研究委員会と二つの分科会および事務局(当センター)を設けた。共同研究委員会は、学識経験者、水道事業体の専門家、企業の技術者で構成し、研究全体の審議・評価を行う。また、各分科会は、二つの研究開発課題をそれぞれ推進するが、学識経験者を座長として水道事業体の専門家および企業の技術者で構成し、共同研究委員会で審議した方針に従った具体的な研究開発を行う。
結果と考察
被害予測技術(第二分科会)と損傷探査技術(第一分科会)の各々について記す。
1.被害予測技術について(第二分科会)
被害予測技術に関して行った各種検討及び資料・データの調査等の結果の概要は下記の通りである。
(1)データ調査およびデータベース作成
?管路:(社)日本水道協会のCD-ROMデータを利用し、地震動の大きかった神戸市(東部、中部、西部センター)、西宮市、芦屋市の被害データ、地形・地質データのデータベースを作成した。また、周辺の調査・解析対象地区として、神戸市(垂水、西、北区)、大阪市、宝塚市、尼崎市で9ヶ所を選定し、この地区について管路データ、被害データ、地形・地質データ、地震動の強さなどのメッシュ(250m)データベースを作成した。
?水管橋:日本水道鋼管協会が実施した現地での被害調査の結果と被害データによった。
?池状構造物、電機設備:池状構造物については、地震被害に関する文献調査を実施し、被害データを整理した。電機設備については、文献調査と(社)電気学会が実施したアンケートによる被害調査の結果と被害データより、水道関係のみを抽出して整理した。
(2)被害要因分析および予測モデル作成
?管路:被害予測に関する基本的な考え方を整理し、被害予測モデルに関する基本計画書を作成した。また、これと並行して、作成したデータベースにより地震動の大きさと被害率、液状化と被害率、管種・口径と被害率などについて被害分析を行った。
?水管橋、池状構造物、電機設備:被害データの数と質を評価するとともに被害予測手法について検討し、被害予測は個別に行うという方針を明確にした。水管橋、池状構造物については、昭和56年3月厚生省発行「地震対策に関する調査報告書」で採用されている「耐震性照査」をベースとして、兵庫県南部地震の被害調査結果を反映し、項目および重み係数を工学的判断によって見直すことにした。そのうち水管橋は、日本水道鋼管協会の見直し結果を審議し、本分科会の被害予測手法として採用することにした。電機設備については、「耐震性照査」のベースがないため、今回新たに作成することを検討した。被害データを調査・分析した結果、電機設備の被害は周辺の関連施設被害を原因とする二次被害が多いことが判明した。一方、電機設備の被害が水道機能に与えるか否かは、システム形態にも依存することから、これからも「耐震性照査」の項目に含めることを検討した。
(3)プロトタイプシステム構築
?他企業の被害予測事例の調査:プロトタイプシステム構築に先立ち、(株)東京ガス、(財)鉄道総合技術研究所、大阪府、奈良県水道局の各システムを見学・調査した。
?システム基本仕様の検討:「被害予測モデルに関する基本計画書」に基づき、プロトタイプシステムの仕様を検討し、基本設計書を作成した。また、ソフトウエアとデータベースの一部を製作した。
(4)影響度分析および影響予測モデル作成
被害想定に関する文献調査と国内で開発中のシステムを調査・検討した。
2.損傷探査技術について(第一分科会)
(1)実験システム設計・建設
・実験場所:横浜市水道局 川井浄水場敷地内
・実験設備:敷地面積 30m×70m
地上部管路 φ200 DC L=125m φ100 DC L=5m φ100 VP L=5m
埋設部管路 φ100 DC L=60m φ100 VP L=60m
φ200 DC L=25m φ500 DC L=20m
・そ の 他:弁類、消火栓、流量計
・運用期間:平成9年10月2日~平成11年2月 予定
(2)震災時における探査・探知技術の実態調査と分析
震災復旧の事例として阪神・淡路大震災時の漏水探査状況を、復旧に参加した事業体、企業のアンケートにより地震時の探査・探知技術の調査とその分析を行った。
(3)技術開発・研究推進
管内圧力水がない場合でも漏水探知が可能な技術として、下記の4項目を選定し、新技術による研究開発を行った。
・地中レーダー:市販地中レーダーと改良した高効率新方式地中レーダーを使い、両者による仮想離脱部、空洞の探査の可能性について実験を行い、一応の見解が得られた。
・スモーク探査:下水道管で実用化されているスモーク探査工法の水道管での適用性について、スモークの注入と地上への検出状況の基礎実験を行い、破損状態が確認できる条件等の確認を行った。
・音響探査:管内にスピーカー、マイクロホンを挿入し、音波を発生させ、2点間で検出した管内音圧信号をもとに、損傷箇所の推定を行う音響探査工法について、音波注入方式、仕様音波の使用帯域、検出精度等を確かめる基礎実験を行った。
・管内走行車(カメラ)探査:現状の視覚センサーの調査および適用可否の判断を行い、走行車による配管内の走行性、消火栓よりのアクセス性を検討した。
結論
今後必要と考えられる研究を以下に記す。
・被害予測技術について:作成したデータベースをもとに、被害要因の分析を行い、各水道施設(管路、水管橋、池状構造物、電機設備)の被害予測モデルを作成することが必要である。さらに、管路の被害予測については、パソコンで動作する被害予測プロトタイププログラムを作成することが必要である。また、影響度分析および影響度予測は、水道事業体などが耐震化計画を立案する場合の資料となるよう、被害予測結果を反映できるコンセプト/モデル化案を作成することが必要である。
・損傷探査技術について:各探査技術(地中レーダー、スモーク探査、音響探査、管内走行車探査)について、実験を行い、その実験結果をもとに機能の評価を実施し、課題の整理と提案技術のまとめを行うことが必要である。

公開日・更新日

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