災害が母子の心身に及ぼす影響についての総合研究

文献情報

文献番号
199700363A
報告書区分
総括
研究課題名
災害が母子の心身に及ぼす影響についての総合研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
平山 宗宏(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中村肇(神戸大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 災害時支援対策総合研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
23,125,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、自然災害として、戦後最大の被害をもたらした。欧米においては災害による心身への影響はPTSD(心的外傷後ストレス障害)として知られ、近年注目されてきた。しかし、欧米においても乳幼児とその母親を対象とした研究はほとんどない。母子の心身に及ぼす短期的および中長期的な影響を明らかにすることは、被災した母子への支援対策を考えるうえでも、また今後の大規模災害への対策のあり方を考えるうえでも重要である。そこで、本研究では、平成8年度に引き続く追跡調査として、震災より2年6カ月後の時点での母子の心身の状況を明らかにすることを目的に質問紙調査を実施した。また、大規模災害時における子育て支援活動に役立てるために、今回の調査結果をふまえた「災害時における家族支援の手引き」を作成することとした。
研究方法
調査対象は、被災地(兵庫県及び神戸市)の乳児及び1歳半、3歳、4歳、5歳各2,000名、計10,000名とした。調査は、平成7年度に作成した調査票を用い、乳幼児健診受診児及び保育所在籍児の保護者に回答を依頼し、回収した。調査項目は、被災の状況等、子どもの心身の症状あるいは問題、母親の心理状態、子育ての状況の4領域に関するものであった。調査時期は、平成9年6月、7月であった。
結果と考察
7,639名から回答が得られ、回収率は約75%であった。結果の概要は次のとおりであった。1)平成9年度は、8年度に比べ、子どもの心身の状況に関して改善傾向が認められた。しかし、被災状況との関連をみると、震災から2年半を経過した時点でも、心理面を中心に、被災の影響が持続していることが認められた。
2)被災の程度との関連は、直接に震災を経験した年長児ほど明らかであった。すなわち、震災を直接には経験していない2歳未満の児では住居被害との関連は12項目中2項目に認めただけであったが、3歳児では22項目中10項目、4~6歳児では22項目中13項目に有意な関連を認めた。
3)母親においては、心理状況と住居被害との関連はより明らかであった。PTSDに関連する項目すべてにおいて、被害状況がひどいほど、問題の陽性率が有意に高かった。また、住居被害がなかったり、軽度であった母親では、平成9年度には前年度と比べて陽性率が改善していたのに対して、住居被害がひどかった母親では改善傾向がみられなかった。子どもの症状は、生活の立て直しに追われる両親の心理状態を反映しているとも考えられた。
4)乳幼児をもつ家族への子育て支援を有効に行うためには、子どもを支援する立場にあるものが共通の知識と理念をもつことが重要であり、乳幼児およびその家族に接する機会が多い保健婦、保母、ケースワーカー等を対象とした「手引き」が必要と考えられた。そこで、阪神・淡路大震災の経験と今回の調査結果にもとづいて「災害時における家族支援の手引き」を作成した。
結論
平成9年度には、8年度に比べ、改善傾向が認められたが、被災状況との関連をみると、震災から2年半を経過した時点でも、母子ともに、被災の影響が持続していることが認められた。子どもの場合、被災の影響は年長児ほど明らかであった。これらの結果は、被災の程度がひどい場合には、な

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