血友病の治療とその合併症の克服に関する研究

文献情報

文献番号
200727006A
報告書区分
総括
研究課題名
血友病の治療とその合併症の克服に関する研究
課題番号
H18-エイズ-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 洋一(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター分子病態研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 敬也(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部 )
  • 吉岡 章(奈良県立医科大学小児科学教室)
  • 小林 英司(自治医科大学医学部分子病態治療研究センター臓器置換研究部 )
  • 長谷川 護(ディナベック株式会社)
  • 天野 景裕(東京医科大学臨床検査医学講座)
  • 小田原 隆(東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科)
  • 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
93,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血友病は凝固第VIII因子(FVIII)或いはIX因子(FIX)遺伝子異常による先天性出血性疾患である。血友病に治癒をもたらし、因子製剤使用量を減らすことで経済効果も期待できる遺伝子治療と、血友病インヒビター対策、そして患者QOL向上を目指した諸問題の調査を目的に研究を展開した。
研究方法
直接体内臓器を標的に遺伝子導入する場合はアデノ随伴ウイルスベクター(AAVV),体外で幹細胞に遺伝子導入し移植する場合は、第三世代化他安全性を高めた改変サルレンチウイルスベクター(SIVV)を用いた。染色体組み込みに対する安全性確保の為インシュレータ導入を検討した。効率的免疫寛容誘導法開発を目指した基礎的検討を進めた。また、患者が参加して作成した調査研究用紙を回収し解析した。動物実験は厚労省所管実施機関、及び各大学の動物実験指針規定に従い、臨床研究、疫学研究は文科省・厚労省の倫理指針を遵守して施行した。
結果と考察
マウスでの血友病遺伝子治療技術は確立した。サルでもFIXcDNAをAAV8V,AAV9Vを用いて腸間膜静脈より肝臓に導入し治療レベル因子の長期発現が確認できた。しかし、既存抗AAV中和抗体レベルが導入効率を左右し個体差が大きいため、測定法改善と、バルーンマイクロカテーテルを用いて門脈内血液を洗浄し、抗体に接しない肝臓局所遺伝子導入法を開発した。中和抗体の存在したサルに10-20%の因子発現が持続している。この方法を確立できれば、繰り返し治療も可能になる。血液幹細胞にFVIII,或いは活性型第VII因子(FVIIa)遺伝子をSIVVを用いて導入し、血小板に発現させると、インヒビターの影響を受けない局所止血が見られる。FVIIaは血小板活性化で放出されないが膜表面へ移動し凝固を促進することが免疫電顕で確認された。インシュレータにクローナル増殖抑制効果がみられた。胸腺組織FVIII暴露で誘導される免疫寛容がFVIII特異的制御性T細胞誘導に依ることが詳細に解析された。調査研究により、社会差別、出血と重症度などについて患者視点から示唆に富む結果が得られた。
結論
遺伝子治療はサルを用いた前臨床試験でも一定の成果が見られ、問題点も一つ一つ解決されつつある。ヒト臨床研究開始には安全性確保の実験がさらに必要である。調査研究によりいくつかの解決すべき課題が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
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