文献情報
文献番号
200727005A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト人工染色体ベクターを用いた血友病の新遺伝子治療法の開発
課題番号
H18-エイズ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
押村 光雄(鳥取大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 香月 康宏(鳥取大学・大学院医学系研究科)
- 井上 敏昭(鳥取大学・大学院医学系研究科)
- 加藤 基伸(鳥取大学・大学院医学系研究科)
- 武谷 浩之(鳥取大学・医学部生命科学科)
- 谷口 英樹(横浜市立大学院・医学研究科)
- 落谷 孝広(国立がんセンター研究所・がん転移研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
カセット方式で遺伝子導入でき自律複製する極小染色体であるがゆえ遺伝子搭載サイズに制限なく、あらゆる細胞に移入することが可能であるヒト人工染色体(HAC: Human Artificial Chromosome)ベクターを用い、持続的改善と患者の経済的肉体的負担の大幅軽減をもたらす血友病治療法をマウスで検証する。
研究方法
血友病の安全な遺伝子治療を目指し、Factor VIII cDNAを多数タンデムにHACベクター上に搭載し、ヒト間葉系幹細胞に導入し高効率発現システムを構築する。モデル系としてこれをマウスに移植し、発現を定量化し、最少数の移植細胞による長期補充療法を検証する。さらに幹細胞の分化誘導により細胞動態、Factor VIIIの分泌動態を長期にわたり解析し、安全性・機能性を評価し、臨床応用に向けた礎とする。
結果と考察
Factor VIII cDNAを4コピー搭載した人工染色体を不死化した間葉系幹細胞へ導入したクローンにおいてFactor VIIIの機能性発現を確認した。Factor VIII発現細胞を血友病モデルマウスに移植後、血中でのFactor VIIIの機能性発現を確認できた。Factor VIIIを4 copy搭載するだけでもレスキューするには十分効果を発揮することがわかった。モデルマウス由来ntESへのFactor VIII-HACベクター導入後、血友病モデルマウス皮下に移植すると腫瘍を形成した。ESを肝臓へ分化、あるいは血小板を含む血液系へ分化誘導させたときにFactor VIIIの最低限必要なコピー数を知る上でも重要であると考えられる。染色体改変技術を用いたマウスES細胞のin vitroで肝細胞への分化誘導システムを構築できた。Factor VIIIに肝臓由来、あるいは血小板由来のプロモーターをつなげたものを染色体改変により導入すればより生理的な発現制御の下でHACベクター上の遺伝子を発現できる可能性が見出された。
結論
HACベクターを用いる血友病の新遺伝子治療法の開発は概ね予定通り進んだと言える。安定であり、コピー数依存的発現可能なFactor VIII 搭載HACベクターを構築し、間葉系幹細胞への移入、皮下移植、効果と安全性の検証を着々と進めることができた。
今後、本研究でめざす新規血友病治療法を完成させ、HACベクターを用いた遺伝子治療において我が国が世界的リーダーとなるよう長期的な展望に立ち研究を進めたい。
今後、本研究でめざす新規血友病治療法を完成させ、HACベクターを用いた遺伝子治療において我が国が世界的リーダーとなるよう長期的な展望に立ち研究を進めたい。
公開日・更新日
公開日
2008-06-04
更新日
-