RNAi耐性ウイルス株の出現に対処する第二世代のRNAi医薬品の開発

文献情報

文献番号
200727002A
報告書区分
総括
研究課題名
RNAi耐性ウイルス株の出現に対処する第二世代のRNAi医薬品の開発
課題番号
H17-エイズ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高久 洋(千葉工業大学工学部生命環境科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田誠治(熊本大学・エイズ学研究センター)
  • 橋本香保子(千葉工業大学工学部生命環境科学科 )
  • 黒崎直子(千葉工業大学工学部生命環境科学科 )
  • 山本典生(東京医科歯科大学大学院医科歯科総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズは多剤併用療法は多剤耐性株の出現を増大と難治治療例を増加させることが長期療養の潜在的問題点の一端である。この解決のため、RNAiシステムの利用を考えた。本研究では第二世代RNAiのRNAi薬剤耐性HIVに対する抗ウイルス効果の評価を行うと共にその抗ウイルス効果メカニズムを詳細に解析することを目的とする。本年度は最終年度はHIV-1感染モデルマウスを用いて動物における薬剤効果の評価系を樹立する。そして、細胞である程度の効果が確認されているおとり-TAR RNAとshRNA-Vifの動物における効果を確認する。
研究方法
shRNAはHIV-1のDIS領域において21塩基を標的としたものを5種類T7 RNAポリメラーゼを用いて合成し、IFN産生とCPEをそれぞれ検討した。つぎに、ヒト臍帯血由来造血幹細胞にレンチウィルスを用いてdecoy-TAR RNAとshRNA-Vifを遺伝子導入し、更にNOD/Scid/Jak3欠損マウスに移植する。移植後12週間以降にT細胞の出現を確認した後、HIV-1 JRFL株を攻撃接種する。経時的にマウスから採血し、p24とCD4陽性T細胞の割合を計測することにより、decoy-TAR RNAとshRNA-Vifのin vivoにおける効果を判定する。
結果と考察
T7 RNAポリメラーゼを用いて合成したshRNAは5‘-末端には2つのG残基と二重鎖部位はヘアピン構造を有することで、TLR,RIG-Iからの認識を回避できる。サブタイプ間で保存性の高い配列を選出し、それらを標的とするRNAiベクターを構築し、評価したところ、ウイルス産生の低下が示唆された。高度免疫不全マウスにレンチウィルスが誘導するdecoy-TAR RNAとshRNA-Vifを遺伝子導入したT細胞と造血幹細胞を用いた系の樹立を試みた結果、長期培養したヒトT細胞がマウス体内で増殖することは確認したので、今後、遺伝子導入法の工夫により動物における薬剤効果の評価系の樹立は可能であると考えられる。
 
結論
5’側に2つ以上のG残基を付加することにより、これまで問題視されてきた shRNAの非特異的な遺伝子抑制とサイトカインの産生を抑えることができた。またshRNAの新たな標的としてDIS領域が同時に複数のウイルスタンパク質の発現を抑制するだけでなく、耐性ウイルスの出現も避けられることが明らかとなった。そして、長期培養系で樹立したT細胞がNOD/Scid/Jak3欠損マウス体内で増殖可能であることを見出した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200727002B
報告書区分
総合
研究課題名
RNAi耐性ウイルス株の出現に対処する第二世代のRNAi医薬品の開発
課題番号
H17-エイズ-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高久 洋(千葉工業大学工学部生命環境科学科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田誠治(熊本大学エイズ学研究センター)
  • 黒崎直子(千葉工業大学工学部生命環境科学科 )
  • 橋本香保子(千葉工業大学工学部生命環境科学科 )
  • 山本典生(東京医科歯科大学大学院医科歯科総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では第二世代RNAiのRNAi薬剤耐性HIV-1に対する抗ウイルス効果の評価を行うと共にその抗ウイルス効果メカニズムを詳細に解析することを目的とする。また、今まで問題となっている薬剤耐性ウイルス株に対してもその長期にわたってHIV-1ウィルス増殖抑制可能な遺伝子医薬(shRNA)の開発を目指す。そのために、HIV-1感染モデルマウスを用いて動物における薬剤効果の評価系を樹立する。
研究方法
第二世代RNAiベクターは、HIV-1 vifを標的としたshRNA(CS-vif)とデコイTAR(CS-TAR)を共発現するレンチウイルスベクター(CS-vif-TAR)を作製し、PBMCに導入した.ヒト臍帯血由来造血幹細胞にRNAi発現レンチウィルスを用いて遺伝子導入し、更にNOD/Scid/Jak3欠損マウスに移植する。移植後T細胞の出現を確認した後、HIV-1 JRFL株を攻撃接種する。経時的にマウスから採血し、p24とCD4陽性T細胞の割合を計測することにより、decoy-TAR RNAとshRNA-Vifのin vivoにおける効果を判定する.
結果と考察
shRNAやデコイTARを単独で発現するベクターを細胞に導入してHIV-1を感染させると、約2?3週間でウイルスの出現が見られたのに対し、shRNAとデコイTARを共発現するCS-vif-TARは約9週間の長期間に渡りHIV-1転写阻害効果が見られた。また、CS-vif-TARは野生株 HIV-1と同様、薬剤耐性HIV-1についてもウイルスの増殖を最も強く抑制した。ヒト臍帯血由来造血幹細胞にレンチウィルスが誘導するdecoy-TAR-shRNA-Vifを遺伝子導入を試みたところGFPを指標として90%以上の細胞への遺伝子導入が可能であった。現在遺伝子導入期間の短縮などの改良を試みている。
結論
本研究によって作製された第二世代RNAiベクターと従来のHAARTを組み合わせることで、より効果の高い新規治療法の開発が可能であることを意味する。また、耐性ウイルスの出現も避けられることが明らかとなった。さらに、長期培養系で樹立したT細胞がNOD/Scid/Jak3欠損マウス体内で増殖可能であることを見出した。近い将来RNAi医薬品を始めとする新規抗HIV-1薬の早期の認可が可能になることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-06-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200727002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究によって作製された第二世代RNAi医薬品と従来のHAARTを組み合わせることで、より効果の高い新規治療法の開発が可能である。RNAi耐性ウイルスに対するTAR-decoyとvif-shRNAを組み合わせた医薬品はRNAi耐性ウイルスに対しても長期間にわたり抗ウイルス活性を示した。また、多剤耐性変異株を含む薬剤耐性HIV-1の増殖をも抑制し、より効果の高い新規治療法が開発可能であると思われる。そして、高度免疫不全マウス体内で増殖可能であることを見出した。
臨床的観点からの成果
本研究では、RNAiの高い機能を生かしつつ、長期にわたってウイルス産生を抑制出来るようなRNAi医薬品vif-shRNA-decoy TAR RNAの組合を考案した。これらのRNAi医薬品は薬剤耐性株に対しても有効である。高度免疫不全マウスにdecoy-TAR RNAとshRNA-Vifをレンチウィルスで遺伝子導入した細胞のマウス体内における増殖・維持は現在遂行中であり、今後これらの結果次第では臨床実験に進める可能性が期待される。レンチウィルスベクターは米国で2007年にFDAの認可を得た。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
日本経済新聞(2005年8月15日)エイズ治療薬候補:我々の開発したRNAiとおとりRNAを組み合わせた手法が長期間抗HIV-1効果を示し、マウスモデルでの実験を準備中。週間東洋経済(2005年7月30日,p74-75)我々の開発したRNAiとおとりRNAを組み合わせた手法が長期間抗HIV-1効果を示し、細胞実験が終了したので、日本国内ベンチャーの協力を得て、米国での動物実験を進める予定。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
RNAi耐性株にたしてもその抗HIV-1活性を保持したshRNA-decoyRNAの開発に関する研究とインターフェロン産生等の副作用を伴わないRNAi医薬品の開発の成果を報告している。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
19件
RNAi医薬品の開発研究と自然免疫を利用したウイルスおよび癌治療に関する研究成果を報告している。
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
7件
RNAi耐性株にたしてもその抗HIV-1活性を保持したshRNA-decoyRNAの開発に関する研究とインターフェロン産生等の副作用を伴わないRNAi医薬品の開発の成果を報告している。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
RNAi医薬品に関する国内特許を3件出願し、すでに1件が特許を取得。この一件にたいして海外特許を出願中。RNAiに関して国内特許は初めての例となる。
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyano-Kurosaki N., and Takaku H.
Gene silencing of virus replication by RNA interference.
Handbook of Experimental Pharmacology , 151-171  (2005)
原著論文2
Barnor J.S., Miyano-Kurosaki N., Yamaguchi K., et al.
The middle to 3'end of the HIV-1 vif gene sequence is important for vif biological activity and could be used for antisense oligonucleotides targets.
Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids , 24 , 1745-1761  (2005)
原著論文3
Barnor J.S., Miyano-Kurosaki N., Yamaguchi K., et al.
Lentiviral-mediated delivery of combined HIV-1 decoy tar and vif siRNA as a single RNA molecule that cleaves to inhibit HIV-1 in transduced cells.
Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids , 24 , 431-434  (2005)
原著論文4
Habu Y., Miyano-Kurosaki N., Kitano M. et al.
Inhibition of HIV-1 gene expression by retroviral vector-mediated small-guide RNAs that direct specific RNA cleavage by tRNase ZL.
Nucleic Acids Res. , 33 , 235-243  (2005)
原著論文5
Hamazaki H., Ujino S., Takaku H.
Short hairpin RNA synthesized by phage polymerase do not induce interferon in hepatitis C virus subgenomic replicons.
RNAi Therapeutics. , 67-78  (2006)
原著論文6
Nagawa T., Habu Y., Matsumoto N. et al.
Long term transgene expression and inhibition of HIV-1 replication by a Cre/loxP-EBNA-1oriP HIV-1 dependent ribozyme vector: applications for HIV-1 genetherapy.
J.RNAi Gene Silencing , 2 , 145-153  (2006)
原著論文7
Ikeda M., Habu Y., Miyano-Kurosaki N. et al.
Suppression of HIV-1 replication by a combination of endonucleolytic ribozymes (RNase P and tRNase ZL).
Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids , 25 , 427-437  (2006)
原著論文8
Hamazaki H., Ujino S., Miyano-Kurosaki N. et al.
Inhibition of hepatitis C virus RNA replication by short hairpin RNA synthesized by T7 RNA polymerase in hepatitis C virus subgenomic replicons.
Biochem.Biophys.Res. Comm., , 343 , 988-994  (2006)
原著論文9
Hayafune M., Miyano-Kurosaki N., Park W.S. et al.
Silencing of HIV-1 gene expression by two types of siRNA expression systems.
Antiviral Chem.Chemother. , 17 , 241-249  (2006)
原著論文10
Kaneko H., Suzuki H., Abe T. et al.
Inhibition of HIV-1 replication by vesicular stomatitis virus envelope glycoprotein pseudotyped baculovirus vector-transduced ribozyme in mammalian cells.
Biochem.Biophys.Res.Comm. , 349 , 1220-1227  (2006)
原著論文11
Gondai T., Yamaguchi K., Miyano-Kurosaki N. et al.
Short-hairpin RNAs synthesized by T7 phage polymerase do not induce interferon.
Nucleic Acids Res. , 36 , 18-  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-