国内で発生のないベクター媒介性感染症の疫学診断法等の研究

文献情報

文献番号
200726041A
報告書区分
総括
研究課題名
国内で発生のないベクター媒介性感染症の疫学診断法等の研究
課題番号
H19-新興-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
苅和 宏明(北海道大学大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高島 郁夫(北海道大学大学院獣医学研究科)
  • 有川 二郎(北海道大学大学院医学研究科)
  • 福士 秀人(岐阜大学応用生物科学部)
  • 丸山 総一(日本大学生物資源科学部)
  • 林谷 秀樹(東京農工大学共生科学技術研究院)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所)
  • 早坂 大輔(東京都神経科学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、アレナウイルス感染症、サル痘、Q熱、バルトネラ感染症、エルシニア感染症、およびサルモネラ感染症はいずれもげっ歯類をベクターまたは病原巣動物とする人獣共通感染症であるが、これまでわが国に輸入されるげっ歯類については上記感染症の検査はほとんど実施されてこなかった。本研究では輸入げっ歯類について上記感染症の抗体、抗原、および病原体の遺伝子について簡便な検出法を確立し、検査体制を整備することを目的とした。
研究方法
ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、エルシニア感染症、およびサルモネラ感染症について新規診断法の開発を試みた。ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)のマウス感染モデルを用い、病原性発現機序を解析した。サル痘ウイルス感染サルの病理組織学的検索を行った。
結果と考察
北海道の森林でエゾヤチネズミの捕獲を行い、ハンタウイルスの感染動態の解明を試みたところ、オスの抗体陽性率がメスのそれよりも有意に高かった。TBEVの中空ウイルス様粒子(SPs)を用いたELISAの成績は中和試験の成績と非常によく一致した。TBEV感染マウスの病原性発現機序の解析では、マウスの致死にはウイルスの神経細胞への直接障害に加え、宿主側の要因も関わっていることが示唆された。野生げっ歯類におけるQ熱病原体の抗体保有状況を調査したところ、北海道のエゾヤチネズミの79%とアカネズミの56%が抗体陽性であった。北海道の野鼠の68%とネズミノミの35%からバルトネラ属菌が検出された。サルモネラおよび病原性エルシニアについて、迅速かつ簡便な遺伝子検出法としてmultiplex PCR法が開発された。サル痘の迅速診断法としてLAMP法の有用性が明らかになった。サル痘ウイルス感染サルの病理組織学的検索では、上皮系細胞とマクロファージにウイルス抗原が存在することが明らかになった。
結論
げっ歯類媒介性の人獣共通感染症である、ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、サル痘、Q熱、バルトネラ感染症、エルシニア感染症、およびサルモネラ感染症について、新規の診断法を開発するとともに、疫学調査を実施した。本研究で開発された診断法は輸入げっ歯類などの検査にも応用可能であり、今後、さらにこれらの診断法の簡便化を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-