新規に発生しているレンサ球菌による劇症型感染症の臨床的・細菌学的解析と、診断・治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200726031A
報告書区分
総括
研究課題名
新規に発生しているレンサ球菌による劇症型感染症の臨床的・細菌学的解析と、診断・治療法に関する研究
課題番号
H19-新興-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 慶介(北里大学大学院感染制御科学府&北里大学北里生命科学研究所・感染症学)
研究分担者(所属機関)
  • 生方 公子(北里大学大学院感染制御科学府・病原微生物分子疫学研究室)
  • 渡辺 治雄(国立感染症研究所)
  • 大石 和徳(大阪大学微生物病研究所・感染症国際研究センター高病原性感染症研究部門)
  • 吉田 敦(獨協医科大学病院・臨床検査医学講座)
  • 藤島 清太郎(慶應義塾大学医学部・救急医学)
  • 坂田 宏(JA北海道厚生連旭川厚生病院・小児科)
  • 岩田 敏(国立病院機構東京医療センター・小児科)
  • 松井 英則(北里大学大学院感染制御科学府・免疫機能制御学研究室)
  • 秋山 徹(国立国際医療センター・感染症制御研究部・感染症免疫遺伝研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
33,110,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
市中感染症の中で,最も予後の悪い「レンサ球菌感染症(肺炎レンサ球菌含む)」に焦点をあて,侵襲性感染症から分離された菌株を全国規模で収集し,病原因子を含めた分子疫学解析を行う。臨床面では当該感染症がどのような年齢層と基礎疾患を有する例で問題であるのか,統計学的に明らかにする。基礎的には,動物モデルを用いた発症機構の解明を行う。それらの成績を基に,i)重症レンサ球菌感染症の感染防止対策,ii)迅速診断法の確立,iii)重篤化を防ぐ治療法を確立する。
研究方法
H19年度は,レンサ球菌と肺炎球菌による市中型侵襲性感染症例の宿主背景と分離菌について,全国規模の疫学解析を行った。両菌種各500株ずつが収集され,病原性遺伝子,薬剤耐性等の分子疫学解析が実施された。基礎研究では,糖尿病モデルマウス,ヒト上皮細胞CD46の組み換えマウスを用いて,感染の病態が解析された。さらにGASにみいだされる各種病原遺伝子と重症化との関係が検討された。
結果と考察
疫学研究:全国規模の疫学成績を冊子にまとめ,配布した。解析肺炎球菌とレンサ球菌による侵襲性感染症例は,小児よりも成人例が有意に多かった。また,「死亡+後遺症残存」例は,成人の肺炎球菌例で27.7%,レンサ球菌のそれは13-22%と多く認められた。その多くは時間外受診例で,急速に病態の進行する劇症型に近いことが明らかにされた。死亡例の平均入院日数は4日,入院時の血液検査値は救命例に比して明らかに異常値であった。特に,それらの60-80%が何らかの基礎疾患を有する成人例であることが明らかにされた。基礎研究:劇症型由来株では,制御系遺伝子の変異により,病原性に関わる各種産生物の産生が亢進していることが明らかにされた。動物実験においては,糖尿病モデルマウスではGGSの病原性が高まっていることを明らかにし,ヒト上皮細胞のレセプターであるCD46組み換えマウスを用いたGASの病態解析では,ヒトの劇症型感染に酷似した病態形成が確認された。基礎では,今後その発現機構の解明をさらに進める。
結論
劇症型感染に至る背景には,菌の病原性因子の産生性亢進に加え,宿主側のリスクファクターも大きく関与していることが明らかにされた。劇症・重症感染症の発生予防と救命に向け,医療従事者と国民双方の啓蒙が必要と結論される。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
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