臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200726026A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究
課題番号
H18-新興-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森 康子(独立行政法人医薬基盤研究所 基盤研究部感染制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 井上直樹(国立感染症研究所)
  • 吉川哲史(藤田保健衛生大学)
  • 長谷川秀樹(国立感染症研究所)
  • 近藤一博(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 水口裕之(医薬基盤研究所)
  • 藤原成悦(国立生育医療センター)
  • 白木公康(富山大学大学院医学薬学研究部)
  • 末松佐知子(医薬基盤研究所)
  • 羽田敦子(財団法人田附興風会医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
63,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生する重篤なヘルペスウイルス感染症の病態解明を行い、ウイルス再活性化の早期診断、予防および治療法開発のための基盤を確立することを目的とする。
研究方法
当該年度においては、薬剤耐性ウイルス(HCMV)の耐性機構解明と抗ウイルス剤の検索(CMV, VZV)を行う。再活性化および病態に関与する因子の同定と解析(HSV, HHV-6,HCMV, EBV)を行う。ウイルス再活性化時における診断法確立のための細胞性、液性免疫能の評価基準を作成する(VZV, EBV)。
結果と考察
IFN-gamma ELISPOT 法によるVZV抗原特異的な細胞性免疫能の測定方法を確立した。HHV-6感染動態およびウイルス伝播機構の解析を行った。5600種類のランダム化合物ライブラリーから、VZV及びCMV の感染初期過程を阻害する新規抗ウイルス薬候補をそれぞれ5種類と3種類同定した。キナーゼ阻害剤roscovitineがVZVの感染初期過程を阻害するのに対して、CMVの増殖阻害には有効でなかった。一方、別のキナーゼ阻害剤であるolomoucineIIがCMVに有効であった。造血幹細胞移植後のHHV-6再活性化に、TNF-α、IL-6といった炎症性サイトカインが重要な役割を演じていることが明らかとなった。臍帯血造血幹細胞を移植しヒト免疫系を再構築したマウスにEBV感染が成立し、EBV関連リンパ増殖性疾患に類似したリンパ腫が生じることが示された。 2例の骨髄移植患者の難治性単純ヘルペスウイルス感染症とサイトメガロウイルス感染症患者から、それぞれアシクロビルとガンシクロビル耐性ウイルスを得て、それらの抗ウイルス薬感受性、遺伝子変異の同定とウイルス学的検討を行った。日本では使えないが、海外では使える抗ウイルス薬の治療上の有効性必要性が明らかになった。 悪性腫瘍に伴った免疫低下のモデル動物として成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)のモデル動物(HTLV-1のtax遺伝子がT細胞特異的に発現するトランスジェニックマウス)を感染実験用に増やした。標的細胞に対する高感受性アデノウイルスベクターの確立およびshRNA発現カセットを組み込んだプラスミドの作製を行った。ATLLモデルマウスにおける免疫状態を解析した。
結論
本年度の研究によって臓器移植や悪性腫瘍に伴って発生する致死的なウイルス感染症の予防法や治療法の開発、さらにウイルス感染症の遷延化、重篤化の抑制また発症予防に繋げるための研究基盤は推進した。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-