インフルエンザ脳症の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200726019A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ脳症の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断方法の確立に関する研究
課題番号
H18-新興-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村祐輔(東京大学医科学研究所)
  • 岡部信彦(国立感染研究所)
  • 田代眞人(国立感染研究所)
  • 横田俊平(横浜市立大学大学院)
  • 山口清次(島根大学医学部)
  • 布井博幸(宮崎大学医学部)
  • 水口雅(東京大学大学院)
  • 市山高志(山口大学医学部)
  • 田中輝幸(東京大学大学院)
  • 伊藤嘉規(名古屋大学医学部附属病院)
  • 長谷川秀樹(国立感染研究所)
  • 浅井清文(名古屋市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、インフルエンザ脳症発症に関与する宿主側の素因を明らかにするとともに、その病態を解析し、有効な治療法及び発症前診断に基づく予防法の開発を目指すものである。
研究方法
1.発症に関与する遺伝子多型の解明、2.インフルエンザ脳症における先天性代謝異常症の関与(特にカルニチン代謝異常について)、3.インフルエンザ脳症における血液脳関門及び神経細胞障害のメカニズム(特に高サイトカイン血症とNSAIDsの神経細胞障害における相互作用について)、4.蓄積したエビデンスに基づくインフルエンザ脳症ガイドラインの改訂の準備のため評価委員会を組織し、検討を開始した。
結果と考察
1.いくつかのSNPsについて宿主側の異常が示唆されたが、決定的なものは見つかっていない。2.インフルエンザ脳症23例とインフルエンザ以外の急性脳症19例で、急性期の血清中アシルカルニチンを比較した。急性期の遊離カルニチンの値はインフルエンザ脳症群で有意に低値を示した。しかし、明らかな先天性代謝異常症ではなかった。3.ラット培養アストロサイトに炎症性サイトカインとNSAIDsの一つであるジクロフェナクNaを作用させると、iNOS mRNAと同タンパクの強い発現増強を認め、神経障害性を示した。これは、インフルエンザ脳症においてNSAIDsが予後を悪化させるという本研究班の報告を実験的に支持する非常に重要な結果である。
結論
特に先天性代謝異常症の関与の有無(明らかな関連は認められなかった)、及びNSAIDsがインフルエンザ脳症の予後の悪化に関与するという本研究班の従来の結果をin vitroで確認できたことの意義は、非常に大きいと思われる。今後、宿主側の発症に関与する因子(SNPsなど)について研究を継続していく予定である。また、2005年厚生労働省研究班によってインフルエンザ脳症ガイドラインが作られ、現在臨床の現場で広く普及しているが、その後多くのエビデンスの蓄積によりガイドラインの改訂が必要な状況になりつつあり、そのための準備を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2016-07-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)