インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究

文献情報

文献番号
200726010A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究
課題番号
H17-新興-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • TIMOTHY M UYEKI(Centers for Disease Control and Prebention)
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 秦 靖枝(NPO法人おおぞら、茨城県立医療大学)
  • 山口 直人(東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 小島原 典子(東京女子医科大学医学部衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 加藤 達夫(国立成育医療センター)
  • 鈴木 幹三(名古屋市緑保健所)
  • 林 嘉光(名古屋市厚生院第1診療科)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 入江 伸(医療法人相生会九州臨床薬理クリニック)
  • 伊藤 雄平(久留米大学医療センター小児科)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学看護学部)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
29,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分析疫学の専門家を中心に、臨床家、医療経済学者、微生物学者、市民団体代表、行政担当者などからなる研究班を組織し、インフルエンザワクチンの有効性、免疫原性、費用対効果、社会認容性などについて調査研究する。また、それらの手法を応用して、他のワクチンについても検討する。
研究方法
①分析疫学:異なる対象集団でワクチンの有効性、免疫原性、医療費低減効果を検討する。
②応用調査:文献調査や情報整理を行い、参考資料や啓発資料の形にまとめる。
③適応評価:地域住民、施設入所者、乳幼児の保護者などを対象に、接種制度の適確性、認容性、などを調査する。
④顧問クループ:専門知識を提供するため、呼吸器内科、小児科、ウイルス学、老人医療、公衆衛生の専門家からなる顧問グループを組織する。
結果と考察
主要な結果は以下の通り。
①異なる調査で有効性を支持する結果を得た(保育園児OR=0.24;小学児童OR=0.56;地域在住高齢者HR=0.42;長期療養施設入所高齢者OR=0.54)。一方、標本数、対象集団、結果指標などによっては、有意な有効性を検出できない例もあった。
②長期療養施設入所高齢者でワクチンの費用効果を認めた(ILI罹患のために付加的に要した1人当たり平均超過医療費:接種者2,317円、非接種者5,250円)。
③0-3歳児に欧米の規定量(3歳未満0.25mL、3歳0.5mL)を接種した。0歳児と1歳児で抗体応答は改善したが、接種後HI価は2歳児と3歳児より低かった。
④重症心身障害児・者、経管栄養高齢患者、免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者の何れにおいても、免疫原性は良好であった。
⑤高齢者および免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者で、肺炎球菌ワクチンへの抗体応答は良好であった。高齢者では2年後に一部の莢膜型で抗体が有意に低下した。
⑥米国予防接種諮問委員会勧告(2007)を翻訳し、(財)日本公衆衛生協会から出版した。
⑦肺炎球菌ワクチン接種の公費補助に関する自治体調査では、対象者は主に「65歳以上」、1接種あたりの「平均補助額」は3,270円、「平均自己負担額」は4,569円であった。
結論
①特性が異なる集団を対象に、異なる手法によるワクチン有効性研究を蓄積していく必要がある。
②有病状態にある高齢者へのワクチン接種は、1人当たり平均超過医療費を約3,000円減少させる。
③若年小児に対しては、欧米と同量接種(3歳未満0.25mL、3歳以上0.5mL)を真剣に検討すべきである。
④肺炎球菌ワクチン接種を広汎に導入する場合は、再接種の妥当性と必要性を検討すべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200726010B
報告書区分
総合
研究課題名
インフルエンザをはじめとした、各種の予防接種の政策評価に関する分析疫学研究
課題番号
H17-新興-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • UYEKI,TIMOTHY M.(CENTER DISSEASE CONTROL AND PREVENTION )
  • 森 満(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 秦 靖枝(NPO法人おおぞら、茨城県立医療大学)
  • 山口 直人(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 小島原 典子(東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第2講座)
  • 中島 一敏(WHO)
  • 加藤 達夫(聖マリアンナ医科大学小児科学)
  • 鈴木 幹三(名古屋市緑保健所)
  • 林 嘉光(名古屋市厚生院)
  • 越田 理恵(金沢市福祉健康局健康推進部)
  • 小笹 晃太郎(京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学)
  • 藤枝 恵(久留米大学医学部精神神経科)
  • 下内 昭(大阪市保健所)
  • 吉田 英樹(大阪市保健所)
  • 加瀬 哲男(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 入江 伸(医療法人相生会九州臨床薬理クリニック)
  • 伊藤 雄平(久留米大学医療センター小児科)
  • 鷲尾 昌一(聖マリア学院大学看護学部)
  • 井手 三郎(聖マリア学院大学)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザワクチンの有効性、免疫原性、費用対効果、社会認容性などを研究する(一部、肺炎球菌ワクチンも)。
研究方法
分析疫学の専門家、臨床家、医療経済学者、微生物学者、市民団体代表、行政担当者などが、異なる対象集団で、独自にまたは共同で調査研究する。
結果と考察
①異なる調査で有効性を支持する結果を得た(保育園児OR=0.24;乳幼児OR=0.6;小学児童OR=0.56;地域在住高齢者OR=0.55、HR=0.42;在宅要介護高齢者OR=0.52;長期療養施設入所高齢者OR=0.54)。標本数、対象集団、結果指標などにより統計学的に有意な有効性を検出できない例がある。
②長期療養施設入所高齢者でワクチンの費用効果を認めた(ILI罹患による1人当たり平均超過医療費:接種者2,317円、非接種者5,250円)。
③わが国の規定量接種(1歳未満0.1mL、1?3歳0.2mL)による抗体応答は0歳児で低い。1歳児は0歳児より高いが、接種量が等しい2・3歳児より低い。
④欧米の規定量接種(3歳未満0.25mL、3歳0.5mL)により、抗体応答は0歳児と1歳児で改善したが、接種後HI価は2歳児と3歳児より低かった。
⑤重症心身障害児・者、経管栄養高齢患者、免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者の何れにおいても、免疫原性は良好であった。
⑥米国予防接種諮問委員会勧告(2005-07)の3年分を翻訳し、各々、(財)日本公衆衛生協会から出版した。
⑦乳幼児において、「かかりつけ医の接種勧奨」は接種率を上げ、「母親がパート勤務(vs.専業主婦)」は低下させる。
⑧インフルエンザワクチン接種の公費補助の状況は、平均して、全体費用4,163円、補助額2,960円、自己負担額1,131円であった。
⑨高齢者および免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者で、肺炎球菌ワクチンへの抗体応答は良好であった。高齢者では2年後に一部の莢膜型で抗体が有意に低下した。
⑩肺炎球菌ワクチン接種の公費補助に関する自治体調査では、対象者は主に65歳以上、1接種あたりの平均補助額は3,270円、自己負担額は4,569円であった。
結論
①特性が異なる集団を対象に、異なる手法によるワクチン有効性研究を蓄積していく必要がある。
②有病状態にある高齢者へのワクチン接種は、1人当たり平均超過医療費を約3,000円減少させる。
③0・1歳児では抗体応答が低い。若年小児に対しては、欧米と同量接種(3歳未満0.25mL、3歳以上0.5mL)を真剣に検討すべきである。
④肺炎球菌ワクチン接種を広汎に導入する場合は、再接種の妥当性と必要性を検討すべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-05-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200726010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
①異なる調査で有効性を検出(RR:保育園児0.24;乳幼児0.6;小学児童0.56;地域高齢者0.55、0.42;在宅要介護高齢者0.52;施設入所高齢者0.54)。対象集団、結果指標などにより有効性を検出できない例があった。
②わが国の規定量接種(1歳未満0.1、1?3歳0.2mL)による抗体応答は0歳児で低い。1歳児は0歳児より高いが、接種量が等しい2・3歳児より低い。
③欧米の規定量接種(3歳未満0.25、3歳0.5mL)により、抗体応答は0・1歳児で改善したが、2・3歳児より低い。
臨床的観点からの成果
①重症心身障害児・者の抗体応答は良好であった。また、高齢経管栄養患者の抗体応答は経口摂取者と同等であった。経管栄養患者に対してシスチン/テアニン投与を行っても更なる抗体上昇は認めなかった
②免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者において、2株以上のワクチン株に対し接種後HI価が40倍以上を示したものは76%であり、抗体応答は良好であった。
③高齢者および免疫抑制剤投与中の関節リウマチ患者で、肺炎球菌ワクチンに対する抗体応答は良好であった。高齢者では2年後に一部の莢膜型で抗体が有意に低下した。
ガイドライン等の開発
①米国予防接種諮問委員会勧告(2005-07)の3年分を翻訳し、各々(財)日本公衆衛生協会から出版した。
 本書は、インフルエンザワクチン無効論に対し、国の予防接種政策の妥当性を主張する際の、科学的論拠のデータベースとして活用されている。
②インフルエンザワクチンの有効性、免疫原性、副反応、医療経済に関する主要文献65編を要約し、抄訳集を2冊作成配布した。
③近年、諸外国でインフルエンザワクチン接種の対象と位置づけられた「神経・筋症状を呈する基礎疾患」につき、論拠と解釈を報告書中に提示した。
その他行政的観点からの成果
①長期療養施設入所高齢者でワクチンの費用対効果を認めた(ILI罹患による1人当たり平均超過医療費:接種者2,317円、非接種者5,250円)。
②接種の公費補助の状況は、平均して、全体費用4,163円、補助額2,960円、自己負担額1,131円であり、国の政策は費用効果的であることを示した。
③乳幼児では、「かかりつけ医の接種勧奨」が接種率向上の主要因であるという、具体的接種推進方策を明らかにした。
④肺炎球菌ワクチン接種を広汎に導入する場合は、再接種の妥当性と必要性を検討すべき事を提示した。
その他のインパクト
①第9回日本ワクチン学会学術集会(2005.10.15-16、大阪)で、本研究班員によるシンポジウム「インフルエンザワクチン」を開催。
座長:廣田良夫、加地正郎
演者:廣田良夫、森満、小笹晃太郎、福島若葉、鷲尾昌一、原めぐみ、藤枝恵
②第16回日本疫学会学術総会(2006.1.23-24、名古屋)で、本研究班員によるシンポジウム「インフルエンザ」を開催。
座長:廣田良夫
演者:葛西健、廣田良夫、原めぐみ、藤枝恵
③乳幼児における免疫原性試験の結果が「西日本新聞(2007.2.17)」に掲載。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujieda M, Maeda A, Kondo K et al.
Influenza vaccine effectiveness and confounding factors among young children.
Vaccine  (2008)
原著論文2
Hirota Y and Kaji M.
History of influenza vaccination program in Japan: the prologue to symposium.
Vaccine  (2008)
原著論文3
Hirota Y, Fukushima W, Fujieda M et al.
Essentials in accessing influenza vaccine efficacy: in relation to the studies improperly performed in Japan.
Vaccine  (2008)
原著論文4
Hirota Y.
Ecological fallacy and skepticism about influenza vaccine efficacy in Japan: The Maebashi Study.
Vaccine  (2008)
原著論文5
Fukushima W, Hayashi Y, Mizuno Y et al.
Selection bias in evaluating of influenza vaccine effectiveness: a lesson from an observational study of elderly nursing home residents.
Vaccine  (2008)
原著論文6
星淑玲、近藤正英、大久保一郎.
単純無作為抽出法を用いた高齢者インフルエンザ予防接種の費用・接種率の調査及び其の研究デザインの有用性
日本公衆衛生雑誌 , 55 (1) , 19-29  (2008)
原著論文7
Kojimahara N, Maeda A, Kase T et al.
Cross-reactivity of Influenza A(H3N2) hemagglutination-inhibition antibodies induced by an inactivated influenza vaccine.
Vaccine , 24 , 5966-5969  (2006)
原著論文8
入江伸、藤枝恵、伊藤一弥 他
4歳未満児における不活化インフルエンザワクチンに対する免疫応答
感染症学雑誌 , 81 (3) , 284-290  (2007)
原著論文9
鷲尾昌一、大浦麻絵、森 満.
肺炎球菌ワクチンの公費補助を行っている全国の自治体担当者に対する聞き取り調査.
臨牀と研究 , 83 , 720-723  (2006)
原著論文10
鷲尾昌一、村上智彦、大浦麻絵 他
インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン-予防医学の観点から-.
臨牀と研究 , 83 (6) , 875-878  (2006)
原著論文11
高山直子、鷲尾昌一、井手三郎 他
地域在住高齢者を対象としたインフルエンザワクチン接種率向上を図る講演活動の経験.
日本老年看護学会雑誌  , 12 , 117-122  (2007)
原著論文12
高山直子、鷲尾昌一、井手三郎 他
地域在住高齢者のインフルエンザ予防ワクチン接種状況と接種行動に与える要因.
臨牀と研究 , 84 , 1309-1402  (2007)
原著論文13
高山直子、鷲尾昌一、今村桃子 他
地域在住高齢者のインフルエンザ予防ワクチン接種状況と接種行動に与える要因.
臨牀と研究 , 85 (2) , 281-322  (2008)
原著論文14
Hara M, Sakamoto T, Tanaka K.
Effectiveness of influenza Vaccination in preventing influenza-like illness among community-dwelling elderly: population-based cohort study in Japan.
Vaccine , 24 , 5546-5551  (2006)
原著論文15
Hara M, Sakamoto T, Tanaka K.
Influenza vaccine effectiveness among elderly persons living in the community during the 2003-2004 season.
Vaccine  (2008)
原著論文16
Kobayashi K, Washio M, Sakauchi F et al.
Efficacy of influenza vaccine in reducinghospital admissions among elderly nursing home residents in winter : the Hokkaido Influenza Study.
International medical Journal , 12 (2) , 89-92  (2005)
原著論文17
Hoshi SL, Kondo M, Honda Y et al.
Cost-effectiveness analysis of influenza vaccination for people aged 65 and over in Japan. 
Vaccine , 29 , 6511-6521  (2007)
原著論文18
Ozasa K, Kawahito Y, Doi T, Watanabe Y, Washio M, Mori M, Kase T, Maeda A, Hirota Y.
Retrospective assessment of influenza vaccine effectiveness among the non-institutionalized elderly population in Japan.
Vaccine , 24 (14) , 2537-2543  (2006)
原著論文19
林 嘉光、鈴木幹三、利根川 賢
高齢者施設入所者のインフルエンザワクチン接種に関する調査.
感染症学雑誌 , 81 (4) , 408-413  (2007)
原著論文20
井手三郎、児玉寛子、高山直子 他
施設入所高齢者におけるインフルエンザワクチンの有効性および医療費削減効果の総合評価(予備解析結果)
厚生の指標 , 53 (8) , 1-5  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-