効果的な結核対策(定期健診やBCGに関する費用対効果分析等)に関する研究

文献情報

文献番号
200726006A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な結核対策(定期健診やBCGに関する費用対効果分析等)に関する研究
課題番号
H17-新興-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克(財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 下内 昭(大阪市健康福祉局)
  • 豊田 恵美子(独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器科)
  • 大森 正子(財団法人結核予防会結核研究所研究部)
  • 伊藤 邦彦(財団法人結核予防会結核研究所研究部)
  • 吉山 崇(財団法人結核予防会複十字病院,第一診療部)
  • 加藤 誠也(財団法人結核予防会結核研究所)
  • 阿彦 忠之(山形県健康福祉部、山形県衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新感染症法のもとで国及び地方公共団体が取り組むべき結核対策の課題や具体的な方策を明らかにし、長期的な視点で、効果的な対策を進めるための方策を示す。
研究方法
文献的考察、先進諸外国との比較や現地視察、発生動向調査データの分析、算定モデルによる解析、アンケート調査、結核菌の分子疫学的解析、ワークショップなどの方法を用いて分担研究者が各テーマに取り組み、主任研究者が全体をまとめた。
結果と考察
患者発見」では、日常診療での早期発見の必要が示された。最も有効な接触者への健診のため「接触者健診の手引き」を作成した。「医療提供」では、①治療の質の確保、②治療に非協力的患者への対処、③治療の場に関する検討をし、①結核診療テキストの完成と “結核医療の国際基準”の日本語版の作成、②治療中断要因の解明を行い、患者支援の具体策の方向性、強制的拘束下治療の必要性等法整備の必要を示した。③欧米諸国の入退院基準についての分析、モデル病床実態調査により、一般病棟における結核診療の可能性と問題点を示した。「入院治療」では、患者の高齢化、入院期間の短縮、病床数の減少の中で、現場の負担が大きいこと、スタッフを疲弊させず治療成績を維持する対策の必要を示した。「発生動向調査」では、感染症サーベイランスのシステム作りの基礎資料を提供した。日本版DOTSの運用をシステムの中で支援、接触者健診管理システムを導入した。「対策の評価」では、医療費が節約(潜在結核感染の治療、特にQFTを利用)、患者発生の予防に効果(住所不定者に対するDOTS)、発病予防に意味がある(BCG接種、管理検診、接触者へのQFT)を示した。菌量に応じた入院治療は感染を減らす上で有用である。自治体結核対策外部評価法を開発しその意義を検証した。「対策体制作り」では、欧米諸国の比較分析をし、都市、外国人、ホームレス等の社会的弱者の結核が残る、中央の関与が必要、専門家の養成・活用、対策組織の集約化、ネットワークの構築が必要、新入国者、ホームレスへの健診、病原体サーベイランスの構築等の必要を示した。「都市の対策」では、分子疫学による問題発見、CR車の利用、NPOとの連携などの効果を示した。
結論
低まん延期を10年先に見据えて、幅の広い角度から、効果的な結核対策のあり方を探った。改正感染症法下で、より科学的で対費用効果の高い介入や方策に関して新たな提言を出した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200726006B
報告書区分
総合
研究課題名
効果的な結核対策(定期健診やBCGに関する費用対効果分析等)に関する研究
課題番号
H17-新興-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克(財団法人結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 阿彦 忠之(山形県健康福祉部、山形県衛生研究所)
  • 伊藤 邦彦(財団法人結核予防会結核研究所研究部)
  • 豊田 恵美子(独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器科)
  • 大森 正子(財団法人結核予防会結核研究所研究部)
  • 吉山 崇(財団法人結核予防会複十字病院、第一診療部)
  • 加藤 誠也(財団法人結核予防会結核研究所)
  • 下内 昭(大阪市健康福祉局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、改正感染症法下で、効果的対策の実施の方法を明らかにするとともに、より長期的な視点で、結核低まん延化に向けた効果的対策を進めるための諸方策の根拠を提供することを目的とした。
研究方法
患者発見、医療提供、③入院治療、④発生動向調査、⑤対策評価、⑥対策体制づくり、⑦都市特定集団への対策、を個別課題とし、文献的考察、先進諸国とのシステム比較や現地視察、発生動向調査データの分析、算定モデル作成による理論的な解析、アンケート調査、登録患者の再調査、結核菌の分子疫学的解析、ワークショップ、現地視察、などの方法を用いた。
結果と考察
患者発見では、低まん延地区山形県の新患者の詳細分析により、他疾患にて受療中の発病、診断の遅れが多く、高危険因子を配慮した日常診療での早期発見の必要が示された。前年度の「接触者健診の手引き」を改訂し、質疑応答集を作成した。医療提供では、結核診療テキストを完成、治療中断者全国調査により今後の日本における患者支援の具体策を示し、また強制的拘束下治療の必要等法整備の必要性を明らかにした。入院治療では、入院期間の短縮とともに、経営的要因から結核病床数が激減しつつあること、高齢患者の増加による結核治療の複雑化、困難化が起こっていることなど必要な入院医療の確保のの必要性を指摘した。発生動向調査では、国の感染症サーベイランスシステムのあり方を検討し、特に潜在性結核感染症の登録を確実にし、接触者健診情報の入力や評価を可能にした。対策の評価では、自治体結核対策レビューの方法を開発し、大阪市と山形県で試行、実施可能な項目を抽出した。対策体制作りでは、低まん延国のシステム比較の一環として、ドイツの分析を行い、中央政府の緩やかな機能や呼吸器専門医の役割、患者登録と接触者健診を中心とした保健所の機能など米、英と異なるシステムを観察した。専門家の養成としては、結核研究所での指導者養成研修の修了生の分析により、その意義やあり方の課題を明らかにした。都市特定集団の対策では、高危険群あいりん地域居住者の高い結核有病率に対し、CR車利用の意義、シェルターへの応用の必要性を示した。また分子疫学的調査にVNTR法活用の意義も示した。
結論
最終年度として、今後の結核対策の効果的な方策を課題別に検討し、「接触者健診の手びき」や「診療テキスト」の出版を始め、いくつかの具体的方策を開発した。NPOの活用、当事者の参加によるパンフレットづくりなども試行した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200726006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は新感染症法下及び低まん延時代を迎えるに際し、国および地方自治体が取り組むべき結核対策の具体的方策を示す行政的研究である。多岐にわたる課題のそれぞれで成果を上げた。患者発見では、最も効果的な接触者健診のあり方を確立、医療提供では、これからの医療の場、質の確保の議論をした。発生動向調査では、感染症サーベイランスシステムの結核部分を作成、対策評価では諸方策の対費用効果分析、自治体対策評価の開発、対策体制作りでは欧米諸国との制度比較分析を実施、都市の対策では民間との連携等の意義を提示した。
臨床的観点からの成果
本研究の基本は、行政研究であるが、臨床的な側面では、「接触者健診の手引き(阿彦・石川担当)」および、「結核診療ガイドブック(伊藤担当)」、「国際結核治療の基準(ISTC)の日本語訳(伊藤担当)」は実地診療に直接役立つ成果である。
ガイドライン等の開発
「接触者健診の手引き(阿彦・石川担当)」、「「結核診療ガイドブック(伊藤担当)」、「自治体結核対策外部評価方法(吉山担当)」が作成された。
その他行政的観点からの成果
本研究の基本は、行政研究で、各分野で、直接・間接行政への貢献がされた。接触者健診の手引きは、国の方針として推薦されている。入退院基準の作成をはじめとして感染症法下の様々な法令作りの中で生かされた。国の感染症サーベイランス体制の確立の中で、結核発生動向に関する情報に関するシステム構築に貢献した。自治体の対策評価のあり方の開発は、今後の重要な課題である。都市結核の研究は大阪市の保健政策の中で実施され、市の政策の方向付けに貢献した。
その他のインパクト
本研究の一環で行われた結核のしおり作りは、路上生活体験結核患者によるパンフレットで、結核病学会でも発表され、当事者参加による対策のあり方を探る貴重な刺激となっている。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
伊藤邦彦、豊田美恵子
欧米における結核患者の入退院基準および本邦との比較
結核 , 81 , 721-730  (2006)
原著論文2
三上礼子、豊田恵美子、石塚直樹、他
結核病棟退院基準の変更が入院期間に及ぼす影響
結核 , 80 , 631-636  (2005)
原著論文3
森野英理子、浅川誉、豊田恵美子、他
結核病棟退院基準の変更と退院後DOTが治療成績に与える影響
結核 , 81 , 715-720  (2006)
原著論文4
布施閲、竹田雄一郎、豊田恵美子、他
高齢者肺結核において治療完遂不能を予測する因子についての検討
結核 , 82 , 803-807  (2007)
原著論文5
星野斉之、大森正子、内村和弘、他
新たな学校結核健診導入による小児結核発見への影響
結核 , 80 , 475-479  (2005)
原著論文6
大森正子、和田雅子、御手洗聡、他
老人保健施設入所者の結核対策
結核 , 81 , 71-77  (2006)
原著論文7
大森正子、星野斉之、山内祐子、他
職場の結核の疫学的動向ー看護士の結核発病リスクの
結核 , 82 , 85-93  (2007)
原著論文8
星野斉之、大森正子、内村和広、他
就業状況別結核罹患率の推定と背景の検討
結核 , 82 (9) , 685-695  (2007)
原著論文9
木下節子、大森正子、塚本和秀、他
駅周辺の不特定多数利用施設を中心とした結核感染ー都市結核問題の観点よりー
結核 , 82 (10) , 749-757  (2007)
原著論文10
星野斉之、大森正子、吉山崇、他
結核治療成績の新コホート判定方式に影響を与える因子の検討ー病院入院患者のコホート分析からー
結核 , 82 (12) , 897-901  (2007)
原著論文11
大森正子、吉山崇、石川信克
日本の結核蔓延に関する将来予測
結核 , 83 (4) , 365-377  (2008)
原著論文12
長嶺路子、大森正子、永井惠、他
新宿区内の全結核患者に対するIS6110RFLP分析の実施と評価ー接触者健診への応用の可能性についてー
結核 , 83 (4) , 379-386  (2008)
原著論文13
加藤誠也
新たな結核対策の体制づくり
結核 , 82 , 954-956  (2007)
原著論文14
下内昭、甲田伸一、落合裕隆
大阪市における高齢者施設結核感染防止対策の現況
結核 , 82 (2) , 179-184  (2007)
原著論文15
下内昭、廣田理、甲田伸一、他
大阪市における看護師結核患者発症状況の検討
結核 , 82 (9) , 697-703  (2007)
原著論文16
中田信昭、祷史明、中村夫左央、他
結核高罹患地域における医療施設外来受診者に対する結核検診の意義の検討
結核 , 82 (5) , 455-458  (2007)
原著論文17
中川環、下内昭
大阪市の結核治療成功要因の分析によるDOTS事業の評価
結核 , 82 (10) , 765-769  (2007)
原著論文18
下内昭
大都市の結核対策 2.結核対策の動向と評価-大阪市の場合
結核 , 82 (11) , 867-869  (2007)
原著論文19
Sekiguchi J, Fujino T, Araake M, et al.
Emergence of rifampin resistance in methicillin-Staphylococcus aureus in tuberculosis wards
J Infect Chemother , 55 , 47-50  (2006)
原著論文20
Ohmori M, Ozasa K, Mori T, et al.
Trends of Delays in Tuberculosis Case Finding in Japan and Associated Factors
Int. J. Tuberc Lung Dis , 9 (9) , 999-1005  (2005)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
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