文献情報
文献番号
199700358A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における広域搬送に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小濱 啓次(川崎医科大学救急医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 災害時支援対策総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
災害時には、災害が大きければ大きいほど災害地内での医療機関の対応が困難になる。このことから、負傷者を災害地外に広域に搬送して治療することを考えなければならない。この研究では、このためにはどの様な手段、方策があるかを過去の災害を実地検証しながら検討し、今後の災害時における広域搬送に役立てることを目的とする。
研究方法
名古屋空港における航空機墜落事故、北海道における高速道路多重衝突事故を現地調査し、災害発生時に広域搬送が行われたのか、行われたとすればどのようにして行われたのか、今後同様な災害が発生した場合の対応はどうなっているかについて調査を行った。また広域搬送時の民間機の活用について、民間航空機の関係者、関係省庁に参加してもらい、その有用性について検討した。更に広域搬送における情報システムについても検討し、今後の災害時の具体的な対応策を考えた。
結果と考察
名古屋空港における航空機墜落事故は、現場での死者255名、負傷者16名(うち9名が病院収容後死亡)と負傷者の数が少なかったために搬送において大きな混乱はなかった。搬送はすべて救急車で行われ、ヘリコプターを用いての搬送は1件もなかった。北海道における高速道路多重衝突事故では負傷者108名、死者2名が発生し、重傷者は40km離れた札幌に救急車で搬送された。最も重症の1例については、高速道路上にヘリコプターが着陸し札幌に搬送した。
事故後、名古屋では愛知県の医療機関にヘリポートが多く設置され、今後大災害で多数の負傷者が発生した場合の対応を考えている。北海道では、消防も警察も次の災害ではヘリコプターを早期に高速道路上に着陸させ負傷者を札幌に搬送することを考えている。道路の管理者も原則として賛同していた。
民間機の災害時の運用に関しては、行政も民間も前向きであり、今後の発展が期待された。情報システムについては、今後情報のデータベースを同定し、マルチメディアによる表示を行って統合型の災害対応情報システムの作成が必要と思われた。
災害時の広域搬送には陸路、空路、海路を用いての方法がある。しかし、迅速に広域にということを考えると航空機、特にヘリコプターを用いての搬送が最善の策となる。このことから、広域搬送についての検討では、ヘリコプターを用いての搬送をどうするかということになるが、救急ヘリコプターが一機もないわが国の現状では、平時のヘリコプターを用いての搬送においてすら問題を生じている。このことは、災害時に対応するためにはまず、平時のヘリコプターを用いての搬送体制を何とかしなければならないということになる。さもなくば、阪神・淡路大震災の時と同様に、初期活動にヘリコプターが用いられないことになる。
名古屋空港における航空機墜落事故では死亡者が多く負傷者が少なかったために、負傷者のすべてが救急車で搬送されたが、もし多数の重症の負傷者が発生していたならば、多くの負傷者を広域にヘリコプターで搬送しなければならなかったと思われる。このことは関係者も認めているところである。このことから愛知県では医療機関にヘリポートを設置することを積極的に進めている。一方北海道における高速道路多重衝突事故では、重傷者はすべて札幌市に搬送されており、最後に残った重傷者は、高速道路上からヘリコプターで札幌に搬送されている。このことはわが国では画期的なことであって、最後の負傷者が実際にヘリコプターで搬送されるまで、誰も高速道路上からヘリコプターで負傷者を搬送できるとは思っていなかった。しかしこの後は消防も警察も道路管理者も、高速道路上の事故による負傷者は、ヘリコプターで搬送するのがいちばん良いと思っている。災害時にヘリコプターの運用が必要ならば、平時からのヘリコプターの運用が必要である。しかしわが国には前にも述べたように救急専用のヘリコプターは一機もない。負傷者搬送用の公的なヘリコプターは防衛庁、消防署、警察署、海上保安庁などが有しているが、災害時にはこれらのヘリコプターは所属する省庁のために運用が必要になる。医療に関係する厚生省には一機もヘリコプターはないので、負傷者搬送用のヘリコプターが必要な場合は、民間機の利用が考えられる。このことに関して行政も民間も前向きであることから今後の進展が期待される。情報システムに関しては、利用し易いデータベース作りとネットワーク作りが必要であり、今後更なる検討が必要と思われる。
事故後、名古屋では愛知県の医療機関にヘリポートが多く設置され、今後大災害で多数の負傷者が発生した場合の対応を考えている。北海道では、消防も警察も次の災害ではヘリコプターを早期に高速道路上に着陸させ負傷者を札幌に搬送することを考えている。道路の管理者も原則として賛同していた。
民間機の災害時の運用に関しては、行政も民間も前向きであり、今後の発展が期待された。情報システムについては、今後情報のデータベースを同定し、マルチメディアによる表示を行って統合型の災害対応情報システムの作成が必要と思われた。
災害時の広域搬送には陸路、空路、海路を用いての方法がある。しかし、迅速に広域にということを考えると航空機、特にヘリコプターを用いての搬送が最善の策となる。このことから、広域搬送についての検討では、ヘリコプターを用いての搬送をどうするかということになるが、救急ヘリコプターが一機もないわが国の現状では、平時のヘリコプターを用いての搬送においてすら問題を生じている。このことは、災害時に対応するためにはまず、平時のヘリコプターを用いての搬送体制を何とかしなければならないということになる。さもなくば、阪神・淡路大震災の時と同様に、初期活動にヘリコプターが用いられないことになる。
名古屋空港における航空機墜落事故では死亡者が多く負傷者が少なかったために、負傷者のすべてが救急車で搬送されたが、もし多数の重症の負傷者が発生していたならば、多くの負傷者を広域にヘリコプターで搬送しなければならなかったと思われる。このことは関係者も認めているところである。このことから愛知県では医療機関にヘリポートを設置することを積極的に進めている。一方北海道における高速道路多重衝突事故では、重傷者はすべて札幌市に搬送されており、最後に残った重傷者は、高速道路上からヘリコプターで札幌に搬送されている。このことはわが国では画期的なことであって、最後の負傷者が実際にヘリコプターで搬送されるまで、誰も高速道路上からヘリコプターで負傷者を搬送できるとは思っていなかった。しかしこの後は消防も警察も道路管理者も、高速道路上の事故による負傷者は、ヘリコプターで搬送するのがいちばん良いと思っている。災害時にヘリコプターの運用が必要ならば、平時からのヘリコプターの運用が必要である。しかしわが国には前にも述べたように救急専用のヘリコプターは一機もない。負傷者搬送用の公的なヘリコプターは防衛庁、消防署、警察署、海上保安庁などが有しているが、災害時にはこれらのヘリコプターは所属する省庁のために運用が必要になる。医療に関係する厚生省には一機もヘリコプターはないので、負傷者搬送用のヘリコプターが必要な場合は、民間機の利用が考えられる。このことに関して行政も民間も前向きであることから今後の進展が期待される。情報システムに関しては、利用し易いデータベース作りとネットワーク作りが必要であり、今後更なる検討が必要と思われる。
結論
災害時における広域搬送につき過去の災害を中心に検討し、以下の結果を得た。1.災害時における広域搬送はヘリコプターを用いての搬送が基本である。2.災害が大きいほどヘリコプターによる搬送が必要になる。3.災害時にヘリコプターが適切に運用されるとヘリコプター搬送の必要性が認識される。4.災害時のヘリコプター運用を円滑に行うため、民間機の利用も視野に入れた方策が必要である。5.広域搬送を円滑に運用するために、統合型の災害対応情報システムが必要である。
公開日・更新日
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