角膜内皮機能不全に対する新しい治療方法の開発

文献情報

文献番号
200725016A
報告書区分
総括
研究課題名
角膜内皮機能不全に対する新しい治療方法の開発
課題番号
H18-感覚器-一般-007
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター視覚研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 東城 博雅(大阪大学大学院医学系研究科生化学分子生物学生命機能研究科細胞ネットワーク・生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 角膜内皮機能不全は角膜疾患のなかで最も失明に至る頻度が高く,角膜移植を待機する患者の過半数を占める疾患である。本研究は角膜内皮機能不全に対する新しい治療法として,薬物療法と培養角膜内皮細胞移植による手術治療の開発を行うことを目的とした。
研究方法
 角膜内皮機能不全の薬物療法の研究では、マウス培養角膜内皮細胞を用いて角膜内皮ポンプ機能の担い手であるNa-K ATPaseの活性が、デキサメサゾン、インスリン及びprotein kinase C(PKC)によってどのように制御されているかを検討した。角膜内皮細胞の培養方法、増殖制御に関する研究では、ヒト培養角膜内皮細胞を用い、増殖抑制に関わる因子としてTGF-β2の役割について検討を行った。また、角膜内皮の機能や増殖の制御に関与する脂質バイオマーカーを網羅的に解析するための高速液体クロマトグラフィー/質量分析システムの開発を行った。
結果と考察
 角膜内皮のNa-K ATPaseはデキサメサゾンとインスリンにより活性化された。ステロイドの作用は新たな酵素蛋白合成により、インスリンの作用はPKCを介し、Na-K ATPaseαサブユニットの脱リン酸化によることが示され、その作用はindomethacinやresorufinにより増強された。これらの薬剤の組み合わせによって水疱性角膜症を薬物で治療できる可能性があると考えられた。また、TGF-β2はヒト角膜内皮細胞の増殖に対して抑制的に働くが、遊走に対しては促進的に働くことが示された。TGF-β2によって角膜内皮の細胞増殖制御ができる可能性がある。カラムスイッチング3溶媒グラジエントHPLC/イオントラップMS法により角膜、涙液など微量試料中の脂質網羅的解析が可能となり、角膜内皮機能不全に関連する病態バイオマーカ検索が可能であると考えられた。
結論
 角膜内皮機能不全に対する新しい治療法として、角膜内皮機能を活性化させる薬物療法、角膜内皮細胞の増殖制御機構の解明による効率の良い角膜内皮細胞増殖法、角膜内皮細胞の機能制御に関与する脂質バイオマーカを網羅的に解析するための高速液体クロマトグラフィー/質量分析システムの開発という3つの観点からの研究を行った。これらの研究を更に進め、臨床応用に結びつけていくことで、提供眼不足に苦慮する本邦の角膜移植医療の現状を改善していくことを目標としたい。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
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