内外リンパ腔画像からみた内耳疾患の病態と局所療法

文献情報

文献番号
200725012A
報告書区分
総括
研究課題名
内外リンパ腔画像からみた内耳疾患の病態と局所療法
課題番号
H19-感覚器-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中島 務(名古屋大学大学院・医学系研究科耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 長縄 慎二(名古屋大学大学院・医学系研究科放射線科 )
  • 寺西 正明(名古屋大学大学院・医学系研究科耳鼻咽喉科 )
  • 杉浦 真(刈谷豊田総合病院耳鼻咽喉科)
  • 林 秀雄( 名古屋大学大学院・医学系研究科耳鼻咽喉科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
11,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
米国のメニエール病の診断基準は、死後、剖検で内リンパ水腫が確認されてCertainになると述べられている。内リンパ水腫の画像化が普及すると、メニエール病の診断基準を変えるくらいのインパクトがある。本研究では、臨床的に内リンパ水腫画像化の確立をめざす。ガドリニウム造影剤を鼓室に注入すると、造影剤は、正円窓をとおして内耳に入っていくが、その入り方は、最近、文献的に多く報告されるようになってきた鼓室内ステロイド注入療法や鼓室内ゲンタマイシン注入療法と関連が深い。これら内耳局所療法をどのように行っていけばよいか本研究において画像診断との関係で明らかにする。


研究方法
ガドリニウム造影剤を鼓室内に注入し1日後に3テスラMRIにて内耳画像を撮った。平成19年度末には、このような方法による内耳MRIが50例となった。内耳に入るガドリニウム濃度はどの位か、ガドリニウムを薄めた状態のモデル実験を行った。MRI画像の質を向上させるために平成19年度に3D-real inversion recovery (3D-real IR) というソフトを開発した。
結果と考察
3耳において鼓室内に投与したガドリニウムがまったく内耳に入らなかった。これら耳では、鼓室内ステロイド注入やゲンタマイシン注入は無効であると思われる。画像の評価から、内耳の外リンパガドリニウム濃度は、ガドリニウム造影剤原液の約5000倍薄まった濃度と推定した。
3D-real IRで、画像の質を格段とあげることができた。蝸牛の全回転における内リンパ腔サイズの評価が可能になった。また、3D-FLAIRでは、内リンパと蝸牛外側壁の区別がつかなかったが、3D-real IRでは、内外リンパ腔の区別の他、蝸牛外側壁との区別も可能になった。
結論
鼓室内に投与したガドリニウムは、正円窓経由で外リンパに入る。ガドリニウムが入らない内リンパとの間にコントラストができるのでMRIを用いて内リンパ腔サイズの評価が可能になった。種々の検討からこの方法は安全性が高い。鼓室内に投与した薬剤がどのように内耳に入り、どのように分布するのかを知ることは、鼓室内薬物注入療法の検討に重要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-14
更新日
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