先天性難聴児の聴覚スクリーニングから就学後までの補聴器・人工内耳装用効果の総合追跡研究

文献情報

文献番号
200725007A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性難聴児の聴覚スクリーニングから就学後までの補聴器・人工内耳装用効果の総合追跡研究
課題番号
H18-感覚器-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部)
  • 伊藤 健(東京大学 医学部)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
  • 坂田 英明(埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科)
  • 神田 幸彦(神田耳鼻咽喉科entクリニック)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学 言語聴覚障害科)
  • 内山 勉(富士見台聴こえとことばの教室 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新生児聴覚スクリーニングは、先天性難聴児の早期発見早期教育が全出生児に対して必要なことを、就学後まで拡げた長期追跡研究により明らかにする。
研究方法
11)乳幼児期からの早期療育を受けた人工内耳装用児の療育成果の評価方法
対象は同一の難聴幼児通園施設で最大限聴覚を活用する総合的な療育を受けた難聴児のうち、早期療育・人工内耳群と人工内耳群、補聴器群の難聴児。
2)聴力40~60dBの中等度難聴児の療育効果の評価方法
適切な療育を受けた難聴児(療育群)は、総合的な療育を3歳より受けた難聴児。適切な療育を受けられなかった難聴児群(未療育群)は、5歳8ヶ月以降に難聴が発見された先天性難聴児。
以上の1)と2)での言語能力はWPPSIを用い、言語性IQと動作性IQを比較した。
3)先天性難聴児の中枢聴覚伝導路の髄鞘化の分析と評価方法
先天性難聴児で補聴効果のない、あるいは乏しい6例の脳のMRIを用い、中枢聴覚伝導路の髄鞘化を健聴乳幼児100例のMRIの場合と比較した。
結果と考察
WPPSI動作性IQの平均値の比較について各群に有意な差はなく、WPPSI
知能検査言語性IQについては、療育群113(97~135)および未療育群72(45~83)で、明らかな有意差がみられ、適切な療育を受けた難聴児の言語性IQが明らかに高かった。先天性難聴児の中枢聴覚伝導路の脳の髄鞘化は健聴児の場合と同様であった。
乳幼児期に療育を開始し、2歳6ヶ月で人工内耳手術を受けた難聴児は、3歳以降に人工内耳を装用した難聴児や補聴器による早期療育を受けた難聴児より優位に言語力が高いことが示され,早期発見、早期人工内耳手術が言語力を身につけるには最適と考えられる。中等度難聴児は、適切な療育により小学校就学までに年齢相応の言語能力を習得できるが、適切な療育を受けなければ言語発達に明らかな遅れが生じることが示された。すなわち、早期補聴と療育が必要である。発達期の中枢聴覚伝導路は聴覚入力に依存せず回路網が形成されるので、先天性難聴児の脳基盤は出来上がっている。このことは早期人工内耳手術は脳にとって問題がないことを示唆している。
結論
難聴の見落としを避けるために、新生児聴覚スクリーニングテストがもっとも有効と考えられる。人工内耳は難聴児の9歳の壁を越えることが可能である。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-