内耳プロテオーム解析を応用した外リンパ瘻の新たな診断法の開発・治療指針の作成

文献情報

文献番号
200725002A
報告書区分
総括
研究課題名
内耳プロテオーム解析を応用した外リンパ瘻の新たな診断法の開発・治療指針の作成
課題番号
H17-感覚器-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
池園 哲郎(日本医科大学 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 淳(日本医科大学 第二生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は外リンパ瘻の確定診断法を開発して、早期に確定診断し、治癒率の向上をもたらすことにある。 
研究方法
 我々は内耳プロテオーム解析を行い、外リンパ瘻の生化学的確定診断マーカーCTPを発見し国内・国際特許出願した。
[1] 検査システムのクオリティーコントロール:ウェスタンブロット法による検査システムの至適条件を設定し、クオリティーコントロール(精度管理)を確立する。
[2] 外リンパ瘻診断の精度:CTP検出法による外リンパ瘻の診断精度を、STARD statementに準拠して評価する。
[3] 臨床症例の検討 1.頭部外傷性 2.中耳外傷性 3.特発性(いわゆる鼻かみ型)4. 小児変動性難聴 5. 医原性 6.真珠腫性中耳炎内耳瘻孔 7.慢性・遅発性外リンパ瘻
[4] POCT(Point of care testing;臨床の現場での検査)の開発。 
結果と考察
[1] 検査システムのクオリティーコントロール:標品(リコンビナント蛋白)の検出感度下限濃度a(0.27ng/ well)及びその1/2濃度bの点の2点を毎回検査サンプルと共に泳動し、精度管理した。
[2] 外リンパ瘻診断の精度:良好な診断精度を有すると評価された。
[3] 臨床症例の検討 前記分類に従って、臨床例の検討を行った。それぞれの疾患カテゴリーで、診断・治療両面にわたり新知見が得られた。
[4] POCT(Point of care testing;臨床の現場での検査)の開発が進んでいる。
結論
本検査は世界で初めて外リンパ瘻の生化学的確定診断を可能にするものであり、国内外の臨床家、基礎研究者から多くの注目を集めている。今後、本研究成果を広め、国内外でマルチセンタースタディーを行う予定である。外リンパ瘻は的確な診断で大きな治療効果が期待できる疾患である。耳鼻咽喉科・神経耳科の診断が患者のQOL、後遺症の有無を大きく左右する。本研究事業の成果を広く普及させることで大きな具体的な効果が望める。

公開日・更新日

公開日
2010-08-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200725002B
報告書区分
総合
研究課題名
内耳プロテオーム解析を応用した外リンパ瘻の新たな診断法の開発・治療指針の作成
課題番号
H17-感覚器-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
池園 哲郎(日本医科大学 耳鼻咽喉科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 淳(日本医科大学 第二生化学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
外リンパ瘻は迅速に手術治療を行うことで劇的な治療効果が得られる。難聴・平衡障害の原因疾患「外リンパ瘻」の新たな確定診断法を開発して、早期に確定診断し、治癒率の向上をもたらすことが目的である。
研究方法
我々は内耳プロテオーム解析を行い、外リンパ瘻の生化学的確定診断マーカーCTPを発見し国内・国際特許出願した。
[1] 検査システムのクオリティーコントロール:ウェスタンブロット法による検査システムの至適条件を設定し、クオリティーコントロール(精度管理)を確立する。
[2] 外リンパ瘻診断の精度:CTP検出法による外リンパ瘻の診断精度を、STARD statementに準拠して評価する。
[3] 臨床症例の検討 1.頭部外傷性 2.中耳外傷性 3.特発性(いわゆる鼻かみ型)4. 小児変動性難聴 5. 医原性 6.真珠腫性中耳炎内耳瘻孔 7.慢性・遅発性外リンパ瘻
[4] POCT(Point of care testing;臨床の現場での検査)の開発.
結果と考察
[1] 検査システムのクオリティーコントロール:標品(リコンビナント蛋白)の検出感度下限濃度a(0.27ng/ well)及びその1/2濃度bの点の2点を毎回検査サンプルと共に泳動し、精度管理した。
[2] 外リンパ瘻診断の精度:良好な診断精度を有すると評価された。
[3] 臨床症例の検討 前記分類に従って、臨床例の検討を行った。それぞれの疾患カテゴリーで、診断・治療両面にわたり新知見が得られた。
[4] POCT(Point of care testing;臨床の現場での検査)の開発が進んでいる。
結論
総括 本検査は世界で初めて外リンパ瘻の生化学的確定診断を可能にするものであり、国内外の臨床家、基礎研究者から多くの注目を集めている。今後、本研究成果を広め、国内外でマルチセンタースタディーを行う予定である。外リンパ瘻は的確な診断で大きな治療効果が期待できる疾患である。耳鼻咽喉科・神経耳科の診断が患者のQOL、後遺症の有無を大きく左右する。本研究事業の成果を広く普及させることで大きな具体的な効果が望める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200725002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今まで不可能であった外リンパ瘻の確定診断が世界で初めて可能になり、その医学的意義は非常に高い。厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班が定めた外リンパ瘻診断基準に基づき診断された「特発性外リンパ瘻」症例からCTPが検出されたことで、従来その存在を疑問視する意見も根強かった特発性外リンパ瘻症例の存在を改めて生化学的に確定診断した。また、以前は難聴の発症機序が特定できなかった様々な症例からもCTPが検出され、その手術時期、手術適応の判断に大きく寄与する事ができる。
臨床的観点からの成果
今まで原因のはっきりしなかった外傷性難聴、小児の変動性感音難聴、突発性難聴、メニエール病などに外リンパ瘻が含まれている事を明らかにした。さらに、めまいのみで難聴が無い外リンパ瘻も存在し、今までの常識を覆す結果だった。さらに、耳管通気治療による医原性外リンパ瘻と思われる3症例(病歴上、通気直後から発症した症例であり2/3症例がCTP陽性)を経験した。これらの結果は、難聴診断治療のEBM確立に多大なる貢献をすると期待されている。
ガイドライン等の開発
 いままで主観的な判断に頼っていた外リンパ瘻診断を客観的に診断できればマルチセンタースタディーが可能になり、新たな診断・治療指針作成が可能になる。
その他行政的観点からの成果
外リンパ瘻は手術により完治が望める疾患である。本検査の普及により早期診断・治療が可能になり、治癒率が大きく改善し、保険医療の適正な運用をもたらす。後遺障害に悩む症例が減り、健康で労働可能な成人数を増加させる。
 難聴・めまい疾患の診断・治療のEBM確立に多大なる貢献をする。その結果、適切な医療が施行され無駄な投薬、通院、入院が減り、医療費の適正使用を推進する。
その他のインパクト
 週刊朝日(本誌) 名医が語る名医の条件2008、 週刊朝日(本誌) 名医の最新治療 2008
 週刊朝日MOOK 手術数でわかる良い病院2008、 読売新聞医療ルネッサンス 2006
 毎日ライフ2005、メディカルトリビューン2005、

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
インターネットHPによる

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Li L, Ikezono T, Watanabe A, et al
Expression of full-length Cochlin p63s is inner ear specific.
Auris Nasus Larynx , 32 (3) , 219-233  (2005)
原著論文2
Ikezono T, Shindo S, Ishizaki M, et al
Expression of cochlin in the vestibular organ of rats.
ORL , 67 (5) , 252-258  (2005)
原著論文3
Robertson NG, Cremers CW, Huygen PL, Ikezono T, et al
Cochlin immunostaining of inner ear pathologic deposits and proteomic analysis in DFNA9 deafness and vestibular dysfunction.
Hum Mol Genet , 15 (7) , 1071-1085  (2006)
原著論文4
Shindo S, Ikezono T, Ishizaki M et al
Spatiotemporal expression of cochlin in the inner ear of rats during postnatal development.
Neurosci Lett , 444 , 148-152  (2008)
原著論文5
Mizuta K, Ikezono T, Iwasaki S,et al
Ultrastructural co-localization of cochlin and type II collagen in the rat
semicircular canal.
Neurosci Lett , 434 , 148-152  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-