地域相談ネットワークによる障害者の権利擁護の可能性

文献情報

文献番号
200724031A
報告書区分
総括
研究課題名
地域相談ネットワークによる障害者の権利擁護の可能性
課題番号
H19-障害-若手-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 寿広(国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 憲司(社会福祉法人愛光・視覚障害者総合支援センターちば)
  • 佐藤 彰一(法政大学大学院法務研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者の権利擁護を目的とした地域相談ネットワークを構築する制度的枠組みを新たに導入した場合に、相談活動さらには地域社会全体に生じる変化について、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県作り条例」を施行した千葉県を実例として検証することを通して、地域の相談ネットワークを活用することにより障害者の権利擁護を実現する可能性について研究することを目的とした。
研究方法
堀口主任研究者は、千葉県内の機関3,308箇所をアンケート調査した。高梨分担研究者は、県単独事業として権利擁護活動を担う機関31箇所をアンケート調査した。佐藤分担研究者は、障害者に対する偏見や差別を扱った調査論文を研究し、アンケート調査の回答のうち、条例の認知度に関する回答を分析した。
結果と考察
堀口主任研究者のアンケート調査では1,281箇所の回答があった。平成18年度1年間でのべ約68万件の相談があり、そのうち障害者の権利擁護に関する相談は0.08%あった。約半数の機関が相談件数をのべ件数で計数しており、相談マニュアルを整備しているものは3割に満たなかった。相談件数と地域の都市化との関連を示唆する結果を得た。条例の施行前後で相談件数には統計的に有意な差を認めなかった。高梨分担研究者の実施したアンケート調査では25箇所の回答があった。平成18年度1年間に5万件以上の相談があり、障害者の権利擁護に関する相談は約1%あった。相談内容には障害種別に関連した特徴があったが、地域の他機関と連携して相談支援に当たっていた。二つの調査を合算すると、平成18年度の1年間の相談件数はのべ約73万件で、このうち障害者の権利擁護に関する相談は0.14%あった。佐藤分担研究者の文献研究では17件の調査のうち16件が精神障害者に対する差別を研究対象としていた。条例の認知度は機関によって均一ではなかった。認知度を高めるための取組みは、地域住民を広く対象としたものに加え、相談担当者を対象に実施する必要があると考えた。
結論
地域相談活動について基礎的な資料を得た。今回調査した期間内において、障害者の権利擁護に関する相談は、地域相談活動全体の中で多くはなかった。相談件数および個々の内容について今回の結果を踏まえ継続的な調査を実施することにより、新たな制度の導入を含め、障害者の権利擁護を目的とした地域相談ネットワークを充実させるための方策を見出すことが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
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