重度身体障害を補完する福祉機器の開発需要と実現可能性に関する研究

文献情報

文献番号
200724028A
報告書区分
総括
研究課題名
重度身体障害を補完する福祉機器の開発需要と実現可能性に関する研究
課題番号
H19-障害-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
森 浩一(国立身体障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 剛伸(国立身体障害者リハビリテーションセンター 研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、脳活動計測から直接コンピュータが操作できる装置(BCI)が開発され、コミュニケーション障害を有する重度身体障害者にも社会参加の扉が開こうとしている。しかし日常的に使えるようになるまでには、様々な開発や変革が必要となる。一方で、重度身体障害者自身がどのような機器開発を望んでいるのかが明確にはされていない。本研究ではこれらの調査を行い、重度身体障害者用の新しい福祉機器の開発需要とその効果の調査を行う。
研究方法
(1)重度身体障害者のニーズ調査
1) 詳細生活記録
24時間の介助記録を作成し、使用中の福祉機器の評価と開発希望の聴取を行った。
2) 操作体験を通した調査
脳性麻痺で頚髄損傷がある者を対象とし、現在のパソコン使用(介助者に口述)と、音声認識ソフトの入力速度、満足度等を評価した。
(2)脳インターフェース(BCI)等による福祉機器開発可能性評価
1) 市販品の調査、活用状況と、2) 先端機器の開発状況の調査を実施した。
結果と考察
(1-1) 介助頻度が大きい事項に福祉機器開発の希望が高かった。ADL全介助であっても、自らパソコン操作ができてコミュニケーションが取れる者は満足度が高かった。
(1-2) 一般市販品では身障者向けでない点があるが、プライバシー確保が可能になる点は評価され、潜在的な開発需要があると考えられた。しかし、適合にかかわる人的資源確保も必要である。
(2-1)市販BCIないしコミュニケーション補助装置を長年月にわたって使用し、満足度が高いALS患者がいる一方で、一般には適合技術が普及していないため、有効活用に至らないことも多いと推測された。
(2-2)BCIの最先端では、米国ニューヨーク州立保健局ワズワース研究所で、1分間に数文字の入力がほぼ訓練なしに可能なシステムが開発され、すでに5人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の家庭で数ヶ月以上運用されている。残る問題は装置のコストとメンテナンスの人的資源をどうまかなうかなど、社会制度的な課題である。
結論
重度身体障害者のためのコミュニケーション支援機器は、当事者の評価でもQOL向上に有用である。最先端技術のBCIはすでに家庭で使える程度に開発が進んでいるが、家族などが使用法を理解し協力することと、適切な技術補助も比較的頻繁に必要であり、普及させるには制度的なサポートも必要になる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-04
更新日
-