ライフステージに応じた広汎性発達障害者に対する支援のあり方に関する研究:支援の有用性と適応の評価および臨床家のためのガイドライン作成

文献情報

文献番号
200724026A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフステージに応じた広汎性発達障害者に対する支援のあり方に関する研究:支援の有用性と適応の評価および臨床家のためのガイドライン作成
課題番号
H19-障害-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立精神・神経センター精神保健研究所 児童・思春期精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 智典(国立精神・神経センター精神保健研究所 児童・思春期精神保健部 )
  • 本田 秀夫(横浜市総合リハビリテーションセンター )
  • 安達 潤(北海道教育大学 教育発達専攻)
  • 市川 宏伸(東京都梅ヶ丘病院)
  • 近藤 直司(山梨県立精神保健福祉センター)
  • 笠原 麻里(国立成育医療センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
広汎性発達障害者(Pervasive Developmental Disorders: PDD)への支援は、長期予後を向上させることを目標として、個人差およびライフステージによる支援ニーズの変化に応じて計画されるべきである。従来のPDD研究における長期予後の捉え方は、生活機能の制約などネガティブな側面に偏り、適応促進的な個人要因や支援を含む環境要因はあまり検討されてこなかった。本研究の目的は①PDD者の支援ニーズがライフステージによってどのように変わるのかを明らかにし、②各ライフステージにおける長期予後に影響する個人要因と環境要因を、症状の重症度のみならずQOLを含めた包括的な視点から同定し、③PDD支援計画立案時の準拠枠となる臨床家向けのガイドラインを開発し、④支援の有用性を判定する際の包括的な評価ツールを提案する、ことである。
研究方法
大規模後ろ向き質問紙調査の準備として、PDDの長期予後の判定基準を選定するために、文献的検討を行った。さらに小規模後ろ向き面接調査の予備的研究として、それぞれ支援ニーズの均質な複数のPDD下位群から成る臨床群を対象とした後ろ向き調査を行い、幼児期から児童青年期、成人期、さらに成人女性に絞って周産期まで、様々なライフステージにあり、かつそれぞれが異なる下位群を代表するPDD者の、ライフステージ毎の生活適応と支援ニーズを抽出した。

結果と考察
予後関連要因の候補には、個人要因では乳幼児期の行動特徴(気質)や性、そして衝動性、感覚過敏、不器用さ、順序立ての困難などが、環境要因では幼児期・児童期を通して継続的に受けた支援の有無、家族関係、ネガティブなライフイベントの有無などが、候補として挙げられた。今後、どの要因がどのような特徴のある下位群においてその予後に影響するのか、また個人要因、環境要因とは発達過程においてどのように相互に影響し合うのかなどについて、大きなサンプルで検証する必要がある。
結論
PDD者の長期予後に対する見通しを持ったうえで、ライフステージに応じた多様な支援ニーズに対して個別の支援策を講じるためには、従来の障害における適応状態の捉え方に代わって、ICFが提唱するようなポジティブな側面や環境要因も含めた包括的な視点に立つ捉え方に立って、さらに主観的な側面も評価できるチェック項目から成る生活機能評価ツールを作成し、次にそれを用いたPDD者の長期予後とそれに対応する予後関連指標を明らかにする作業が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
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