1型糖尿病およびインスリン療法を要する2型糖尿病の自己管理能力向上に関する研究

文献情報

文献番号
200723005A
報告書区分
総括
研究課題名
1型糖尿病およびインスリン療法を要する2型糖尿病の自己管理能力向上に関する研究
課題番号
H18-糖尿病等-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
坂根 直樹(独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 和範(独立行政法人国立病院機構京都医療センター糖尿病センター)
  • 成宮 学(西埼玉中央病院)
  • 佐野 喜子(二葉栄養専門学校)
  • 小谷 和彦(鳥取大学医学部健康政策医学)
  • 岡崎 研太郎(独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)
  • 村田 敬(独立行政法人国立病院機構京都医療センター糖尿病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 糖尿病戦略等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インスリン療法者は約70万人と推定されている。管理不良なインスリン療法者の合併症併発率は高く、健康寿命を著しく短縮させる。そこで本年度は低血糖予防の実態調査の中間解析とと自己管理能力を向上させるプログラムの開発と検証を行った。
研究方法
全国を7ブロックに分け、約1,000名に対し実施した。また、インスリン療法者が適切な自己管理を行いやすくなるよう自己管理能力向上プログラムの開発と検証、重症低血糖予防プログラムの開発を行った。
結果と考察
(1)インスリン療法者の低血糖に関する実態調査
375名(平均年齢56±16歳、男性182名・女性193名)について検討した結果、重症低血糖経験者は14%で、平均0.5±2.3回/人年。低血糖は63%が経験し、平均3.5±5.8回/月。夜間低血糖は30%が経験し、平均1.4±2.5回/月。いずれも2型に比べ、1型で頻度が有意に多かった。低血糖予防に関する知識クイズは平均5.8±1.8点(10点満点)であり、低血糖予防の知識が十分でないことが判明した。そこで、糖尿病e-ラーニング(低血糖予防)を開発した。
(2)自己管理能力向上プログラムの開発と検証
「3大栄養素が血糖に変換される速度と割合についての理解」「臨時に何か食する場合に炭水化物(カーボ)の量に合わせてインスリンを追加する」「就寝前に血糖が低い場合には乳製品などを補食する」など患者にわかりやすいツールの開発を行った。次に、血糖自己測定データをパソコンに取り込み、過去1ヶ月間の低血糖、高血糖の頻度を印刷するツールを活用した。非肥満、血糖コントロール不良の1型糖尿病患者14名(平均年齢36±17歳)に管理栄養士がカーボカウント、医師が追加インスリンの方法について指導を行ったところ、血糖コントロールが有意に改善した。
(3)重症低血糖予防プログラムの開発
低血糖への不安は、特に過去1年間に重症低血糖を経験した者が高かった。糖尿病カード、手帳の携帯率は低かった。グルカゴンへの認知度は低く、約2割は所持を希望しているにも関らず医師からは処方されていなかった。
結論
インスリン療法者の6割が低血糖を経験し、他人の助けを必要とする重症低血糖を経験している者は1割以上いた。しかし、低血糖予防に関する知識は全般的に不足していた。患者の自己管理能力を向上させるプログラムを開発し試験的に用いたところ、血糖コントロールの有意な改善がみられた。今後は対照群との比較研究、重症低血糖予防プログラムの開発が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-