災害の初動期における活動マニュアルとその運用に関する研究

文献情報

文献番号
199700352A
報告書区分
総括
研究課題名
災害の初動期における活動マニュアルとその運用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 太田宗夫(大阪府立千里救命救急センター)
  • 浅井康文(札幌医科大学)
  • 杉本勝彦(北里大学)
  • 松阪正訓(大阪府立消防学校)
  • 金田正樹(聖マリアンナ医科大学)
  • 二宮宣文(日本医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 災害時支援対策総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成8年度は総論的に部門別における災害初動期の活動マニュアルをその意義、ロジスチックス、オペレーションなどが実践できるかどうかを主として研究報告した。平成9年度の研究では、災害の初動期における部門別のマニュアルを実際に作成し、1人でも多くの被災者を救命することが目的である。災害医療の全体を考えても、多くの災害に関するマニュアルが作成されているが、初動期を中心としたマニュアルは皆無であり、このマニュアルの作成の必要性は、極めて高いと考えられる。
研究方法
研究会は、今年度8回の班会議を開催し、各研究者に分担いただいた研究項目を全員で検討した。既に作成されている各自治体や病院のマニュアル収集、欧米での文献収集やFEMAやICRC等の担当官とも密接に連絡をとり、この領域の活動マニュアルを可能なかぎり入手し参考にした。
結果と考察
発災後、概ね3日間での救出救助期における災害医療にかんしては、我が国では、空白であり、研究も皆無といってよい。欧米では、災害現場に直接出動する医師は、Disaster Rescue Doctorと呼ばれ、時にはon site surgeryと称してマニュアルに基づいて現場で数々医療行為を行っている。
平成7年度厚生科学研究「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究」では災害時の医療確保の基本的な考え方に言及されている。その中で災害初動期における活動は、具体的な指揮命令体制に基づいて活動することは、困難なことも多く、地元中心の医師会や自治体の医療援助チームが保健所の調整下にある程度自由裁量のもとに活動することが最適であるとされている。被災地内の医療機関における活動については、自らが被災者ではあるが、最も早く医療救護を実行できることから役割は重要であり、地元の医療機関の医師は現場救護所で活動することが最も実際的であることは明らかである。災害被災地における医師会中心とした現場救護所のマニュアルも検討した。都道府県市町村衛生主管部局における活動マニュアルでは、47都道府県中33都県、12政令都市中9都市からマニュアルを入手し、比較検討を行い理想的と考えられるマニュアルを作成した。消防機関における初動期の任務はまず火災に対する消火と炎症防止である。また、救急救命士を含む救急隊員の任務は、医師より速く現場に到着するため、救命活動、トリアージ、搬送をまず行う。地域の医療班が到着した後にはそれらと連携を密にはかり、調整を行い、地域トリアージ・オフィサーの指揮下に入り、応急処置や搬送を行う。
結論
災害初動期における活動マニュアルは、次の6種類を作成した。1、救出救助期における災害活動マニュアル 2、医療機関における活動マニュアル 3、救護所における活動マニュアル 4、保健所における活動マニュアル 5、都道府県市町村衛生主管部局における活動マニュアル 6、消防機関における活動マニュアル またこれらのマニュアルには 1、マニュアルとは何か 2、各論的行動規程 3、実現性と具体性 4、簡潔性を考慮した。マニュアル作成にあたって、1、指揮命令系統の統一 2、伸縮性のある組織作り 3、役割分担の明確化 4、役割ごとの裁量権の付与 5、資器材動員の必要性 6、誰でも理解できる用語の使用 などを考慮し、理想に近いマニュアルを作成した。
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公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)