心血管疾患のハイリスク患者スクリーニングのための新たな診断システムの構築とその臨床応用

文献情報

文献番号
200722017A
報告書区分
総括
研究課題名
心血管疾患のハイリスク患者スクリーニングのための新たな診断システムの構築とその臨床応用
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-034
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北 徹(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 横出正之(京都大学 探索医療センター)
  • 松澤佑次(住友病院)
  • 齋藤康(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療学)
  • 松崎益徳(山口大学大学院医学系研究科 循環病態内科学)
  • 佐々木淳(国際医療福祉大学)
  • 田中宏暁(福岡大学スポーツ科学部)
  • 上島弘嗣(滋賀医科大学 福祉保険医学)
  • 稲垣暢也(京都大学大学院医学研究科 糖尿病栄養内科学)
  • 鄭忠和(鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器・代謝内科学)
  • 鳥羽研二(杏林大学 高齢医学)
  • 宮崎滋(東京逓信病院)
  • 宮崎俊一(近畿大学医学部 循環器内科)
  • 田中喜代次(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 大藏倫博(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 秋下雅弘(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学)
  • 船橋徹(大阪大学大学院医学研究科 分子制御内科学)
  • 和田高士(慈恵医科大学 新橋健診センター)
  • 犀川哲典(大分大学 循環器内科)
  • 金井恵理(京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器病態制御学)
  • 林達也(京都大学人間・環境学研究科)
  • 上田之彦(京阪奈病院)
  • 久米典昭(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 堀内久徳(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 荒井秀典(京都大学大学院医学研究科 加齢医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
40,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドローム(MetS)は心血管疾患のハイリスクな病態として注目されており、いかに早期にMetSの予備軍を見いだし、適切な指導を行うことにより今後の心血管イベント発症の増加を抑制できるのかということが重要になっている。また、診断基準のなかでウエスト周囲径に関する問題点が提起されているため、その検証を目的としてインピーダンス法の有用性を検討し、臨床応用を目指す。さらにはMetSの治療法として運動療法及び食事療法の基準を作成し、その効果を検証する。
研究方法
健診受診者のデータ解析をもとにMetSおよび高血圧、脂質異常症、糖尿病の発症リスクに関するコンピュータプログラムを作成する。MetSに対する治療法を確立するため運動・食事療法による介入を行う。内臓肥満の評価法としてインピーダンス法による検討を行う。
結果と考察
心血管疾患のハイリスク患者のスクリーニングのため、生活習慣病リスクシミュレーションを開発した。本リスクシミュレーションは、MetSの予防及び生活指導のため役立てることが可能と考えられるが、今後の検証が必要である。また、MetS患者に対し、運動療法として1日1万歩の歩行、食事療法として理想体重x25kcalのカロリー制限を6ヶ月行うことの効果を検討した。全体で97名がエントリーした。運動療法目標達成群は30%、食事目標達成群は77%、両者を達成した群は25%にとどまったが、運動、食事に関する目標を達成することにより有意に体重、ウエスト周囲径が減少し、危険因子が改善することが明らかになった。さらにBMIに関わらずインピーダンス法による内臓脂肪面積とCTによる内臓脂肪面積と非常によい相関関係を持つことを明らかにした。この相関関係はウエスト周囲径とCTによる内臓脂肪面積との相関関係よりよく、ウエスト周囲径に代わる内臓肥満の評価法としての有用性が明らかになった。ウエスト周囲径に代わりうる内臓肥満の評価項目としてのインピーダンス法の有用性を世界に先駆けて証明したことは、極めて意義が大きい。
結論
心血管イベント発症に関するハイリスクであるMetS発症リスクを計算するプログラムを開発した。MetS患者に対する標準指導法として毎日10000歩のウォーキングと理想体重x25カロリーの食事療法が有効であることを示した。内臓肥満の評価法としてウエスト周囲径に代わる評価法としてのインピーダンス法の有効性を確立した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200722017B
報告書区分
総合
研究課題名
心血管疾患のハイリスク患者スクリーニングのための新たな診断システムの構築とその臨床応用
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-034
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北 徹(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 横出正之(京都大学 探索医療センター)
  • 松澤佑次(住友病院)
  • 齋藤康(千葉大学大学院医学研究科 細胞治療学)
  • 松崎益徳(山口大学大学院医学系研究科 循環器病態内科学)
  • 佐々木淳(国際医療福祉大学)
  • 田中宏暁(福岡大学スポーツ科学部)
  • 上島弘嗣(滋賀医科大学 福祉保健医学)
  • 稲垣暢也(京都大学大学院医学研究科 糖尿病栄養内科)
  • 鄭忠和(鹿児島大学大学院 循環器・呼吸器・代謝内科学)
  • 鳥羽研二(杏林大学 高齢医学)
  • 宮崎滋(東京逓信病院)
  • 宮崎俊一(近畿大学医学部 循環器内科)
  • 田中喜代次(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 大藏倫博(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 秋下雅弘(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学)
  • 船橋徹(大阪大学大学院医学研究科 分子制御内科学)
  • 和田高士(慈恵医科大学 新橋健診センター)
  • 犀川哲典(大分大学 循環器内科)
  • 金井恵理(京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器病態制御学)
  • 林達也(京都大学人間・環境学研究科)
  • 田中誠(京都大学 地域ネットワーク医療部)
  • 久米典昭(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 堀内久徳(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
  • 荒井秀典(京都大学大学院医学研究科 加齢医学)
  • 上田之彦(京阪奈病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドローム(MetS)は心血管疾患のハイリスクな病態として注目されており、その病態、疫学、予防、治療に関する検討が重要である。本研究班ではMetSに関する検討を通して心血管疾患のハイリスク患者に対する新たなスクリーニング法の開発を行う。
研究方法
西暦2000年日本人の血清脂質調査、慈恵医大健診センターなどのデータより2005年4月に発表されたMetSの診断基準に基づき、日本におけるMetSの頻度及び特徴を明らかにする。健診受診者のデータ解析をもとにMetSおよび高血圧、脂質異常症、糖尿病の発症リスクが予測可能なプログラムを作成する。また、内臓肥満に関する新たな評価法確立のため、インピーダンス法に関する検証を行うとともに、MetSに対する治療法を確立する。
結果と考察
西暦2000年の日本人の血清脂質調査の結果、MetSの頻度は男性12.1%、女性1.7%、全体で7.8%であった。また、MetSは急性心筋梗塞後の予後を悪化させる因子であることを明らかにし、MetSの有無と白血球数およびCRP 濃度に正の関連を認め、炎症マーカーがMetSの冠動脈硬化イベントリスクの評価に有用であることを示した。また、心血管疾患のハイリスク患者のスクリーニングのため、生活習慣病リスクシミュレーションを開発した。本リスクシミュレーションは、MetSの予防及び生活指導のため役立てることが可能と考えられるが、今後の検証が必要である。また、MetS患者に対し、運動療法・食事療法を6ヶ月行うことの効果を検討した。運動療法目標達成群は30%、食事目標達成群は77%、両者を達成した群は25%にとどまったが、運動、食事に関する目標を達成することにより有意に体重、ウエスト周囲径が減少し、危険因子が改善することが明らかになった。さらにBMIに関わらずインピーダンス法による内臓脂肪面積とCTによる内臓脂肪面積と非常によい相関関係を持つことを明らかにした。この相関関係はウエスト周囲径とCTによる内臓脂肪面積との相関関係よりよく、ウエスト周囲径に代わる内臓肥満の評価法としての有用性が明らかになった。ウエスト周囲径に代わりうる内臓肥満の評価項目としてのインピーダンス法の有用性を世界に先駆けて証明したことは、極めて意義が大きい。
結論
心血管イベント発症に関するハイリスクであるMetSの病態に関する研究、発症予測に関する研究を行った。MetS患者に対する標準指導法を確立し、内臓肥満の評価法としてウエスト周囲径に代わる評価法としてのインピーダンス法の有効性を確立した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
心血管イベント発症に関してハイリスクと考えられているメタボリックシンドロームに関して、その発症予測、病態解析、診断基準に関する検討及び治療介入に関する研究を行った。メタボリックシンドロームは平成20年4月からの特定健診において重点的な予防の対象となっており、メタボリックシンドローム患者に対する標準指導法を確立し、内臓肥満の評価法としてウエスト周囲径に代わる評価法としてのインピーダンス法の有効性を確立したことは大きな意義がある。
臨床的観点からの成果
ウエスト周囲径に代わりうる内臓肥満の評価項目としてのインピーダンス法の有用性を世界に先駆けて証明したことは、極めて意義が大きく、今後のメタボリックシンドローム診療に大きく貢献すると考えられる。本研究班において心血管疾患のハイリスク患者のスクリーニングのため開発された生活習慣病リスクシミュレーションプログラムは、メタボリックシンドロームの予防及び生活指導のため役立てることが可能と考えられ、平成20年4月から開始される特定健診における保健指導での活用が期待される。
ガイドライン等の開発
メタボリックシンドロームの診断基準は2005年に作成されたが、今回はメタボリックシンドロームに関する疫学調査を含め、その病態に関する様々な解析を本研究班において行った。従って、診断基準が改訂された場合にはその基礎資料として活用されると考えられる。また、メタボリックシンドロームに対する介入方法は平成20年4月から開始される特定健診における保健指導においても活用されると考える。
その他行政的観点からの成果
本研究班において心血管疾患のハイリスク患者のスクリーニングのため、生活習慣病リスクシミュレーションプログラムを開発した。本リスクシミュレーションは、メタボリックシンドロームの予防及び生活指導のため役立てることが可能と考えられ、平成20年4月から開始される特定健診における保健指導においても活用することが可能である。
その他のインパクト
現在メタボリックシンドローム診断のための必須項目の内臓肥満の評価にはウエスト周囲径の測定が用いられているが、様々な問題点が指摘されている。ウエスト周囲径に代わりうる内臓肥満の評価項目としてのインピーダンス法の有用性を世界に先駆けて証明したことは、極めて意義が大きく、今後のメタボリックシンドローム診療に大きく貢献すると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
24件
原著論文(英文等)
64件
その他論文(和文)
30件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
136件
学会発表(国際学会等)
69件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okauchi Y, Nishizawa H, Funahashi T, Ogawa T, Noguchi M, et al.
Reduction of visceral fat is associated with decrease in the number of metabolic risk factors in Japanese men
Diabetes Care , 30 (9) , 2392-2394  (2007)
原著論文2
Tamura T, Furukawa Y, Taniguchi R, et al.
Serum adiponectin level as an independent predictor of mortality in patients with congestive heart failure.
Circ J , 71 (5) , 623-630  (2007)
原著論文3
Arai H, Yamamoto A, Matsuzawa Y, et al.
Prevalence of metabolic syndrome in the general Japanese population in 2000.
J Atheroscler Thromb , 13 (4) , 202-208  (2006)
原著論文4
Okura T, Nakata Y, Ohkawara K, et al.
Effects of aerobic exercise on metabolic syndrome improvement in response to weight reduction.
Obesity , 15 (10) , 2478-2484  (2007)
原著論文5
Nakamura K, Okamura T, Hayakawa T, et al
The proportion of individuals with alcohol-induced hypertension among total hypertensives in a general Japanese population: NIPPON DATA90.
Hypertens Res , 30 (8) , 663-668  (2007)
原著論文6
Hozawa A, Okamura T, Kadowaki T, et al
Is weak association between cigarette smoking and cardiovascular disease mortality observed in Japan explained by low total cholesterol? NIPPON DATA80.
Int J Epidemiol. , 36 (5) , 1060-1067  (2007)
原著論文7
Nakamura K, Okamura T, Hayakawa T,et al
The proportion of individuals with obesity-induced hypertension among total hypertensives in a general Japanese population: NIPPON DATA80, 90.
Eur J Epidemiol. , 22 (10) , 691-698  (2007)
原著論文8
Okamura T, Nakamura K, Kanda H, et al
Effect of combined cardiovascular risk factors on individual and population medical expenditures: a 10-year cohort study of national health insurance in a Japanese population.
Circ J. , 71 (6) , 807-813  (2007)
原著論文9
Arai H, Yamamoto A, Matsuzawa Y, et al
Polymorphisms of apolipoprotein E and methylenetetrahydrofolate reductase in the Japanese population.
J Atheroscler Thromb , 14 (4) , 167-171  (2007)
原著論文10
Nakata Y, Ohkawara K, Lee DJ, et al
Effects of additional resistance training during diet-induced weight loss on bone mineral density in overweight premenopausal women.
J Bone Miner Metab , 26 (2) , 172-177  (2008)
原著論文11
Takeno T, Yasuda S, Otsuka Y, et al
The Impact of Metabolic Syndrome on the Long Term Survival in Patients with Acute Myocardial Infarction: a potential assoaciation with C-Reactive Protein.
Circ J , 72 (3) , 415-419  (2008)
原著論文12
Shigematsu R, Okura T, Nakagaichi M, et al
Square-stepping exercise and fall risk factors in older adults: A single-blind randomized controlled trial.
J Gerontol A Biol Sci Med Sci , 63 (1) , 76-82  (2008)
原著論文13
Matsuo T, Okura T, Nakata Y, et al
The influence of physical activity-induced energy expenditure on the variance in body weight change among individuals during a diet intervention.
Obesity Research & Clinical Practice , 1 (2) , 109-117  (2007)
原著論文14
Numao S, Hayashi Y, Katayama Y, et al
Plasma fat concentration increases in visceral fat obese men during high-intensity endurance exercise.
Obesity Research & Clinical Practice , 1 (4) , 273-279  (2007)
原著論文15
Okura T, Nakata Y, Ohkawara K, et al
Effect of weight reduction on concentration of plasma total homocysteine in obese Japanese men.
Obesity Research & Clinical Practice , 1 (3) , 213-221  (2007)
原著論文16
Okura T, Nakata Y, Ohkawara K, et al
Effect of aerobic exercise on metabolic syndrome improvement in response to weight reduction.
Obesity , 15 (10) , 2478-2484  (2007)
原著論文17
Schwingel A, Nakata Y, Ito LS, et al
A comparison of the prevalence of the metabolic syndrome and its components among native Japanese and Japanese Brazilians residing in Japan and Brazil.
Eur J Cardiovasc Prev Rehabil , 14 (4) , 508-514  (2007)
原著論文18
Schwingel A, Nakata Y, Ito LS, et al
Central obesity and health-related factors among middle-aged men: a comparison among native Japanese and Japanese-Brazilians residing in Brazil and Japan.
J Physiol Anthropol , 26 (3) , 339-347  (2007)
原著論文19
Kamijo K, Nishihira Y, Sakai T, et al
Effects of a 12-week walking program on cognitive function in older adults.
Advances in Exercise and Sports Physiology , 13 , 31-39  (2007)
原著論文20
Ueda A, Kume N, Hayashida K, et al
ELISA for soluble form of lectin-like oxidized LDL receptor-1, a novel marker of acute coronary syndrome.
Clin Chem , 52 (6) , 1210-1211  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-